2017/02/10

体温、血圧はスポンジで測る? ヘルスケアデバイスの開発がサウジアラビアで進行中

アルミホイルやスポンジで血圧を測定!?

写真提供:Muhammad Mustafa Hussain/KAUST

健康状態をモニタリングする機能があることで、Apple Watch‎やSamsunのGearに期待した人は多かったはずだが、その機能だけが目的の人にしてみれば、スマート・ウォッチは当然ながら高額だ。一方で、フィットネス目的のトラッカー(活動量計)はそれほど高額ではないが、歩数や睡眠パターンなどを測る機能しかなく、体温や心拍数まで測らないものがほとんどだ。

サウジアラビアのキング・アブドゥッラー科学技術大学(KAUST)の研究者、Muhammad Mustafa Hussain氏は、安価な健康情報トラッカー「Paper Watch」の開発を進めている。スポンジやアルミホイルなど安い素材にシリコンチップを組み合わせ、安くて柔軟なセンサーを作り、リストバンドの内側に配して皮膚に当てる。体温や脈拍、発汗、血圧などを計測できるようになるそうだ。計測値は無線でスマートフォンなどに送る。

プロトタイプ版はシンプルなデザインで、紙のリストバンドのようにも見える。文字盤もないし、LEDのインジケーターもないので時間も分からない(将来的には時刻を表示すべきと開発者は考えているようだ)。

理想は部品を町の薬局で気軽に購入できること

また、開発者は価格を安くして誰でも手が届く製品にしたいと考えており、今後、部品コストの削減に数年かけるとともに、温度センサーやバッテリー部品などは脱着可能にして、手首の皮膚との接触などで劣化したら、その部品だけ交換できるようにする計画だ。現行のプロトタイプの価格(25ドル)を毎年5ドルずつ下げていきたいと考えているという。

活動量計は健康志向の人々を中心に活用されているが、Paper Watchが商品化にあたって目指しているのは、必ずしも健康やスポーツの成績アップに関心の高い層だけでなく、高齢者など一般の人々に幅広く使われること。劣化した部品は町の薬局などで購入できるようになれば、交換も自分でできる。安く、かつ正確性が高まれば、医療機器として入院患者には必ず装着させるようになるかもしれない。

体温や血圧、心拍数などを常時モニタリングしている人は極めて少ない。定常的に血圧を測っているという人でも、朝晩2回くらいが関の山というところだし、測定時にはタイミングを見計らって呼吸を落ち着けてから計測するので、「良い数字」が出がちだ。また体温にしても、基礎体温を継続的に測る人などを除くと、風邪かなと思ったときなどでない限り、体温計を使う機会は少ない。

もし、安価で邪魔にならず、バッテリー充電やデータ送受の手間が少ないヘルスケアデバイスを多くの人が身に着けるようになると、大量のデータが得られて、病気を初期段階で察知することが可能になってくるだろう。

文:幸野百太郎