2017/09/04
まるでジブリの昆虫型飛行機! 72のプロペラで飛ぶ『有人飛行ドローン』がスゴすぎる
人を乗せて空を移動する有人ドローンは、未来の交通手段として研究開発が進んでいる。スウェーデン在住のエンジニアであるAxel Borg氏は、長年の研究開発の結果、72個のプロペラで空を飛ぶというなんとも奇抜な一人乗りドローン「chAIR」を一人で開発し、密かに注目を集めている。
Borg氏はこれまで、“amazingDIYprojects” というハンドル名で個人で取り組んでいる有人ドローンの開発状況を、7年間にわたりオンラインへ公開してきた。クワッド(4つのプロペラ)スタイルをベースに試行錯誤を重ね、最初の作品から20機目で、人を乗せて飛ばすことに成功している。その時は、縦長のローターを左右に配置するというデザインだったが、そのあとなにかがひらめいたのか、最新作では72個のプロペラを使って安定飛行を実現させるアイデアを思いついたようだ。
そうして出来上がった試作品は、離着陸も含めて安定して人を乗せて飛ばせるパワーとバランスを備えた機体に仕上がった。1つの輪の中に18個のプロペラを配置した大型のプロペラを4つ取り付け、動力をオンにすると、それが羽のようにふわりと浮き上がり、そのままゆっくり空へと浮かびあがる。そのあとは3〜4mほどの高さを、自転車ぐらいのスピードで飛び回ることができる。試乗の様子を紹介したビデオは、スウェーデンの豊かな森の中で撮影されているのもあってか、まるでジブリアニメに登場する虫をモデルにした飛行機械のようにも見える。
ドローンそのものはDIYらしくシンプルな設計で、簡易タイプのビニールチェアとプロペラをコントロールするシステムを組み合わせ、動力のバッテリーもそのままむき出しになっている。8分間の飛行でバッテリーを57%消費するので、理論的には14分間連続飛行が可能ということだ。パーツは取り外しが可能で、全体の製作コストは約1万ドル(120万円)と、軽自動車と同程度に抑えられている。
ただし、72個のプロペラから出る騒音はかなりのもので、さすがに人が乗り続けるにはつらいところがある。また、揺れも想定していた以上にあり、前後の移動のスムーズさなど、まだまだ改善の余地はあるという。たとえば、移動手段として使う場合は最低40分から90分の飛行時間が必要で、そのためのバッテリー容量を考えると、現在の自身が持つ技術で開発できることは限界があるとしている。
いずれにしてもBorg氏は、開発したドローンについては、「あくまで自分のエンジニアとしての技術を形にするための手段であり、ビジネスにする予定はない」とコメント。一方で、自分の夢である趣味の開発を支えてくれた家族へなんらかの還元があればうれしいともしており、強い要望があれば、もしかしたら、設計図やアイデアをメーカーに提供するという形で実用化されるかもしれない。
文:野々下裕子