2017/02/06
【世界のドローン55】どんな形も自在にカスタマイズ! 自分だけのドローンが作れるデザインシステムが公開
3つ以上のローターを搭載したマルチローターヘリコプタータイプのドローンは、これまでにもさまざまなタイプの機種が登場しているが、ユニークな設計になるほど安定して飛ばすのが難しくなり、今や多くのドローンが似たようなクワッドローター型のデザインに落ち着いている。
もっと自由に、自分だけのドローンをデザインしてみたいというエンジニアの要望に応えて、コンピュータ上で自在にドローンをデザインできるシステムを、MIT(マサチューセッツ工科大学)のCSAIL(Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory)が開発した。コンピュータサイエンスと人工知能の研究を長年行ってきたCSAILの経験を基に構築されたシステムは、見た目や使い方は既存のCADや3Dデザインソフトとよく似ている。
実際に飛ばした時のディテールまでシミュレーションできる
画面には、ローターやモーター、アームなど、あらかじめ用意されたパーツのデータベースが並んでいて、それらをドラッグ&ドロップで画面に配置していくだけで簡単にデザインが行えるようにしている。ポイントは、デザインしたドローンを実際に飛ばした時の推進力やバランスの状態をシミュレーションできることで、ロッドの長さやモーターの角度といった細かいデザインはもちろん、積載量や飛行時間、バッテリーの使用量などもシミュレーションすることができる。さらに、ドローンの飛行ライセンスを取得する際に必要となる、どの範囲まで飛ばせるかといった情報を取得できる「LQRコントローラ」も搭載されている。
本当にちゃんとシミュレーションができているかを実証するため、試しにローターが5つある「ペンタコプター」と、異なる高さのローターとプロペラを組み合わせた、ウサギのような「バニーコプター」という、いかにも飛ぶのが難しそうなドローンをデザインしてみたところ、いずれのドローンも問題なく飛ばすことができたと動画では紹介されている。
動画提供:Tom Buehler, MIT CSAIL
複雑な設計開発をコンピュータ上で可能に
プロジェクトを主導するWojciech Matusik教授は、「飛行性能とデザインを両立させた新しいドローンの製作にコンピュータを使うのは不可欠だが、形状だけでなく制御パラメータも複雑化するため、非常に高度なシステムを開発する必要があった」と述べている。開発の過程で既存の発想を切り替えることで、インタラクティブな設計ができる最初のシステムを完成させたともコメントしている。
たとえば、ドローンのローターの数を奇数にすると、カメラの視野角が広げられたり、最大積載量の制約を変えたりできるが、一般的ではないため、エレクトロニクスや製造など複数にまたがる専門知識が必要となり、設計にも時間とコストがかかっていた。それに対しMITが開発したデザインシステムは、コンピュータ上ですべてシミュレーションできるため、ドローンのデザインアイデアを飛躍的に拡大する可能性があるとしている。
開発プロジェクトは、国立科学財団や空軍研究所、欧州連合のHorizon 2020研究といったイノベーションプログラムからもサポートを受けており、今後どのようなかたちで公開されるかが検討されている。
文:野々下裕子