2018/03/20

留年は釈迦の旅と同義?留年経験者たちの座談会

 

留年とは、高校や大学で規定の単位数が足りず、進級できなくなってしまった状態。世間的にはあまり褒められる状況ではありませんが、どうやら留年を経験した者達は、彼らなりの持論で留年を正当化しているようです。

 

留年した人々は、当時何を思い、今をどう生きているのか。

 

学生のことも応援するTIME & SPACEとして、今回は留年者達の思想に深く迫る「留年座談会」を行いたいと思います。

 

 

 

 

 

 

と言っても、全員留年している奴だけだとどうにもならないので、今回は留年経験者二名、そしてストレートに卒業したまじめ人間を二名ずつ呼び、留年者の主張に耳を傾け、まじめ人間の質問に答えるという形式で議論を交わしたいと思います。

 

 

 

 

 

※ここでの留年者の主張は全て個人の見解によるものです。あまり参考にはしないでください

 

■何故、留年したのか

 

「本日は単純に色々聞きたいので、よろしくお願いいたします」

「是非とも…まず皆さんの学歴を紹介しあいましょうか」

「ぼくは現役で合格して、4年でキッチリ卒業しました

「自分は一回浪人しましたが、留年することなく4年で卒業ですね」

「なるほど。僕は1・1・2・3・3・4で卒業でしたね」

「1年と3年に1回ずつ、の2留ということ?」

「そうです」

「僕は1・1・1・2・3・4で卒業でした」

「えっ1年生を3回!?!?」

「そうなんだ!でもそこからの2年からのストレート進級、すごいね

いや普通だから

「二人に聞きたいんですが、そもそも何で留年しちゃったんですか?

「何故か、ですか…?」

 

 

 

 

 

「単純にダル過ぎて…」 
※個人の見解です。大学生の皆さんはダルくても行きましょう

 

 

 

「大学が家から遠くて…」 
※個人の見解です。遠くても行きましょう

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

「行けよ」

「いやこれが行けないんですよ。雀荘でバイトもしてたし」

「それは経済的理由で?」

「いや、そっちの方が楽しくなっちゃって」

「普通に自堕落じゃないですか?麻雀自体を悪く言うつもりは無いですが、大学サボって延々雀荘で麻雀という見え方は良いとは言えないですよ」

「いやいや。朝からしっかり目的意識をもってバイトしてたから

「だったら大学いけよ」

「僕の場合は家から1時間かけて大きめの乗換駅まで行って、そこから電車を乗り継いでさらに1時間かかるんです。だから乗換駅まで行ったらもうそこから先に進めなくなっちゃう」

「分かるわ〜。で、いいタイミングになったら行った顔して家に帰る」

「その間とか家帰ったら何してるんですか?」

「本屋で立ち読み?」

「あとは寝る」

学割を利用して色々オトクに済ませてました。映画とか安いし

大学の近くのラーメン屋とか替え玉無料できたりね

「クズの見本市」

最近の学割ってめちゃスゴイですからね?PCのソフトとかも安く使えたりしますから」

「携帯電話だって学生ならかなり安いし」

学割が得って言ってるけど、1年まるまる無駄にしてるからね?

 

 

 

 

 

「いや実際、大学って行かなければ行かない程アウェイになっていくんですよ

「あるあるですね」

だから行けってば

「あと、出席点が無い授業を一回休むと『どうせ次行っても分かんないしなあ〜』ってなって。だったらそれ以降の授業には出ず、テストで一気に勝負に出た方が効率的です

本当の効率を考えてるなら単位は取れてるはずでしょ?一回休んで取り返せないほどの難易度だったら、その後取り戻すように出席しないとテストには間に合わないと思うんですが」

「そうです。仰る通り

「『テストで巻き返そう』って奮起したのに、点を取れなくて単位を落とすって、至極当たり前の話じゃないですか?何やってるんですか?」

そう、当たり前の話。かまどは何も間違ったこと言ってない」

「何でそこまで堂々としてられるんだ」

「でもね…『行ける!』って思っちゃうんですよ。ほんとに」

「何なんだこいつらは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■親になんて言うの?

 

「いくつか聞きたいことをまとめてきました。まず、親になんて報告するんですか?

「僕の大学は、成績表が家に郵送される仕組みだったんですよね」

「そこに『留年』って書かれて気付かれるんだ」

「いや、親に見られる前にその成績表は破棄しました」

「は?」

「ある日『成績表が郵送され始めてる』という情報をバイト中に聞いて、途中で抜けて急いで家まで帰って。そしてポストの中に入ってた成績表を先に取って、グシャグシャグシャ…って」

罪の意識あんのかよ

「まあそれでも結局バレるんですけど、そこでこのシーズンに留年の危機にある学生にとっておきの秘技を伝授します

「詭弁では?」

 

 

 

 

 

「キレられても、『大丈夫!』と言い続けろ!」

 

「これです」

「どういうこと?」

「親って、自分の息子が留年したっていう事実に直面すると、パニックになるんですよね。それをなだめる必要があるので、何を言われても『大丈夫!』と言ってください

「それで解決するか?」

「それと『就職できないかも』とも思ってるので、適当なエピソードも付け加えてください。『俺の知ってる先輩は留年したけど大手企業の内定取れたよ』って。嘘でもいいです」

「嘘はつくなよ」

「そのあと何が起こるかというと、次は『大丈夫と言い続けてることにキレ始める』んです。つまり『何故留年したんだ?』という"Why"から『何が大丈夫なんだ?これからどうするんだ?』という"How"にステップアップしたのが分かりますか?」

「最初から謝れば議論進むでしょうが」

「謝ったら、その後外泊禁止のような向こうの要求を飲まなくちゃいけなくなるんで。その後は『次はちゃんと行くから、学費も払うから』って言えばOKです」

やっぱり詭弁だった

 

 

 

 

 

 

「これらのことから、留年のメリットとして『親に一発かませる』というのが言いたいです」

「かますな」

「親は無条件で子に期待しています。そういう親に対して『子育てはそんな簡単にはいかねえぞ!』ってことを示すことで、適正な評価を下してもらえるんです

「何言ってるかよく分からなくなってきた」

 

 

 

 

 

 

「あと僕の場合は『ハートが強くなる』ですね。数人一組で行うグループワークの授業があったんですが、そういう時もあぶれる前に自分から声かけてグループを作ったり」

「マンスーンって日頃から異常なほど落ち着いてるんだけど、多分ここから来てるんだろうな」

「あとは卒業危機のとき、全員の教授の部屋に行って『これ以上留年するとヤバイんで…!』って頭下げて、課されてないレポートも提出したりして。ハートが強くなってるんで堂々と行けるんです」

こんなことがストレートに卒業した人間に出来ます!?社会に出て役立つのはこういう力でしょ」

 

 

 

 

 

 

「それ、ただ自尊心がズタボロになってるだけですよ

「あと、卒業もギリギリだったんかい」

「いやいや。僕達は大学でアウェイの戦い方を学んだんです

「でも結局留年した1年で、無駄に時間を過ごしてるじゃないですか。学割を利用しまくった〜とか言ってましたけど、金銭的にもトータルで損してる。何の投資にもなってないですよ?」

「ふむ」

「1年休学してバックパッカーで世界を見てきたとか、日本一周するとかその期間にしか出来ないことをやるっていうならまだ理解できますけど、寝てバイトして徘徊して…って、本当に何の役にも立たないクソ時間のクソ浪費ですって!親に申し訳ないと思わないんですか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何でこんなに言われてるのにここまで澄んだ目をしてるの?

「そういう意味で、留年した者だけが気づいたこと、それは…」

 

 

 

 

 

スッ

 

 

いよいよ何?

「留年すると、無限とも思えるほどの長い時間がいきなり与えられるわけです。その期間に、自分とは何か・人生とは何かを考える時間がめちゃめちゃあって、思考が深まった結果、悟りの境地に達するんですよ。すなわちそれは釈迦の旅と同じ。バックパッカーとか日本一周とかそういう問題じゃないんですよ」

留年の言い訳を考えてるうちに理論が飛躍しちゃってる

進学する・進級する・就職する等に対して、『何故しなきゃいけない』という疑問を持ったことないでしょ?留年した時にそういったことにも深く思考できるようになったんです」

留年を正当化する筋肉が異常発達してるなこれ

「こうやって親を説得したんだろうな。結果的に時間と金の無駄であることには何の言い訳も出来てないし。結局留年も大学側が用意してくれた救済措置。いわばクズ用のルートですからね?

 

 

 

 

 

 

「で、これ聞きたかったんですけど、自分の子どもがもし留年したらどうするんですか?自分も留年してるから絶対に怒れないですよね」

「この質問、留年の話になると出ますね。もう聞き飽きたし、答え飽きた」

「結局どうなの?」

 

 

 

 

 

「僕は、めちゃめちゃキレます」

 

 

 

 

 

「ハァ!?」

 

「自分が留年したのに、子どもが留年したらキレるんですか!?どういうこと!?」

自分が留年したことと、父親としての役割は別なんですって。本当は怒ってないですよ。むしろ次につながるように『叱る』っていう表現が適切ですよね」

「留年してもいいけど、ポーズはとるってことね。でも自分のお金が目減りしない?」

「お金なんてまあ…いいでしょう。留年…したくない?」

「僕はまた大学生に戻ったとしても、留年すると思います」

「すな」

「そういうモチベーションで留年したとしても、絶対その時間を謳歌できずに、クズの時間でしかないと思うんですけど。ダラっと過ごしてダラっと落ちこぼれてダラっと延長した1年って、絶対有意義じゃないです!

「0か100の二択で考えるのはやめよう。人生はグラデーションだから。良さも悪さも全部ひっくるめてどう生きるかっていう能力を得なさいってこと」

 

 

 

 

 

■最後に

 

 

 

 

 

 

ーその後も、喧々諤々の議論は続いた

 

 

 

 

 

 

ー留年経験者の言い訳は、ほぼ詭弁ではあった。留年はするべきでは、無い

 

 

 

 

 

 

ーただ彼らの言い分の中で、一つだけ真実があったのがお分かりだろうか?

 

 

 

 

 

学割を利用して色々オトクに済ませてました。映画とか安いし

大学の近くのラーメン屋とか替え玉無料できたりね

 

 

 

 

 

 

ーそれは、「学割はめちゃめちゃオトク」ということ…

 

 

 

 

 

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(おわり)