2017/01/06

VR、ARを活用した体験型教育がすごい

教科書では学べない、リアルな学習体験

バーチャルリアリティー(VR/仮想現実)は、疑似体験を通して深い理解や共感を促す。ロサンゼルスを拠点とするバーチャルリアリティースタジオ「CGO Studios」は、スミソニアン博物館のような専門家と協力して「歴史的な瞬間をVRで正確に再現することによって歴史教育を再考する」ことをミッションとした作品を制作している。

現在は、映画プロデューサーのJonah Hirschの支援を受けて、『アンネ(Anne)』という作品を制作中だ。第二次世界大戦中、ナチスのホロコーストから隠れようとした家族を記録した『アンネの日記』で知られるアムステルダムの隠し部屋や日記のシーンをVRで再現している。先端技術でホロコーストの歴史を次世代に伝えることが目的だ。

Anne(写真提供:CGO Studios)

CGI Studiosでは、先に『ファースト(First)』というVR作品を発表している。これは、ライト兄弟の初フライトの歴史を伝えるための作品。また、次回作は『ベートーベン』になるようだ。

First(写真提供:Jonah M. Hirsch)

VRには、ゲームなどエンターテインメントのほか、たとえばフライトシミュレーターやドライブシミュレーターのような訓練の用途もある。高所恐怖症などの克服といった医療の用途もある。VRでの疑似体験は鮮烈な記憶となるはずで、歴史を胸に刻み込むときも、フォークリフトやショベルカーの操縦を学ぶときにも効率が向上するはずだ。

新しい学習ツールとして期待できるAR

ヘルシンキ大学では、VR(仮想現実)ではなくAR(拡張現実)を使った学習についての研究が行われている。科学センターの来訪者である12歳のフィンランドの生徒、146名を対象にした研究だ。

子どもたちは、お手製のGoogle Glassのようなデバイスを片方の目にヘッドギアで装着しており、ARを使って、気体中の分子の運動、重力、音波、航空機の翼の物理などを学ぶ。調査の方法は、科学館訪問前に、モチベーション(学習したいという動機付け)と知識、学校で習った範囲についてテストを行い、科学館訪問後にモチベーションと知識について再度テストを行った。

ARで物理現象を学ぶ子ども(撮影:Timo Suvanto/写真提供:ヘルシンキ大学)

事前のテストでは、科学知識は男子の方が高いが(一般に男子の方が科学に興味がある子どもの割合が高いため)、AR学習後は男女とも同程度に知識が上昇した。ただし、知識の上昇に影響があった要因としては、男子の場合「科学館での学習そのものに対して興味が増した」ことが大きかったのに対し、女子の方は「もっと学習したいという意欲が湧いた」ことが大きかったという違いがあったという。

また、成績が低い生徒の方がAR学習の効果が高いという結果になったが、その理由については考察されておらず、「ARを学習に取り入れることで、学校の勉強で苦労している子どもたちにやる気を喚起することができ、その結果効果的な学習方法を提供できる可能性がある」と結論付けられている。Pokémon GO の成功により、老若男女がARを身近に感じたはずで、学校の授業を補うツールとしての利用も広がってくるのかもしれない。

文:幸野百太郎