2017/11/13

地下空間を自由自在にマッピング! 地底探索ドローン『TILT Ranger』が地球の謎を解明

洞穴や地下トンネルなどの狭い空間を探索するのに、ドローンほど最適なマシンはないかもしれない。スウェーデンのベンチャー企業Inkonova社が開発した「TILT Ranger(ティルトレンジャー)」は、地底探索のために開発されたドローン。深い穴へ降りる時は空中を飛び、地面に到達すると車輪を使って移動するという、ユニークなハイブリッド仕様になっている。

どんなに深い場所でも自分の位置を把握する最新のコントロールシステム搭載

ボディはレトロ風だが、最新のコントロールシステムを搭載している。頑丈な本体に取り付けられた車輪の回転数から移動位置が計算でき、どんなに深い場所でも自分の位置を把握できる。さらに、ドローン開発で培ってきた独自のローター(プロペラ)技術を採用した姿勢制御システムを応用し、大きな傾斜がある道でもバランスよく走ることができる。

プロペラ部分はカーボンファイバー製のカバーで覆われているので、多少の落下物にも耐えられる。連続飛行時間は地上での走行も含めて20分程度だが、1キロの重さの荷物を地下へ運ぶことも可能だ。

たった10分で薄暗い3万立法メートルの地下鉱山データを完成

ほかのドローンにない特徴としては、「GPSが使えない」、「光が届かない」、「狭くて移動が難しい」という三重苦状態にある地下空間を無人で自在に移動し、短時間でマッピングできる点にある。搭載されているLow Luxカメラは、薄暗いところでも明るく撮影でき、FPV(一人称視点)で離れた場所からでもコントロールしやすい。

TILT Rangerから撮影した画像

3Dレーザースキャナで探知した周囲のデータをSLAMという技術で分析し、現場の正確な地図を作成できるのだが、ある地下鉱山でTILT Rangerのマッピング機能をテストしたところ、ほんの10分程度で3万立法メートルの鉱山のデータを完成させ、専門家を驚かせた。この成果が知られるやいなや、鉱山以外の原子力発電開発など、さまざまな分野から問い合わせが殺到したという。

水中も探索できるプロトタイプも開発されており、今後はさらに活躍の場を広げそうだ。そういえば先日、月の地下に巨大な穴があることが発見されたが、もしかしたらその探索にTILT Rangerが活躍する日がくるかも?

文:野々下裕子