2015/07/08

【魁! 男子少女マンガ部】男たち、生まれて初めて『花より男子』を読む

ここは新宿のある酒場。2階にある秘密の小部屋が彼らの部室だ。引き戸を少し開けば侃々諤々(かんかんがくがく)、テンションも音量も上がり気味のトークが溢れ出してくる。

「そこに道明寺の不完全さがあるんだよ!」
「花沢類って結局、若いおじいちゃんですよ!」
「付き合うなら中島海ちゃんがいいなあ......」

"彼ら"とは――。TS 男子少女マンガ部である。メンバーは20代、30代、40代のT&S編集部員3人。2015年6月、突如編集部内に新設された男だけの部活。活動内容は、auのブックパスで配信される少女マンガを読み、語り倒すこと。これはその第1回活動報告である。お題は『マーガレット』(集英社)誌から、神尾葉子原作『花より男子』、そしてその続編である『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』だ。

『花より男子』
1992年より2004年まで『マーガレット』に連載。主人公の牧野つくしは超金持ち高校・英徳学園の新入生。地味に生きようとしていた彼女は、友だちがイジメのターゲットになったことから、学園を牛耳る超リッチなイケメン軍団「F4」と対決することに――。かくして、庶民代表のつくしをめぐる、世界的大富豪の子息にしてF4のリーダー・道明寺司(と様々なイケメンたち)の恋と冒険の物語は始まるのである。コミックス全37巻

「花沢類はずるいですよね」

30代N(以下30)「主人公の牧野つくしと、すべてをかね揃えた男たちが織りなすストーリー。少女マンガとしては王道中の王道展開だよね。しかもドラマ・映画化された大ヒット作。少女マンガ初心者たる我々『男子少女マンガ部』が取り組む第一作目としては、これ以上の作品はない。......で、どうだった?」

コミックス最終巻の表紙から、F4の面々と牧野つくし。抱っこされているのがつくしで、抱っこしてるのが道明寺司。時計回りに、熟女キラーの美作あきら、遊び人の西門総二郎、道明寺と同じく大財閥の跡取り花沢類

20代H(以下20)「僕、少女マンガって初めて読んだんですけど、面白くて一気に読んじゃいました。男性向けマンガとは全然違う"萌え"を感じたんですよね」

30代N(以下30)「確かに。ただし、"キャラクター萌え"よりも、"シーン萌え"だよね。そこら辺が新鮮だった。なるほど女子はこういうシチュエーションにキュンキュンするのかって(笑)」

40代T(以下40)「あれ、男が読んでも結構グッとくるんだよね。......年のせい?」

20「いやいや。僕も完全にヤラれちゃって、37巻一気に読みましたし(笑)。個人的に思ったのは、大きいコマの使い方が少年マンガと全然違うんだなっていうことです」

30「あぁ。少年マンガだと何らかの伏線があって、それをカッコよく回収するコマが大きくなってるけど、"花男"の場合はロマンチックなシーンが大きく描かれてる」

20「われながら意外なんですけど、ドキドキしました」

40「少年マンガを読むつもりで読むと、いい意味で期待を裏切られる。で、どんどん引き込まれていっちゃう」

30「もしかしたら女子とはぜんぜん読み方も違うんでしょうけどね」

主人公、牧野つくし。見た目も普通、家も庶民派のつくしが、超のつくお金持ち高校に入学してしまう。そこで出会う様々なキャラクターとの人間関係や恋愛模様がストーリーを紡いでいく。大ヒットした王道中の王道ラブストーリーだ

20「1巻の段階だと、過酷なイジメに立ち向かって学園生活を乗り切りつつ、道明寺との恋をどう進展させるか、みたいな話でしたけど......」

30「まずね、道明寺って最初からつくしに一途なのに、つくしが"コイツもしかして私のことが好きなのか?"って気づくのが4巻の終わりとかになってからっていう。男の立場から言わせれば、"わかってやれよ!"って思ってヤキモキしちゃう(笑)」

40「道明寺って、つくしにいろいろ買ってあげたり、"変な髪型"って言われてショック受けてストパーかけたり、つくしが夏休みを過ごす熱海に乗り込んできたり、行動は超わかりやすいのにね」

30「でも、つくしが好きなのは花沢類で。めちゃくちゃ尽くしてる道明寺に対して、類なんか非常階段でつくしに会って、ぼーっと雑談してるだけなのに」

20「花沢類はずるいんですよ!」

道明寺司。とんでもない金持ちで、学園を支配するF4のリーダー。当初はつくしと対立するも、あっという間に好きになる。それから最後までずっと好き。つくしは早く気付いてやれよ......って思う

40「道明寺のつくしへのアプローチって、生々しいじゃん。好きな相手に直接やることだから。でも、花沢類が一途に愛してる静さんはフランスに行っちゃってて、そこにいない」

30「だから色恋沙汰からは離れた、一段上のポジションから周りのみんなに接することができるんだろうね。そういう空気っぽい、超然とした感じが女の子に言わせりゃ余裕に映るというか......結果的にモテる」

20「あんなヤツいたら腹立つなー。たぶんデートしても全然面白くないですよ。何にも興味なくて、ボーっとしてて。アレは若いおじいちゃんです(笑)」

全編を通しての"キーマン"となる花沢類。つくしにとっては道明寺より先に好きになった男で、つくしはこの類と道明寺のあいだで心が揺れ動く。ちなみに表紙に1人で登場するのは、つくしと道明寺のほかは31巻の類のみ

40「オレなんか、いまだに女子に対して道明寺的なオドオド感がぬぐえないもん(笑)。人は類にはなれないんだよ!」

20「いや、40さんは類にはなれません」

40「うるさい! いや、でもなんであんなに牧野はモテるかね」

30「あのセレブ学校に通う"庶民"だし、学園内で泣く子も黙る存在だったF4に赤札貼り返すようなド根性の持ち主だし。F4のFってフラワーでしょ? 対して"つくし"ですよ。雑草魂っていう対比がストーリーのテーマになってますよね」

「"理想の女に会った"とか言って」

40「その"雑草"の部分には共感するんだよなあ」

30「つくしって、金も地位もないし、超美少女に描かれてるわけでもないし」

20「実家は巻を重ねるごとにどんどん貧乏化していくし(笑)。でも家族揃って明るいし、見ていて爽やかなところなんか、多くの読者が共感しやすいんでしょうね」

40「"雑草"であるということが特別なんだよね。踏まれても......結構ひどい踏まれ方しても、またバンバン立ち上がって歯向かってくる。そこはもうある種の特殊能力みたいなもんだよね。男目線で読んでても、あれは好感持てちゃう」

30「道明寺なんかは、完全にそれでやられてるもんね。"お前みたいなヤツは初めてだ"って」

20「道明寺だけじゃなくて、出会う男出会う男から"オマエみたいなヤツは初めてだ"って惚れられたり、ピンチを乗り切ったりしてますよね、つくしって」

金さんこと天草清之介が登場するのが9巻。道明寺家の向こうを張れる、政治家一族の御曹司。江戸っ子気質で、困っている人を放っておけない性格からつくしの中で「遠山の金さん」とダブり、勝手に「金さん」と呼ぶ。陰となり日向となり、つくしをサポート。ファンも多いキャラだ

40「そういえば、金さん(天草清之介:政治家一族の御曹司。だが、寿司職人を目指している)も"オレの近くのチャラチャラした女とは違う"って言ってた(笑)」

20「でも、金さんがつくしにプロポーズするくだりはグッと来ましたよ。校門で待ち伏せして"理想の女に会った"とか言って。僕、そんなセリフ言ったことないですから!」

30「オレだってないよ(笑)」

40「オレもない(笑)」

20「あのプロポーズの時点で金さんって高3ぐらいでしょ? すごい。尊敬しますよ」

30「しかもその後、父親が自分をジュニアとしてお披露目するパーティーで、つくしのために家を捨てる宣言」

40「終盤になると、道明寺も家を捨てるって言うし、道明寺のオカンに金で雇われた国沢亜門も、裏切ってつくしの側につこうとするし」

20「女性が憧れる男性像をバラエティ豊かに取り揃えていて、みんながみんな、つくしに尽くしてくれる。そういうところが読者は気持ちいいんでしょうね」

30「F4の仲間とか、周りの金持ち連中ってパーティーやったりクラブに行ったりしてめちゃくちゃ遊んでるじゃない。最初、現代の話かと思った。そのぐらいみんな、今の時代にもいそうなキャラクターに思えたんだよね」

40「でも、女性関係については道明寺は実は全然遊んでないっていう」

30「そう! あれだけ顔も家柄もよくて背も高いし自信があって上から目線で、言うことのない設定なのに......あいつDTなんですよね」

20「だからいいんですよね!」

30「うん。あれは実は、不完全さの象徴だと思う。圧倒的王子様的カッコよさを認めるコもいるだろうけど、あまりに完璧だと引いちゃうコもいるでしょ。道明寺の場合は、それがいい落としどころになってるんだよね。あの態度なんだけど、実際にはウブだということで、絶対母性本能くすぐられてるでしょ」

40「一途である、ということの証明にもなってるよね。別に誰かと付き合った過去があってもいいし、他の女性キャラに心が揺れてもいいんだけど、つくしに頑なに操を立ててる。一方でつくしは結構フラフラしてるのに(笑)」

20「それでどれだけトロトロになっても、つくしも決して一線は超えないんですよねー」

40「会社の若い娘に話を聞いたら、"いっつもつくしのことを振り回すし、時には殴ったり暴言吐いたりしつつも、オマエがいちばんだよっていう芯の部分が変わらないから、道明寺は憎めないんですー"って言ってた。平凡なオッサンのオレからしたら逆に思えるんだよなあ......」

20「逆?」

40「振り回されてるのって、道明寺の方でしょ」

「男は別フォルダ保存、女は上書き保存」

40「オレ、最初は牧野つくしが庶民であるというだけで、"オレたちチーム"と思って読んでたんだけど、つくしって単に元会社員の娘というだけで、歩んでる人生は全然平凡じゃないんだよね」

30「あー、超ハードな青春ですよね(笑)」

40「37巻のあいだに、良くも悪くもミラクルを連発してるわけですよ。2巻ですでに乱暴されそうになってるし、5巻ではクルマに引きずられ、9巻ではダマされてヌード写真を撮られそうになってるし......」

20「そこへ金さんが助けに来るんですよね!」

40「そう、そば屋の出前として! ......他にもつくしはマイナス15度の真冬のカナダで迷子になったり、誘拐されて拉致されたり、暴漢に刺された道明寺を抱きかかえて運んだり......」

5巻/ドイツ人青年・トーマスと抱き合う写真を校内にばらまかれ、つくしはグラウンドをクルマで引きずられ、暴行される。すべては幼い頃から道明寺を思っていた三条桜子の策略だった。29巻/日本で行われたメジャーリーグの公式戦で、ホームランボールをキャッチ! メジャー新記録だったため、ニュースで世界中に配信される。31巻/道明寺家を逆恨みした男に、道明寺が刺されてしまう。後半の転機となるエピソードだ

20「後半では道明寺が記憶喪失になって、つくしのことだけ忘れちゃいますからね」

40「だから、牧野つくしはもうリスペクトせざるを得ない(笑)。"オレたちチーム"とかいう生ぬるい存在じゃないの。超経験値の高い"姐さん"なわけですよ。どんなひどい目にあっても、へこたれず復活してくる」

30「オレもそういう意味では目からウロコが落ちたところがあって。付き合いの長い短いは関係ないんだよね。女子は新鮮で、新しい方へ行く。よく"男は別フォルダ保存。女は上書き保存"っていうけど、これはホントだなあと思った」

20「最初は"庶民"ということで力強さを出していたのが、後半になると本当に力強くて。わざわざ雑草とかいわなくても、それはひしひしと伝わってきますよね」

14巻/「好きだ」「気がおかしくなるほど惚れてる」「オレが欲しいのはおまえだけだ」などなど、こんな熱いセリフを実は比較的浅い巻ですでに言っている。19巻/世界に名だたるジュエラーに特注した土星のネックレスをプレゼントする道明寺。ふたりで天体望遠鏡で土星を観測したあと、箱をパカっと開けてプレゼントするロマンチストぶり

32巻/物語の終盤で、つくしにとって"最大の敵"、中島海ちゃん登場。誰にでも優しくて性格も良し。悪意はないようだが、そのぶん、周囲との軋轢を生む

40「つくしに比べたら道明寺なんて、家柄と財産とルックスに恵まれただけの平凡なヤツなんだよ。そんな彼がありとあらゆるものを与えてるのに、つくしはびくともしない。むしろ"オレたちチーム"なのは道明寺じゃないかって思えてくる。だからこそ、ずーっとつくしのことを追い続けてる道明寺をなんとかしてやりたいと思っちゃう」

30「そうやって考えると、道明寺ってカワイイところありますよね。なんといってもDTだし」

20「あと、これはたぶん、男ならではの見方だと思うんですけど......僕、最後の方に出てきた海ちゃんに惹かれました」

40「すごくわかる。天真爛漫で悪意がなくて......ないのか?(笑) でも、素直にかわいいもんね」

20「ビジュアルも男好きするんですよ!」

40「だからこそ、全巻を通していちばん腹がたったのも海ちゃん。"あーこれ、道明寺も好きになっちゃうかもしれんぞ"って思ったから。"道明寺よ! つくしとなんとかうまくいけ!"って願ってる方のオレに言わせりゃ、シリーズ最大の敵(笑)」

30「彼女は完全に同性から嫌われるタイプですよね。最後には結局、そこまでしなくてもって思うぐらい、二重三重にリベンジされてたけど」

36巻/夢はなにかと聞かれ、「もうかなった」と言いながらつくしを指さす道明寺。ふたりが気持ちを確かめあう、全エピソード中でもっとも感動的なシーンだ。結ばれそうになるだけで、結ばれはしないが

40「これ、連載12年でしょ。最後まで読んで1巻振り返ると、すげえ隔世の感があるよね?」

20「F4が敵だった頃が懐かしい(笑)」

30「語り尽くせないぐらいにあっちへ行き、こっちへ行きした末に、ようやくきちんと落ち着くから、さすがに最後は泣けましたね」

40「泣けた。物語のなかでは2年しか経ってないけど、オレ、12年も共に過ごしてきたから。"ようやく道明寺の思いが通じたのか!"と(笑)」

30「"牧野つくし、ありがとう!"って(笑)」

20「12年間は過ごしてないでしょ(笑)。一気読みでしたし」

40「なんだかんだいって引き込まれちゃう作品だよね。オレは2人の子持ちだし、ちょいワルでもなんでもないただのオッサンだから、そもそも自分のラブなどないし、他人の恋愛相談に乗るようなことも耐えて久しいわけで」

30「オレだってそうですよ。多少は恋愛の話もしますけど、何かあってもやっぱり常識的で無難なところへ落ち着かせようとしますからね......あのさ」

20「はい?」

30「こういうの、普通じゃ絶対ありえないからな」

20「わかってますよ(笑)。だからこそ夢中になれるんじゃないですか! あと、"花男"って終わってませんからね......」

40「ん?」

「"花男"の新シリーズが7月3日に発売されました」

20「続編の『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』の連載が始まってます。第1巻は7月3日に発売されました」

30「そうだね。F4が卒業して2年後の話で、作品としては12年ぶりの新作」

auのブックパスより『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』第一巻。F4ならぬ、コレクト5の面々。今度はメンバーに、なんと女子もいるのである。リーダー格の神楽木晴と、またしても庶民女子・江戸川音を中心にストーリーは展開する模様

40「今度はコレクト5だね。なんかF4はセレブリティの美学と気分で学内でイジメをやってたけど、新作はちょっと様子が違う」

30「なんか大幅に世知辛くなってるよね。学校に寄付金納めてないヤツに退学届書かせるっていう。"庶民狩り"(笑)」

40「お金持ち学校に行ってる生徒の、親の仕事がどんどんうまくいかなくなってて、寄付金が払えなくて、学校の施設も老朽化してる。お金持ちといえども安泰ではないという時代ね。で、F4は劇中でもキラキラしたいい時代の象徴みたいに描かれてて、みんな"F4に憧れて英徳学園に入った"みたいなことになってる」

20「今度はコレクト5の誰かと牧野つくし的な女子がまた恋をするわけですね?」

40「するね! しかも、F4の足跡を追って聖地巡礼とかするメタ展開。でもまだ単行本1巻が7月3日に出たばっかりだし。これからどうなっていくのか......」

20「花男は後追いの一気読みでしたけど、花晴れはリアルタイムで追いかけていくっすよ」

30「オレも読むよ。auのブックパスで読めるから、こうなったら最後まで見届ける(笑)」

そんな"花男"が、au「ブックパス」で全巻読み放題という偶然

会場となったお店の女性スタッフに「道明寺っぽくビールを注文する」、「花沢類っぽくその非礼をわびる」といった遊びも盛り込みつつ、TS男子少女マンガ部の第1回活動はこうして終電過ぎまで続いた。そして、今日のトークで得た新たな気付きを確認するため、今度はauの「ブックパス」で再読しようと心に誓った。

......なぜなら、今なら、13日までの期間限定で『花より男子』が全巻読み放題だからだ。さらに言うと、「ブックパス」では現在、マーガレットコミックスの数々の人気作品や定番作品が読み放題となるキャンペーン実施中である。

「ブックパス」によるマーガレットコミックス読み放題のキャンペーンが続く限り、TS 男子少女マンガ部の活動はこれからも続くだろう。第2回TS 男子少女マンガ部の開催日と作品名はまだ決まっていないが、しかし皆、心の中でこうつぶやくのであった。「できれば今度はもうちょっと短めの作品にして欲しい」と......!

つづく!

編集協力:auスマートパス 文:武田篤典 撮影:稲田 平

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