2018/02/07
水中ドローンに最適な動きはマンタの泳ぎだった! 水中マッピングや探査に革命の予感
1月にラスベガスで開催された国際家電見本市のCESでは、例年以上にたくさんの水中ドローンが出展されたことで話題になっていた。ただし、ダイビングで使う水中スクーターのような形をしていたり、電源を供給するケーブルが付いていたり、ドローン単体で水中を自在に泳ぐのは技術的にまだ難しいかのようにみえた。
そうした状況も、国立シンガポール大学が開発する「MantaDroid」が登場すれば大きく変わるかもしれない。これまでの水中ドローンとは異なる、本物のように美しい動きで水中を泳ぐことができ、しかもその構造はひとつのヒレとモーターの組み合わせだけという、とてもシンプルな特徴になっている。複雑でメカニカルにしないことで、本物と同じような動きを再現できているのだ。
水中ドローンに最適な動き=マンタの泳ぎ!?
大学では水中を自在に泳ぐロボットの研究を30年以上続けてきており、その結果、世界でもっとも優雅に泳ぐといわれているマンタの動きを再現することに成功。さらに興味深いのは、マンタの動きをただ模倣したのではなく、マンタのカラダが流体力学的に最適な泳ぎをすることを発見したうえで、その動きを再現したところにある。水中ドローンに最適な動きを追求した結果が、マンタの泳ぎと同じだったのだ。この研究成果がロボティクス開発者に与える影響は大きく、生物を模倣したロボティクス技術をさらに推し進めるきっかけにもなるとしている。
現在のMantaDroidは体長35cm、幅63cm、重さ0.7kgという手に持てるぐらいのサイズで、全体の素材にポリ塩化ビニルが使われている。2年間で40種類のプロトタイプをシミュレーションした結果、毎秒0.7メートルの速度で10時間泳ぐことができるところまで完成度を高めている。将来的には実物のマンタに大きさを近づけることを目指し、具体的な次のステップとして2倍サイズのMantaDroidを制作する予定だ。
大型のMantaDroidが完成すれば遠洋や深海でも動かせるようになり、さまざまなセンサー類を搭載することができる。これまでの水中探査機よりも手軽に、水中マッピングや水質探査、海洋調査などに活用することが期待されている。
実用への期待が高まるが、MantaDroid本物のマンタと一緒になって泳ぐ姿を想像するだけでも楽しそうだ。
文:野々下裕子