2016/10/13
『水曜日のカンパネラ』VRライブ映像をハコスコアプリで配信! 普通の撮影と、VR撮影って、なにが違う?
救急車の中で酸素マスクの呼吸器を口に当てたり、ゴム手袋に息を吹き込んだりしながらパフォーマンスするヴォーカルの「コムアイ」。野外ライブの客席は大いに盛り上がり、ステージではキュートに彼女がぴょんぴょん跳ねる。シャウトする。下から見上げれば豆粒みたいなはしご車の先。歌うコムアイ。そして広がるお台場のパノラマ!!!
独特で奇妙で、でも"クセになる"世界観でブレーク中の音楽ユニット、「水曜日のカンパネラ」の360°VRライブ映像だ。
このライブ映像は、ぴあとKDDIが主催する招待制ライブ『uP!!!NEXT』で撮影されたもの。会場では"水カン"オリジナルのハコスコも販売され、当日撮影したライブのVR映像全5曲を、あとから楽しむことができる。ハコスコとは、スマホをセットして360°VR映像を楽しむためのゴーグルだ。
実際にハコスコを装着してVRライブ映像を見てみると、目の前にはステージと、観客が! イヤホンやヘッドホンをつけて外部の音を遮断すれば、まるでライブ会場にいるかのような感覚を楽しむことができる。いや、コレはまったく新しいライブ体験だ。
左はauスマートパス推進部の丹羽泰啓、右は戦略推進部サービス推進グループの北崎修央
KDDIは2016年5月にハコスコ社へ出資して以降、VR関連の事業化が進んでいて、ソフト開発や活用、あるいはKDDI独自の自由視点映像の研究・実用化を行っている。
「VRのコンテンツって、撮影法を含めて面白いものってなかなかないんですよね。だから、それをどんどん良くしていきたい」と、新規ビジネス本部 戦略推進部サービス推進グループのマネージャー北崎修央。
社内で撮影もするが、その都度、最適なクリエイターをアサインしたりもする。今回のライブ映像のVR撮影は、専門の撮影チームに依頼したという。
「今回は、会場が野外で、アーティストが水カンさんという規格外の動きをされる方なので、会場内を移動したり、高所からの映像を盛り込んだり、VRが生きてくるライブ演出になると考えていました」と、auスマートパス推進部の丹羽泰啓。
教育や医療、科学、建築と、あらゆる分野での活用が期待されるVR技術だけど、ユーザーがいちばん楽しみなのは、やはりこういったエンタメ分野での広がりだ。では、一体、今後はどんなことができるようになるのだろう? また、どうすれば我々も日常的にVR撮影を楽しめるのだろうか?
実際にカメラを回した、「渡邊課」に聞いてみた
今回、水カンのライブでVR撮影を担当したのは「渡邊課」という、デザイン会社コンセントに所属する注目の「全天球映像作家」だ。彼らはvampilliaというロックバンドのミュージックビデオを皮切りに、フジロックフェスティバルでJacques Greenのライブを撮影したり、イギリスのSquarepusher来日時にはライブ映像をつくったりと、音楽畑でかなりの評価を得てきた。
彼らにVRの可能性や、楽しみ方について聞いてみた。
普通の撮影とVR撮影との違いとは?
VR撮影をするうえで、いちばん注意しているのは、「人にどう伝えるかをきちんと考えること」だという。意外になんだか・・・・・・普通? いやいや・・・・・・。
「よく出回ってる360°撮影って、"周りが全部映ってるからいいよね"っていうだけのものが多いんですね。ただ撮りっぱなし。そこには"体験"がないんですよ。そのカメラが、なんの、どういう目線なのかが決まっていない。だから見る人がどう見たらいいのかわからない。僕らは撮るときにカメラに役割を与えるように考えています。ライブだったら単に客席を見渡せるだけじゃなくて、最前列のお客さんになる。あるいはメンバーのひとりになりきる、とか」と、「渡邊課」課長(つまり代表)の渡邊徹さん。
「だから撮影の依頼を受けたときはまず、テーマと視点を考えます。それをきちんと入れて撮ると映像自体の見方がはっきりするんです。それが"伝える"ということなんですね」と、越後さん。
なるほど。普通の「2D」の撮影以上に自由度が高いだけに、撮影者の視点が重要になるということのようだ。ところが、実は渡邊さんたち、プロのVRカメラマンではなかったそう。そもそも映像が専門ではなくて、本業はアートディレクター。最初にVRに関わったのは、ハコスコのPR関連の仕事だったという。
「ハコスコのプレゼンをする時に、口で説明してもわからないから映像を見せるんですけど、デモをする際に、わかりやすくて楽しい映像がなかったんです」
そこで、自分たちで映像をつくり始めたのが最初。それもほんの2年ほど前の話。そんなわけで、「ことさらに撮影スキルが優れているわけでもない」のだとか。越後さん曰く「民生品しか使ってないですもん(笑)」
VR撮影時に気をつけていることは、・・・・・・気づかい?
撮影時に気をつけているのは、「カメラ位置ですね」と渡邊さん。
「カメラが見る人の視点になるので、カメラ位置と高さは重要。微妙なところで体験者の違和感が生じるんです。仮にバンドのメンバーの1人になるとしたら、その人の目の高さにカメラを据えることになる。ところが、そうするとステージ演出と被ってしまうんですね。ライティングなどの邪魔になるって。そこをどう説得していくかっていう(笑)」
・・・・・・撮影の問題というよりむしろ、その先の人間力でありコミュニケーションスキルって!
「基本的にはVRの撮影で気をつけるのは、ほぼそこがメインになります。どの位置にカメラが置くのがベストかをまず見極め、そこに置くために舞台の演出チームをどんなふうに説得するか。僕たちは過去の撮影事例を見せながら、丁寧に交渉していきます」
「今回のライブ撮影も交渉はかなり大変でしたよ」と北崎。
「救急車の中でVR撮影したのは、我々がおそらく世界初ですね。コムアイさんの真横に乗せてもらえたのは奇跡に近い。VRって被写体への近さが売りなんです。それに人の視点だったりするから、結構カメラ位置が高い。だから、通常の2Dのカメラに完全に映っちゃうんですよね。当然、事前に舞台監督とかカメラマンと調整するんですが、やっぱり当日になると"邪魔だよ!"みたいな話になることが多くて(笑)みんな必死ですからね」
実際に、ステージ前の2Dカメラの撮影アングルに完全にVRカメラが見切れていたらしく、「すみません3曲だけ!」という交渉を行いながら撮っていったのだとか。
「メジャーでカメラ位置の高さを測るふりしながら、"じゃあこれ100センチですから!"って言いながら、実は120センチのところに据えてる、みたいなこともやります」と越後さんも苦笑。
僕たちがVRする時にはどうすればいいのか。そして今後は
今でも民生用の360°カメラを使っているのは、「民生品のクオリティが意外に高い」のと、「ベスト・オブ・ベストがまだ見つからないから」という。
GoPro×6台はさておき、サムスンのGear 360や、リコーのTHETA Sは4万円程度で手に入る。そこで私たちがこれらのカメラを使って、VR映像を撮影する場合のコツや、注意する点についても聞いてみた。
「360°カメラって、物珍しくて買ったはいいけど、すぐ飽きて使わなくなる人も結構いて、もったいないんですよね。僕は"究極の自撮り棒"だと思ってもらえればいいと思います。真ん中におけば並ばなくても集合写真が撮れちゃいますし、とりあえず回しておけば空間全体の状況が残せるから、タイムマシンとも言えるわけで。とにかく撮りまくる。そこから先は、どういう視点でその映像を残せば、あとから見た人が"体験"として捉えられるかを考えるといい映像になると思います」(渡邊さん)
ハコスコオフィシャルサイト及びauウォレットマーケットでは「Insta 360 nano」を発売中。iPhoneのライトニングポートに直挿しして、VR映像を撮影できる
「これから始める人はテクニックとか気にせず、撮れ高重視でいろんなシーンをバンバン撮っちゃえばいいと思います。ひとつ注意してほしいのは、自分が映りたくなくて頭上から撮るやり方。頭の上に手を伸ばして撮ると、身長2メートルぐらいの人の視点になっちゃいますから(笑)、自分が映るぐらいのことは割り切って。僕たちも実際、ライブ映像とかにガンガン写ってますからね。いかに映らなくするかを考えて不自然になるより、映る前提で、そこにコンテンツを持ってくるようにと考えています。遊びで撮るときは、そもそもそんなこと気にしない方が面白い」(越後さん)
- 「水曜日のカンパネラ」ライブVR映像をハコスコで!
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記事で紹介した、水カンのライブVR映像は全5曲を収録。「水曜日のカンパネラ特製オリジナルハコスコ」を数量限定で販売中! 購入者はハコスコアプリ内で限定動画用シリアルコードを入力することで、オリジナルVR動画を5曲ダウンロードして視聴することができます。(無料ダイジェスト版も配信中)
詳細は以下のサイトで。
■ハコスコサイト
http://hacosco.com/wedcamp/
■水曜日のカンパネラオフィシャルサイト
http://store.emtg.jp/wedcamp/products/detail.php?product_id=8476
文:武田篤典
撮影:稲田 平
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