2018/12/04
警察が「110番」で消防が「119番」の理由って? 3桁番号が制定された意外な経緯
知らない人はいない緊急通報用電話番号、110番と119番。しかし、いったい110番はなぜ110番で、119番はなぜ119番なのか? 今回はこの謎を、電話の歴史から紐解いていく。後半では便利な3桁電話番号も紹介するので、いざという時のために、ぜひチェックしてもらいたい。
そもそも3桁電話番号ってなに?
電話の歴史を紐解く前に、まず3桁電話番号について簡単に触れておこう。3桁電話番号は「1XY番号」と呼ばれるもので、1で始まる3桁の番号のこと。緊急性を必要とする用途(警察機関への通報「110」、消防機関への通報「119」)、電話通信サービスの利用にあたって容易な認識を必要とする用途(番号案内「104」、故障受付「113」)、既に広く認識されている用途(時報「117」、天気予報「177」)などに使用されている。
このうち、「110」や「119」など、緊急性・公共性・安全性の観点から重要と考えられる用途は、電話会社に関係なく同じ番号で統一して使えるようになっているため、日本人の共通認識として広く知られているのだ。
それでは、この3桁電話番号は、どんな理由で定められたのか。「110」と「119」を例に、3桁電話番号の起源に迫っていこう。
日本初の3桁電話番号は「112」
日本で電話サービスが始まったのは1世紀以上も前の1890年(明治23年)。この頃の電話は、まず電話局にかけて交換手(かかってきた電話を取り次いだり、応対したりする仕事の人)を呼び出し、口頭で電話番号を伝えて手動で接続してもらう必要があった。
だから、泥棒に入られたら交換手に「泥棒だ!! 警察につないでくれ!!」とか、火事なら「消防署をお願い!!」などと頼んでいたわけだ。
やがて1926年(大正15年・昭和元年)になると自動交換方式(電話機相互の接続を自動で行ってくれる機械)が導入され、電話機もダイヤル式となった。たとえば数字の3の位置にあるダイヤルの穴に指を入れ、ストッパーと呼ばれる爪のようなところまで回して指を離すと、「3」の数が電話局に送られるという仕組みだ。
この自動交換方式によるダイヤル式電話登場にあわせて、まず最初に消防用の緊急電話番号「112」が制定された。「112」にしたのは、大きく以下の三つが理由だと言われている。
- ①3桁にしたのは、覚えやすく、しかも偶然かつ間違ってかけることが少なくなるから。
- ②「1」はダイヤル式電話の番号のなかで、回す距離がいちばん短く、緊急時に都合がいいから。
- ③最後を「2」にしたのは、「111」という同じ番号にすると、子どもがいたずらで回してしまうのではと心配したから。
※諸説あり
ところが翌1927年、制定されたばかりのこの「112」は、すぐに「119」に変えられてしまう。せっかく最後の番号を「2」にしたにもかかわらず、緊急時のために慌てていて「1」を3回まわして「111」にかけるなど、かけ間違いが多かったからだという。
そこで、慌てているときでも番号を意識して正しくかけてもらおうと、ダイヤルで「1」の位置から離れたところにある「9」を最後の3桁目に持ってきた。これが、119番誕生の理由だ。
では、110番はどうやって生まれたのか。110番が警察への緊急連絡番号として使われるようになったのは1948年(昭和23年)。ただし、このときは、東京や大阪などの一部の大都市のみ。ほかの地域では118番や1110番などとバラバラだった。これを統一し、日本全国どこでも110番になったのは1954年のことだ。
「110」に定められた理由は119番とほぼ同じ。ダイヤルでいちばん回す距離が短い「1」の後に、誤りを防ぐためにあえて回す距離が一番長い「0」を使うことにした。
※諸説あり
さて、1970年代に入ると電話はプッシュホン(押しボタン式電話機)の時代となり、「1」と「0」はダイヤルで離れた位置にあるなどということは意味がなくなってしまったが、110番や119番といった緊急通報電話番号自体はスマホ時代のいまも変わらない。
スマホならではの緊急通報といえば、iPhoneではSiriから緊急通報電話番号をかけることができる。その場合は、Siriを起動して「110番にかけて」や「119番に電話して」と伝えるだけ。身動きがとれないときなどに役立つ。
ほとんどのAndroidにも「緊急通報」機能は標準で付いているので、万が一のために、確認しておくといいだろう。端末にロックをかけている場合は、パスワード入力画面の下に「緊急通報」と表示されているケースが多い。
また「警視庁110番サイト通報アプリ」(東京都内専用)というものもあり、これを使えば、電話ではなく、文字を入力して送信することで110番と同じ通報ができる。そんな緊急時連絡用アプリなども、おそらく今後は増えていくにちがいない。
覚えておきたい便利な3桁電話番号
歴史に合わせ、覚えておきたい3桁電話番号をご紹介しておくので、ぜひ役立てていただきたい。
文:太田 穣