2015/08/20

スマートフォン1台で動画を生中継する『TwitCasting』

ライブ配信サイトのTwitCasting(ツイキャス)の登録ユーザー数が、今年4月で1,000万人の大台を超えた。ライブ配信サイトといえば、Ustreamとニコニコ生放送が大きく先行するなか、なぜ遅れてきたツイキャスがこれほど支持されるのだろう? それはスマートフォンの普及と時を同じくして登場したツイキャスが、ライブ配信をスマートフォン1台でストレスなく楽しめるように徹底して手軽さを追求したからだ。

たとえば、ユーザー登録はアプリをダウンロードした後、TwitterかFacebook、mixiいずれかのアカウントからログインするだけで完了し、それさえ済ませれば、配信閲覧のどちらも可能になる。しかも、SNSと連動してコメントを付けられ、配信する側と視聴する側の双方向でコミュニケーションまでできるようになるのだ。

さらにツイキャスは、手軽さのためにあえてスペックに制限を加えている。たとえば、画面サイズは最大でも320×240ピクセルしかない。配信方法はライブ動画か静止画+ライブ音声のどちらかのみという割り切り具合だ。これらは一見不自由に思えるかもしれないが、実際にツイキャスをのぞいてみると、この設定だからこそ、ユーザーが環境を選ばずに視聴を楽しみ、構えることなく配信できていることがわかる。たとえば、出勤前のキャバクラ嬢が自室でメイクしながら、ぶつぶつ客との恋愛の可能性を語っていたり、男子中学生の集団がカラオケボックスでアニメソングを熱唱していたり、海水浴場で水着の女子高生2人が鼻息荒くした男どもの下心満載コメントにゆるゆると答えていたり、ある意味、自由すぎるほど自由なライブがずらりと並んでいるのに圧倒されるだろう。

もちろん、魅力的な配信で何万人もの視聴者を集めるツイキャス生まれの新しい才能もいる。なかでも最近注目されているのが、人気ボーカロイド曲のカバーを中心に、自身で作詞作曲した曲などをピアノ弾き語りで披露する歌い手、Kainだ。4月にメジャーレーベルから1stアルバムを出している彼が生まれたのは、インターネット元年といわれる1995年。iPhone日本上陸が13歳のときのことだから、いわばスマートフォン・ネイティブと呼んでもいい。作品発表の舞台にツイキャスを選ぶのは当然の帰結かもしれない。

なお、こうしたツイキャスのゆるさは著名人にとっても敷居が低いようで、特にロンドンブーツ1号2号の田村淳やバカリズム、渡辺直美などの芸人や、きゃりーぱみゅぱみゅ、SEKAI NO OWARIのFUKASE、神聖かまってちゃんのボーカル兼ギタリスト、の子などのミュージシャンの利用が目立つ。彼らのプライベート生中継は、テレビでは絶対に味わえない親密さとスリルがある。これもツイキャスならではの魅力のひとつだろう。

文:高倉功次郎