2019/09/09

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2021/02/18

Bluetoothの『バージョン』とは?5.2の進化ポイント「オーディオ機能」などを解説

「Bluetooth®」は、イヤホンやスピーカーなどのデジタルガジェットや家電に搭載されている無線通信方式だ。主に10m程度の近距離間で用いられ、機器同士をペアリングしてデータの送受信を行う。Wi-Fiのように大容量のデータを高速で送ることはできないが、接続が簡単で、消費電力も小さく、手軽に利用できるのが特長だ。近年、ワイヤレスイヤホンで音楽を楽しみたい人にとってBluetoothは欠かせない技術だろう。

Bluetoothロゴ

実は、そのBluetoothにはバージョンがある。本記事では、バージョンアップを繰り返してきたBluetoothの変遷や、最新バージョン「Bluetooth 5.2」の進化ポイントなどを紹介する。

Bluetoothの進化を表すバージョンとは

Bluetoothが誕生したのは1999年。このときのバージョンが「Bluetooth 1.0」。その後、何度か大きなバージョンアップを繰り返し、2016年にメジャー・バージョンアップ「Bluetooth 5.0」が発表され2020年1月に発表された「Bluetooth 5.2」が最新となる。以下の表は、歴代Bluetoothの主なアップデート内容だ。

歴代Bluetoothの主なアップデート内容

Bluetooth搭載機器で身近な例といえば、スマートフォンだ。2008年に発表され、日本に初上陸した「iPhone 3G」に搭載されていたのはBluetooth 2.0。2017年に発売された「iPhone 8」以降はBluetooth 5.0が搭載されている。

バージョンの進化に伴い、Bluetooth機器はより便利で使いやすくなっている。機器のつながりやすさや速度はもちろん、2009年に登場した「LE(Low Energy)」によってマウスやイヤホンは軽量化が進み、電池の持ちも改善。また、マルチペアリング機能の追加により、ひとつのイヤホンでスマホ、携帯音楽プレーヤーなど複数の親機と接続、スムーズな切り替えができるようになっている。

「クラシック」と「LE」の2つの規格

Bluetoothには、「クラシック」と超低電力消費の「LE(Low Energy)」という2つの規格がある。これらは通信方式も違うので互換性はない。

クラシックは、Bluetooth 1.0から3.0までの規格を指す。現在でも利用されており、身近なところではオーディオ機器などで利用されている。

一方のLEは、Bluetooth 4.0から新しく搭載された、電力消費を極力抑えた規格のこと。ボタン電池1個で何年もの動作が可能で、従来のクラシックよりも半分近く消費電力を抑えられるのが特徴だ。屋内の位置を特定したり識別IDを発信したりするビーコンと呼ばれるセンサーやスマートウォッチなどのIoT機器に利用されるほか、省電力を活かしてマウスなどでも利用される。

このように、現状、Bluetoothは通信方式も使用目的もまったく違う2つの規格が共存しており、Bluetooth 4.0から、LEのみを搭載したものとクラシックとLEの両方を搭載したものとをロゴで見分けられるようになっている。Bluetoothを搭載する製品を開発するメーカーは、この2つの規格のどちらを使用するかを、製品の用途によって決めているというわけだ。

Bluetoothロゴ (左)「Bluetooth」:クラシックのみ対応(Bluetooth 3.0まで)
(中)「Bluetooth SMART」:LEのみ対応
(右)「Bluetooth SMART READY」:クラシック、LE両方対応

5.0のバージョンアップで通信速度が2倍、通信距離が4倍、通信容量は8倍に

2016年に発表されたBluetooth 5.0という大きな節目で、前バージョンの4.2と比較して大きく進化したのはLE規格の性能だ。

(1)データ通信速度が倍の2Mbpsと高速化

実はBluetooth 3.0(クラシック)の段階で、Wi-Fiなどに用いられる無線LAN規格(IEEE 802.11)の電波を使う高速化オプション機能が追加され、これを用いると最大速度24Mbpsが実現する。しかし、マウスやワイヤレスイヤホンなどに利用が限定されることが多いクラシックでは、この通信速度が活かされる機会は少ない。

そこでBluetooth 4.0では、通信速度を「1Mbps」に抑えることで低消費電力性を高め、IoTに適したLEへとシフトチェンジしたというわけだ。Bluetooth 5.0ではこの通信速度が2倍の「2Mbps」となった。

(2)通信可能な距離が4倍に広がった

壁などがない見晴らしのよい環境であれば、これまでは最大100mだったのが、400m以上離れていても電波が到達するようになった。これはデータ補正の技術を改良して実現したという。つまり、弱い電波でも、エラーを補正して情報を正しく取り出すことで、通信距離を伸ばすことに成功したのだ。

(3)ブロードキャスト通信容量が8倍に増えた

ブロードキャスト通信容量というのは、ビーコンや電子タグなどに格納される、一方向・不特定多数に発信できる情報の大きさのことだ。つまり、ブロードキャスト通信容量が増えることで、今までより多くの情報を発信できるようになった。

ビーコンの通信のイメージ

前提として、Bluetooth 5.0の恩恵にあずかるには、使用する機器がBluetooth 5.0対応でなければいけないということを覚えておこう。

「メッシュネットワーク」で生活がより便利に

BluetoothのLE規格は、私たちの生活に具体的にはどんな利便性をもたらしてくれるのだろうか。

おそらく、いちばんわかりやすいのは「メッシュネットワーク」だろう。メッシュネットワークとは、複数のBluetoothの対応機器(スマホが親だとしたら、Bluetoothイヤホンのような子にあたる接続先の機器)同士が網の目のようにつながるネットワークのことだ。

Bluetoothメッシュネットワークのイメージ

たとえば、Bluetooth照明機器が1階から2階まで、家中の部屋に設置されていたとする。このとき、自分のスマホでいちばん近くにあるBluetoothライトに「家中の電気を消せ」と指令を出せば、このメッシュネットワークを通じて家中のBluetoothライトに命令が伝わり、一斉に電気を消すことができる。

つまり、Bluetoothに接続した機器同士が通信を中継する役割を果たしてくれるというわけだ。これを利用すれば、遠く離れた部屋にあるBluetooth付きエアコンを、Bluetoothライトのネットワークを通じてコントロールする、といったことも今後は可能になる。

ほかにも、LEによって次のようなことができる。

・タグを身に着けたペットや子どもの移動履歴(位置情報)を確認できる。

・店舗の棚などにビーコンを設置し、買い物客のスマホにその商品の詳細な情報(たとえば食品なら成分や生産地、賞味期限、おすすめの料理法など)を配信できる。

・スマートウォッチやヘルスケア用のウェアラブル・デバイスが、Bluetooth搭載の体重計や家電などと自動的に連携して情報を収集、管理してくれ、コントロールもできる。

・Bluetoothスピーカーや電球、エアコンなどの家電を別の部屋のスマホから操作できる。

2020年に発表された最新版のBluetooth 5.2はなにがすごい?

2019年に発表されたBluetooth 5.1(方向探知機能追加)に続き、2020年に発表された最新のBluetooth 5.2では、新技術のオーディオ技術「LE Audio」が搭載された。これにより従来のBluetoothオーディオ技術は「Classic Audio」と呼ばれることになる。近しい名称ではあるが、両者に互換性はない。

「LE Audio」では、「マルチ・ストリーム・オーディオ」機能によりブロードキャストで複数デバイスに音声を送信できるほか、ハイレゾ音源にも対応している新コーデック(圧縮伝送方式)のLC3により、低消費電力で高品質の音声データ送信が可能になった。

さらに、新機能として追加された「オーディオシェアリング」機能によって自分のスマホの音楽を友人と共有する、映画館で音声を共有する、などができるようになっている。

バージョンアップによって搭載されたLE Audioにより、今後、ワイヤレスでの音楽体験がよりリッチになることが期待できる。とはいえ、最新バージョンに対応した機器が一般に普及するには年単位の時間がかかるもの。イヤホンなどの対応製品が順次登場するのを期待したい。

文:TIME&SPACE編集部