2017/01/25

あなたの家庭は大丈夫? SNSで脅かされる子どものプライバシー

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アメリカの2歳児の92%はオンラインに登場しており、その3分の1は生後24時間以内に最初のオンライン・デビューを果たしているそうだ。投稿しているのはもちろん本人ではなく、親などの家族だ。

世界でいちばんかわいい我が子が初めて歩いたり、バースデーケーキを手づかみにしたり、水たまりで転んだりすれば、SNSにシェアする格好のタイミングとなる。カタコトの言葉を発したり、楽器で音を出すだけでも、「うちの子、天才!」というキャプションとともに画像や動画がアップされ、多くの友人がほほえましい思いで「いいね!」をつける。

だが、その行為が不用意にも子どもを傷つけることがある。米国小児学会が10月にサンフランシスコで開催したイベントでは、「子どもを持つ親のソーシャル・メディアとの関わりに関するリスク」と題したプレゼンテーションが行われた。

親から見れば「かわいい失敗」。でも子どもにとっては・・・・・・?

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たとえば、6歳の子どもが失敗したことを、親が「かわいい」と捉えてSNSに好意でアップする。それをママ友が見つけてほほえましく思い、「いいね!」をつける。そこまではいい。だが、ママ友がそれを自分の子どもに見せたらどうなるだろうか? 「〇〇ちゃんがこんな失敗をした」ということが子ども同士のあいだで広まり、からかいの対象になったり、場合によってはイジメの材料になってしまうこともある。

子どもの立場から見れば、自分が知らないうちに、自分の失敗が映像つきで世界に公開され、意地悪な友達に提供されてしまったということになる。それも、影響は今だけではなく未来にも及ぶ。子どもが大きくなって、友達や先生に幼少時代のことを知られたくないと思っても、あとの祭りだ。

かわいい我が子を多くの友人に見てもらいたいという気持ちになっても、反射的にシェアしてはいけない。「自分が子どもの立場だったら、この写真や動画を他人に見られたいと思うか」「子どもが大きくなった時、この写真や動画を見てどう感じるか」という2つの問いを常に持つことが大切だ。

静かに広がる「デジタル誘拐」と、犯罪に巻き込まれる恐怖

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また、数年前から問題になっているのが、ネットにアップしたわが子の写真が、知らないあいだに、他人に「うちの子」の写真としてSNSなどに再投稿されてしまう「デジタル誘拐(digital kidnapping)」だ。かわいい子どもの写真が「いいね!」を集めやすいことから、軽い気持ちで行われているという分析もあるが、される方の立場としてはたまったものではない。見知らぬ人が「自分の親だ」と名乗っているのを子どもが見てしまえば、ショックを受けたり、混乱することもあるだろう。

SNSにアップした写真の背景に映った風景などから、写真を撮 影した場所を特定できることもある。さらにコメントで子どもの名前まで書いていたとしたら、親の名前や職業、連絡先、子どもの名前、大体の住所がセットで明らかになってしまう。それがもとで、子どもが本当の誘拐に巻き込まれてしまう危険性もあるのだ。

投稿する前に、立ち止まってみること

分別ある大人であれば、SNSに個人情報をアップすることの危険性はよく知っている。家族旅行先からリアルタイムに現況を知らせる投稿をして、空き巣犯に自宅に誰もいないことを知らせてはならないということはいまや常識だし、自撮りの自画像写真と居場所を合わせてアップしてしまえば、ストーカーに貴重な情報を与えてしまうということにも、多くの人が注意を払っている。だが、自分の子どもの写真や言動については、不用意にアップロードして、世界に向けて公開してしまっているケースは数知れない。

ソーシャル・メディアを介して、離れて暮らす友達や親戚の家族の、小さなメンバーの成長ぶりを知ることができるのは、デジタル時代の大きな恩恵ではある。だが、大人が自分の情報をネットに公開する際にいろいろな配慮を行っているように、自分の子どもの情報を公開する際にも、その影響について考える必要があるということだ。

文:幸野百太郎