2017/07/18

【世界のドローン69】ニューヨーク市公式認定 真紅の消防ドローンがかっこよすぎる

写真提供:New York City Fire Department (FDNY)

救助活動や災害現場で活躍するといわれているドローンだが、ニューヨーク市消防局ことFDNY(Fire Department of the City of New York)では、公式認定されたドローンと専用の運用システムの現場活用をすでに始めている。

高解像度カメラと赤外線カメラで、上空から現場をリアルタイムに配信

ドローンが実際に消火活動を行うのではなく、ドローンに搭載したカメラで火災現場を上から見下ろすことで、その映像を共有しながら、現場指揮官やオペレーションセンターが同時に現場への正確な指示が出せるようにするというものだ。住宅や人口が密集するニューヨーク市では、高層の建物が火事になった際に、ヘリコプターを使ったり、ハシゴを使うのが難しいが、コンパクトなドローンを活用することで、現場状況を素早く、適切に把握できる。

ドローン本体の重量は約8ポンド(3.6キログラム)とコンパクトで、ワイヤレスではなく、安全性と電源供給を維持するために有線でつながれている。肉眼では判断しにくい現場の状況、たとえば、被災者や消防隊員の位置を確かめたり、消化後も発火点や燃え残りのホットスポットを検出するために、高解像度カメラと赤外線カメラが搭載されている。

操縦は特別に訓練された消防隊員が行う。現場に持ち込むシステムもコンテナサイズというコンパクトさで機動性に優れており、状況にあわせて移動しながら、現場の映像や状況をリアルタイムに受信する。ちなみに、状況に応じて使えるよう、常時3つのドローンが配備されているという。

高解像度カメラと赤外線カメラ搭載の機体。写真提供:New York City Fire Department (FDNY)
コンパクトサイズなドローンのシステム。写真提供:New York City Fire Department (FDNY)

ドローンが消防隊員の目となり声となり、消火活動を促す

具体的には、出火した建物の屋上に消火に使える水があるかを確認したり、煙を排気できる換気口があるかを探したり、消防隊員達の目となって活動を支援する。また、同時に今後はスピーカーで周囲に避難警告を発するなど、さまざまな使い方が想定されている。今年、6階建住宅の火災現場で実際に使用され、消防隊員達を現場でサポートしたが、その際に撮影された空中からの映像はFDNYのFacebookページに投稿されている。

上空からドローンにより配信された火災現場。写真提供:New York City Fire Department (FDNY)

ドローンとシステムの価格は8万5,000ドル(約950万円)とのことだが、火災や災害などの緊急時における本格的なドローンの活用に対する評価は高く、今後はニューヨーク市以外でも採用が進む可能性がある。ドローンの規制を行っているFAA(アメリカ連邦航空局)とも密接に連絡をとり、現場で安全にドローンが運用できるよう力を入れている。出動の際、FAAの承認には約10分かかるようだが、将来的には、こうした手続きについてもドローンの活躍次第では改善されるかもしれない。

いずれにしても、日本も密集した住宅地や高層の建物が多いことから、ドローンで現場支援ができるようになるのを期待したいところである。

文:野々下裕子