2017/01/10
視力の格差をなくしたい・・・・・・! 視力検査ガジェットに込められた熱い思い
スマートフォンで手軽に視力検査が可能
EyeQue パーソナルビジョントラッカーは、スマートフォンに装着するガジェット。電源不要のスコープ式光学機器で、スマートフォンの画面に装着し、顕微鏡をのぞき込むように片目で覗き込むことで、個人が自分の視力検査を行うことができる。FDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を得た医療機器だ。
iOSとAndroidに対応したアプリ「myEyeQue」で表示した検査画面上の赤と緑のバーを、画面下の「+」「-」のボタンで操作し、徐々に近づけていって、重なって黄色いバーになる場所を見出し、焦点距離を計測する。焦点距離の逆数がレンズ度数となる。スコープをひねって20度ずつ回転させながら測定を繰り返すことで、乱視度数と軸も計測できる。ピクセル間距離が70ミクロン以上である必要があるため、古いスマートフォンやタブレットには対応していない。
写真提供:EyeQue Corporation
正確な計測にはコツが必要で、慣れるまでに不正確な計測結果に基づき不適切なレンズが注文されてしまうのを防ぐために、計測結果に「スコア」をつける仕組みが導入されている。計測結果は連動したクラウドに蓄積され、その際に、計測者の技能を評価してスコアが付与される。
計測を繰り返すと、その都度データはクラウドに送られ、スコアの合計値が100点を超えると計測結果に対応したレンズ番号を入手できる。この番号を使って、オンラインで眼鏡を注文することも可能だ。
10億人の20億の瞳にメガネを。
2017年1月に開催されるCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)のベスト・オブ・イノベーションに選出されているこのソリューションの、なにが画期的なのか、近視や乱視で視力が低下したと感じたら、メガネ店で手軽に視力検査をしてもらえる日本で暮らす私たちにはあまりピンとこないかもしれない。
だが、世界には適切な視力検査を受ける機会がなかなかなかったり、そもそも視力が悪くてもメガネをかける経済的余裕がない人が大勢いる。EyeQueは、そうした人たちに自分で視力検査を行う手段を提供することを自社のミッションとしており、11月からスタートしたKickstarterでは、得た資金の3%をオランダの非営利組織、TwoBillionEyes に寄付するとしている。途上国の貧困層で、メガネをかける余裕のない10億人の20億(two billion)の瞳にメガネを届けようとしている団体である。
スマートフォンに取り付けて視力を検査するガジェットの先駆者といえば、EyeNetra社(マサチューセッツ州サマービル)も2011年頃から取り組んでいる。同社もインドなどで適切な視力検査を受けられない人々に簡易な検査ツールを提供することを目的に設立され、現在はインドにも拠点を持っている。
EyeNetra社も、当初はEyeQue社と同様、片目向けのスコープを作っていたが、現在の製品であるNETRAはスマートフォンを装着するVR(仮想現実)用のゴーグルのような両目用の形状に進化している。法人向けに企業内で簡易に視力検査を実施できるソリューションも提供している。
いつでも店頭で検査を受けられる環境にあっても、手軽に自分で目の検査をして視力をチェックできるのは便利なものだ。こうしたガジェットで、「視力の格差」がなくなる世界が近づくのであればすばらしい。
文:幸野百太郎