2015/09/09

ついに実用化? 今よりも「速い」「遅延がない」第5世代移動通信(5G)って?

移動通信の技術にはいくつかの世代があり、1980年代に普及し始めた自動車電話が、ちょうど第1世代と呼ばれる。以降、アナログ方式からデジタル方式に変わった第2世代(1990年〜)、インターネットへの常時接続が浸透し、動画などのコンテンツが充実した第3世代(2000年〜)と進み、現在、移動通信の世界は第4世代が担っている。そして今、次世代を担う5G(第5世代移動通信)が、実用化に向けての取り組みがいよいよ具体化してきた。

正直なところ、現在の4Gで運用されている通信環境に不満を抱いている人は少ないだろう。データのダウンロードは十分速いし、電波がつながらない状況に遭遇することはほとんどなくなった。それでも、将来を見越すと5Gの環境を整えておく必要があるのだ。単なる移動通信の"最強伝説"の更新ではないのである。

Source : IMT Vision - "Framework and overall objectives of the future development of IMT for 2020 and beyond", ITU-R, Document 5/199-E, 19 June 2015

5Gになると、たとえば1,000倍のトラフィック容量が実現し、10〜100倍のデバイス&端末接続が可能になる。全世界のデータ流通量はうなぎ昇り。2015年初めの調査では、今後5年間で10倍の増加するという予測も出ている。IoT(Internet of Things)時代ともいわれる今、将来に備えた整備は欠かせない。

10〜100倍のデータ転送速度という点も注目だ。現在はあまり使用されていない、高い周波数帯を用いたり、小さなボディの中に数十〜数百本のアンテナを内蔵することで可能になる。

また、速度と容量の増加とともに、注目したいのが遅延時間の縮小だ。たとえば、ネットでスポーツのライブ中継を視聴する際、同時にテレビをつけていると、ネットが数秒遅れているのに気付くだろう。スポーツ中継ならファインプレーを逃すだけの話だが、遠く離れた土地での遠隔工事や遠隔医療なら、人命に関わる大きな問題となり得る。そのためには遅延が1ms(1/1000秒)以下になることも求められる。

省電力化の観点では、4Gまでの基地局は電波の利用状況に関わらず稼働している必要があったため、常に電気を消費していた。業界をあげての目標は、5Gの基地局で、今後10年間で電力効率を2000倍にすることだ。中継する電波がないときにはスリープしたり、必要な端末だけに電波を送ったり(ビームフォーミング)するのだ。

こうした技術の確立に向けて、現在、通信事業者や研究機関が実験の真っ最中だ。今よりも速度と精度、そして信頼性が高まる5G。実用化するのは2020〜2025年といわれている。

文:吉田 努