2017/01/26

街の利便性と価値を高めるネットキオスク・サービスがアメリカで増加中

以前、T&Sの記事でも紹介したが、2016年からNYの一部のエリアでは、電話ボックス代わりに無料のWi-Fiアクセスを提供するネットキオスク・サービス「LinkNYC」が導入されている。
※参考記事:日本にも導入期待! アメリカの公衆電話跡地が、Wi-Fiと無料充電スポットへ

ところが、アダルトサイトをこっそり見るためにLinkNYCを利用する不届き者があまりにも多くいたことから、NY市は緊急措置としてインターネットをブラウジングするサービスを中止せざるをえなくなってしまった。

キオスクサービスの最先端テストモデルといえる「LQD PALO」

写真提供:LQD

そうした問題が生じた一方で、今度は「LQD PALO」という組織が、LinkNYCと同じようなキオスクサービスを提供し、話題になっている。LQD PALOのキオスクは、46インチ縦型の高輝度なLCDタッチスクリーンを搭載し、無料のWi-Fiアクセス以外に最寄りのアトラクションやイベント、レストラン、ショップなどのタウン情報を紹介したり、ボランティアグループの交流や公共サービスをアナウンスする。キオスクに、街の情報を検索するだけでなく、コミュニケーション発信のハブになることを目指すとしている。

キオスク単体としての機能も高く、音声認識機能が搭載され、ハンズフリーで使うことができるほか、周囲の環境を感知するセンサーもあり、天気予報や地図、周辺の道案内などが表示される。さらに、位置情報を発信するビーコンでタクシーの呼び出しポイントとして利用でき、いざという時の緊急警報発信もできるよう、電源はソーラーパネルが使われている。キオスクのデザインは、Apple初期製品のプロダクトデザインを手掛けたあのfrogが担当。計画そのものは2013年からスタートしており、サインや広告として注目を集めやすいなど、全体の完成度が高められているのが大きな特徴となっている。

写真提供:LQD

現在、NYの5つの地区で両サービスが共存しているが、LincNYCがGoogleらが提供するプロジェクトで、利用者にオープンに利用してもらう傾向にあるのに対し、LQD PALOは、マイクロソフトのスイス支社でCEOを務めたRandy Ramusackが立ち上げたベンチャー起業で、2015年からfrogと提携し、すでに大手通信キャリアのベライゾンに買収されるなど、街の公共インフラとしてきっちりとした方向を決めつつ運営されている。今後も、利用者の要望を取り入れながらキオスクの機能を高め、サービスを拡張させるとしており、世界へ同様のキオスクサービスを提供するうえでの、最先端テストモデルとしても位置付けられているようだ。

ラスベガスの「EnGoPLANET」も話題スポットに

写真提供:EnGoPlanet

NY以外でも同じようなネットキオスクのアイデアがあり、競争はすでに始まりつつある。そのひとつ、ラスベガスでは「EnGoPLANET」と名付けられたプロジェクトが進められ、無料のアクセススポット以外に、USB充電スポットや監視カメラシステムとして使うことを目的としている。充電は、ソーラーパネルと、道を歩く人たちが発電パネルを踏んで電力をためる方法を採用し、夜のあいだもたくさんの観光客が集まるラスベガスならではの仕様になっている。

インターネットのアクセスとデバイスの充電が無料でできることは、街の魅力を高めるうえで想像されている以上に重要な要素になっており、今後、スマートシティなどと合わせてネットキオスク・サービスに力を入れる地域が増えるのは間違いない。そこでどのような機能とサービスを提供するのか、世界中の企業が新市場を狙って競争を始めるだろう。観光大国を目指し、間もなく東京オリンピックが開催される日本では、どのようなキオスクが登場するのか注目したいところだ。

文:野々下裕子