2016/09/12

桃太郎は桃から生まれてない? auのCMでお馴染みの三太郎の『不都合な原作諸説』

おかげさまでauのCMも大変好評をいただいております。「桃太郎」「浦島太郎」「金太郎」の三太郎の物語。むかーしからよく知られている三太郎ですからね。今さら原作の内容を説明するまでもありません。

ところが最近、我々T&S編集部は知ってしまいました。三太郎CMの一寸クイズ解答編のなかで、一寸法師の身長が約182cmだったという(説がある)ことを! 小さいお侍さんがお椀に乗って川下りしてるイメージはあったけど、まさか「打ち出の小槌」でそんなにデカくなったとは! ・・・・・・となると気になってくるのが、「じゃあ三太郎それぞれの原作はどうなの?」

さっそく調べてみました。桃太郎・浦島太郎・金太郎ってそもそもどんな話だったのか。182cmの一寸法師(という説がある)に匹敵するような驚愕なネタはあるのか。・・・・・・ありました! いわゆる「諸説あり」というやつ。今回T&Sでは、意外な"諸説"をご紹介したいと思います。※あくまで諸説です。

桃から生まれた桃太郎・・・・・・とは限らない

まず桃太郎。まあ普通に知ってますよね。あるところにおじいさんとおばあさんが住んでおりました。おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。おばあさんが洗濯をしていると川上から大きな桃がどんぶらこ〜どんぶらこ〜と流れてきました・・・・・・って、ここまで誰でも空で言えます。

で、桃がパッカーンと割れて、中から玉のようなような男の子が生まれてくる。彼はすくすく好青年に成長して、村人をいじめる鬼を退治するために鬼ヶ島に旅立つ。道中、犬・サル・キジをお供にして島に乗り込み、鬼をやっつけて財宝をもらって帰ってきました。めでたしめでたし。普通ですね。それでこそ『桃太郎』です。

ところが、調べてみると出てくる出てくる、「驚愕の諸説」

■おばあさんから生まれた説(明治初期までに口伝されていた桃太郎)

桃からではなく、おばあさんが産んだ説。桃が流れてきたのは事実で、おじいさんとおばあさんでそれを食べました。するとふたりとも突然若返り、なんというかそういうことがあって、元・おばあさんが桃太郎を産んだという展開。うん、まぁ、フツーに考えたらそうだよね。人間だもの。

■箱から生まれた説(秋田の民話)

流れてくるのが桃じゃなく箱。紅白二つの箱が流れてきて、赤い箱を拾って開けたら中に赤ちゃんがいたという話。「紅白の箱」に騙されて、なんか神様から贈られた特別なチカラを持つ子ども的な演出にも見えてしまいますが、上流で流した人、誰なんでしょう?

■桃じゃなくて若い女性が流れてくる説(伝承による)

流れてくるのが桃じゃなく、今度は女性。おばあさん、助けて家に連れて帰ります。子どもを望んでいたおばあさん。家には毎日山に芝刈りに行くような頑健なおじいさん。そこに現れた桃のような若い女性。頑健なおじいさん。・・・・・・ある日、玉のような男の子が生まれましたとさ。おばあさんも公認でめでたしめでたし。もはや桃、関係ないですね。

この話、続きます。非常に大柄な青年に成長する桃太郎。でも全然働かずに怠けてばかりいる、でも、のちに鬼退治には行くので「いざという時にはやるキャラ」という『三年寝太郎』パターン。

鬼も鬼じゃなくて外国人という説もあるし、奪いに行ったのは財宝ではなくて、彼らの住んでるエリアでよく取れた砂鉄を利用した製鉄技術だった・・・・・・なんて説もあります。さすがは日本でもトップレベルの人気昔話だけあって、ディテール違いも多いのかもしれませんね。

ちなみに福沢諭吉はベーシックな桃太郎話について、「鬼が大事にしている宝を奪って、私物化するなどひどすぎる」と批判したという記録も残っています。でもまあ、のちの桃ちゃんと鬼ちゃんとのあの仲の良さを見れば、きっともうわだかまりはないのでしょう。

玉手箱では終わらない浦島太郎

漁師の彼が浜辺で子どもたちにいじめられてる亀を助けたら、「お礼に!」と背中に乗せられて海中に突撃! 竜宮城に来てみれば、そこに乙姫様がいて、タイやヒラメは舞い踊るし、絵にもかけない美しさ! 毎日毎日すごく楽しいんだけど、やっぱり地上が恋しいと、帰宅。「絶対開けないでね」と渡されたお土産の玉手箱。絶対に開けるよね! そしたら真っ白な煙が出てきて、太郎は瞬時に老人に。地上では何百年も過ぎていたのでした・・・・・・。

そんな浦島太郎も「諸説あり」ます。

■漁師じゃないし、いじめられてる亀を助けないし、亀が乙姫様だし!(丹後風土記)

亀を助ける優しい漁師=純朴な海の男。かと思いきや、浦島太郎という物語のルーツと言われる『丹後國風土記』では、イケメンでノーブルでソフィスティケートされた人物として描かれているのだ。どうやらその土地の有力者の先祖らしく、漁師さんとは実はどこにも書かれていない。

で、ある日釣りに出たら、全然釣れずに超キレイな五色の亀をゲット。その亀を船に乗っけて眠る。目覚めた時には、大海原のど真ん中を漂う太郎のボートに美女添い寝。なんと、その亀が乙姫さまに変身しちゃったのだ。で、積極的に迫ってくる。なにせ太郎、ノーブルなイケメンだから!

■そもそも亀にすら会わない!(万葉集)

万葉集にも浦島太郎っぽい話はあって、それによると、釣りをしてたら海の神様の娘に出会う。そして結婚しちゃうという『リトル・マーメイド』的な展開。先に結婚しておいてから海の神様の宮で暮らすという時系列。で、あとはお約束の玉手箱へとつながるのだが、なんと太郎、最後は息絶えてしまいます。

■太郎、神に!(御伽草子)

『御伽草子』では、竜宮城から太郎が地元に戻っておじいちゃん化するところまでは普通。ところがなんと二段変化するのだ。おじいちゃん→鶴に。で、飛び去ってしまう。この話でもやはり乙姫さまは亀。飛び去った鶴を追って、ふたり(?)して蓬莱山というところでランデブー。ふたりとも神になりましたとさ。

どうやら浦島太郎は完全にラブストーリーのようです。しかも、乙姫さまとのあいだにはかなり大きな障害があって、文字通りのハッピーエンドには到達しない・・・・・・。だっておじいちゃんになっちゃうわけだから。そういうことをみんなは知ってるから、三太郎における浦ちゃんのエピソードには、なんとなく物悲しいものがあったりするのかもしれません。

実在? 武将? 金太郎、よくわからない

金太郎にもテーマソングはある。でも、よくわからないのです。桃太郎と浦島太郎の歌がそれぞれ彼らの物語を歌っているのに対し、金太郎の歌は単なる情景描写。

1番は「まさかり担いだ金太郎が熊にまたがって乗馬の練習をしています」、2番は「足柄山の山中で動物たちと相撲の練習をしています」。イメージされるのは、いわゆるあの姿の金太郎が山の中で動物たちとワチャワチャしているだけですね? そのくせ「足柄山」という具体的な地名。そして、ネット上には何年生まれ、何年没という情報まで流出している。

要は金太郎、山の中でそんな風に暮らしていたら、ある時、源頼光(おお、また具体名!)に、力を認められて家来に召し抱えられた、というお話。坂田金時(さかたのきんとき)という名前になって立派なお侍になるわけですが、「その人の幼少期はこうだったんですよ」という物語。

だからエピソードとしては

  • ・生まれた時に重い石臼を引っ張ってハイハイした。
  • ・熊にまたがって乗馬の練習をした。
  • ・動物たちと相撲を取った。
  • ・木を押し倒して崖に橋を架けた。

みたいな、「アウトドアライフ×力持ち」的なことばかり。

実在の人物かどうか、実ははっきりしないものの、坂田金時って大人になってからもえらいことをしているのです。

■鬼を倒しました(御伽草子)

京の都で悪さをするの酒呑童子という鬼が住む大江山という土地に、主人の源頼光と仲間たちと山伏姿で潜入し、鬼に酒を飲ませて眠らせて退治。勇ましいのか卑怯なのかビミョーな作戦でミッションコンプリート! この時、金時さん24歳(という具体性!)

■熱病で死にました

鬼退治というファンタジーから一転。大人になった金時さんは、九州討伐という歴史的にリアリティのある仕事に従事します。ところがその途中、岡山あたりで熱病というリアルにもほどがある病に倒れ、病死。この時、金太郎55歳!

というわけで、さすがは日本全国に知られ、歴史のある三太郎物語。それだけ多くの「諸説」があるんですね。ちなみに、桃太郎がスマホでも持ってたら「鬼退治するかどうかクラウドファンディングで決定し、軍資金を集める(もちろん金銀財宝は出資者シェア)。さる犬キジはLINEグループで管理して業務効率化。鬼ヶ島までGoogleマップで移動して時間短縮」てなことになるんですかね。・・・・・・身も蓋もないですけどね。

※auオフィシャルサイト TVCM

文:TIME & SPACE編集部