2015/07/30
ゾンビか真の復活か? よみがえった『webOS』
スマートフォン誕生以前、新しモノ好きのビジネスマンやクリエイターたちはスケジュール管理や住所録、デジタルメモ帳として、PDA(電子手帳ともいった)を使っていた。まさしく小ぶりの手帳ほどの大きさのガジェットで、なかでもいちばん人気がアメリカのPalm(パーム)という機種だった。独自のPalm OSを搭載したこのデバイス、ガジェット好きのビジネスマンがこぞって愛用し、かつては一世を風靡したものだ。ちなみに、このPDAと携帯電話が合体し、インターネットに接続可能になったのがスマートフォンだといってもよいだろう。
約10年前、各メーカーがこぞってPalm OSを搭載したPDAを発売していた。左がソニーの「クリエ」、右はIBMの「WorkPad」
さて、そのPDAだが、スマートフォンの出現とともに徐々に衰退していく。Palm陣営は、当然のごとくスマートフォンへとかじを切り、AndroidやiOSに匹敵する携帯機器用のオペレーティングシステムの開発を開始。そして生まれたのが、「webOS」だったのだ。
このwebOSを搭載したスマートフォン「Palm PRE」が発表されたのは2009年。iPhoneに匹敵する機能を持つと高い評価を得たが、売れ行きは芳しくなく、経営不振となったPalm社は、このwebOSをヒューレット・パッカード社(以下HP社)に譲り渡した。そのHP社も研究開発を続けたが、2011年、webOSの事業中止を発表。このとき、世界中のPalmファンは「悲劇のOS」「webOSが死んだ」と悲しんだ。
ところが、2013年、韓国の家電メーカーのLGが、このwebOS事業をHP社から取得。自社のスマート家電にこのwebOSを搭載すると発表し、再び注目を浴びることとなったのだ。
webOS 2.0を搭載したLG社のスマートテレビLF6300
LG社は2015年、米国ラスベガスで開催された「2015 International CES」で、最新のwebOS 2.0を搭載したスマートテレビを発表した。webOSによって、通常のテレビ機能とインターネットがシームレスに融合し、また、まるでスマートフォンのアプリをテレビ上で動かしているような感覚でいろいろなサービスもエンジョイできる。スマートフォンやタブレット、パソコンとのデータ共有もワイヤレスでスムース。
復活したwebOSのことを「ゾンビOS」などと揶揄する向きもあるが、かつてのPalmファンにとっては、Palmスマートフォン登場への夢をかき立てられる出来事ではあるのだ。
文:太田 穣