2018/05/18
寒すぎて人命救助も命がけの北欧 軍が採用した『遭難者探索』ドローンとは?
冬の平均気温がマイナスになることが珍しくない北欧では、天災や事故による遭難はそのまま生命の危機につながる。もちろん、行方不明者を探す側にとっても命がけの作業だ。そこで、広大なエリアで遭難者などの捜索を専門とするドローン「APID One」がスウェーデンで開発されている。
スウェーデンでUAV(無人航空機)の開発を手がけるCybAero社が開発した「APID One」は、人間工学に基づいたデザインを採用した優れた空気力学的特性と航空センサシステムを備えたヘリコプター型のUAVで、広大なエリアを高速かつ正確に遭難者などを捜索できるよう設計。船上で完全に自律的に離着陸できるVTOL(垂直離着陸)型のAPID 60という機体をベースにしており、北極の厳しい環境でも正確に飛行できるのが大きな特徴だ。
その後継機となるAPID Oneは本体にさまざまなセンサー機材を搭載し、赤外線カメラにより離れた場所でも人を捜索できる。
ほかにも目的にあわせて、紫外線、ナイトビジョン、ガス検知などさまざまなカメラを搭載でき、機体全体もカスタマイズできるよう対応。それでいてメンテナンスも簡単にできるようシンプルな構造だ。基本的な仕様は公開されていないが、展示会では6時間もの連続飛行ができると紹介されている。
現在は大きく用途にあわせてレスキュー、レンジャー、防衛市場に特化した3つのモデルを開発している。それぞれのモデルをベースにさらに用途にあわせた細かなカスタマイズが可能で、カメラやセンサーの組み合わせなども自在にできる。たとえばレスキュー用では、スウェーデンの行方不明者捜索プロジェクト「Missing People Sweden」の専用機としても採用されているが、これまで探索が難しかった森林や北極に近いエリアもカバーできるようにカスタマイズした。また、レンジャータイプは山火事や交通事故現場での情報収集や監視といった現場で使用することを想定されている。
気温や天候の変化に強いドローンの開発は世界中で進められているが、耐寒性に関しては2011年から開発を行っているCybAero社が一歩先を行っており、信頼性も高いといえそうだ。
文:野々下裕子