2020/12/22

iPhone『Super Retina XDR』ディスプレイとは?意味や解像度を歴代機種と比較して解説

iPhone 11 ProやiPhone 11 Pro Max、そしてiPhone 12シリーズが搭載する「Super Retina XDRディスプレイ」。この新たに登場した「XDR」という言葉の意味を知っているだろうか。

「XDR」の性能や特長、「Super Retina XDRディスプレイ」がどのような機能を持っているのか、iPhoneディスプレイの進化とともに解説する。

Super Retina XDRディスプレイのイメージ

XDRとは?

Super Retina XDRとは

まずXDRの説明をする前に、HDRについて簡単に触れておく必要がある。というのも、XDRはHDRの延長上にあるからだ。

「HDR(High Dynamic Range)」は、ディスプレイ性能のひとつとして広く使われており、ダイナミックレンジ、ようするに表現できる明るい部分と暗い部分の幅が広く、白飛びや黒つぶれせずに美しい映像を表現できる技術のことだ。国際標準規格(ISO)で「HDR 10」や「HDR10+」といった表記で規格化されている。

そして、この「XDR」は「Extreme Dynamic Range」、つまり「HDRをはるかに超える」という意味でAppleが名付けた言葉だ。HDRとは違い、規格化されているわけではないが、同じくAppleが利用している「Retina」という言葉と同じように、Apple製品の性能を表す言葉として利用されている。

Super Retina XDRの特長とは?

Appleが「XDR」を最初に搭載したのは、2019年の開発者会議「WWDC 2019」で発表した32インチの「Pro Display XDR」だ。

Pro Display XDR

Pro Display XDRは、1,000nit(最大で1,600nit)と非常に明るいのが特徴で、画面のコントラスト比も100万:1と高くなっている。

コントラスト比というのは、画面内のもっとも明るい部分(最大輝度)ともっとも暗い部分(最小輝度)の比率のことで、最小輝度(通常は黒で表示される)を1としたときの最大輝度(通常は白で表示される)がどの程度になるのかを表している。100万:1であれば、もっとも暗い部分より、もっとも明るい部分が100万倍明るいことになる。コントラスト比が高いほど、表現できるダイナミックレンジが広く、メリハリの効いたはっきりとした画像となる。

一般に、4Kや8Kなど高解像度なほど高画質だと思われがちだが、実際には解像度が低くても、コントラスト比が高ければ高画質だと受け取られる。夕焼けや夜景など、どんなに高解像度でもコントラスト比が低く、メリハリがなければ美しい画像に見えないというわけだ。

Pro Display XDR

その後、「iPhone 11 Pro」「iPhone 11 Pro Max」が、有機ELになった「Super Retina XDR」を初めて採用した。iPhone 12シリーズでは4機種ともSuper Retina XDRとなっている。

有機ELは、液晶と比べて黒をより黒く表現できるのが特徴で、これにより今まで以上にメリハリのある鮮明な画像を表示することが可能になった。Super Retina XDRでは、輝度が800nit(最大1,200nit)、コントラスト比200万:1を実現している。

ただし、Super Retina XDRが現行スマホで最高のコントラスト比を実現しているわけではなく、たとえば「Galaxy Note20 Ultra 5G」が搭載するディスプレイ「ダイナミックAMOLED 2X」は、最大輝度1,500nit、コントラスト比も300万:1となっており、各社がしのぎを削っている。

Galaxy Note20 Ultra 5G

また、一般的な4K HDR液晶のコントラスト比は3,000~5,000:1程度だが、有機ELでは100万:1は珍しい値ではない。人間が知覚できるコントラスト比は1兆:1とされているため、まだまだ進化が期待される。

iPhoneのディスプレイの進化

ここまで、最新iPhoneに搭載されるSuper Retina XDRについて説明したが、日本で初めて発売された「iPhone 3G」のディスプレイはどういったものだったのだろうか。iPhone 3GからiPhone 12まで、そのディスプレイの進化の歴史を簡単に振り返ってみよう。

iPhoneのディスプレイ比較 各モデルの液晶解像度を比較したもの。飛躍的な進化を遂げていることがわかる

2008年に発売されたiPhone 3Gのディスプレイは、3.5インチ・480×320ピクセル(163ppi)だった。iPhone 12 miniの5.4インチ・2,340×1,080ピクセル(476ppi)と比べるとなんとも物足りないが、当時は全面ディスプレイの端末はほとんどなく、これでも大画面であった。

2009年の「iPhone 3GS」も同じディスプレイだったが、2010年の「iPhone 4」で、初めて「Retina」ディスプレイを採用。3.5インチ・960×640ピクセル(326ppi)の液晶で、従来のiPhone比で約2倍の解像度を実現した。

iPhoneのディスプレイの進化

その後、「iPhone 5」では画面サイズが4インチ・1,136×640ピクセル(326ppi)に到達。「iPhone 6」からは、より大画面のPlusシリーズが登場し、iPhone 6が4.7インチ・1,334×750ピクセル(326ppi)、iPhone 6 Plusが5.5インチ・1,920×1,080ピクセル(401ppi)に。コントラスト比も従来の800:1から1400:1へと向上した「Retina HD」ディスプレイを採用している。このディスプレイは、iPhone 6から6s / 7 / 8と4代にわたり長く採用されていた。

iPhoneのディスプレイの進化

そして、「iPhone 8」と同時に登場した「iPhone X」では、初めて有機ELを採用。5.8インチ・2,436×1,125ピクセル(458ppi)で、コントラスト比も100万:1を実現するSuper Retina HDディスプレイとなった。また、HDR規格への対応や、Touch IDを無くし、代わりに全画面となったのもiPhone Xからだ。このディスプレイは、続く「iPhone XS」にも採用されている。

そのiPhone XS / XS Maxと同時に発表された「iPhone XR」は、有機ELではなく液晶の「Liquid Retina HDディスプレイ」を採用。ただし、コントラスト比は1400:1で、仕様上は従来のRetina HDと違いはない。

そして、2019年に発売されたiPhone 11 Pro / 11 Pro Maxでは、コントラスト比200万:1の「Super Retina XDR」を採用したのは、先述したとおりだ。なお、同時に発売されたiPhone 11は、iPhone XRと同じLiquid Retina HDを搭載している。

HDRを大きく超えるXDR

HDRを大きく超えるという意味で使われるXDR。従来よりも美しい映像が得られるのは間違いないが、人間の知覚限界にはまだおよんではない。ディスプレイの技術は年々進歩しており、見たままを再現できるディスプレイが登場する日も遠くないのではないだろうか。そんなディスプレイがスマホに採用されるのを、心待ちにしたいところだ。

文:山本竜也