2016/12/09

電車にタクシー、自転車まで? 最適な組み合わせが選べるシェアリングエコノミー・サービス『Whim』

公共交通機関と民間交通手段の組み合わせが可能

マイカーを空き時間に活用できるシェアリングエコノミーと公共交通を組み合わせた、新しいスタイルのモビリティサービス「Whim(ウィム)」が、ヘルシンキでいよいよスタートする。

フィンランドの首都ヘルシンキは、公共交通機関が比較的整備された都市だが、それでも通勤や通学にマイカーを利用する人は多く、交通渋滞や環境破壊につながっていた。マイカーを利用する人の多くがその理由として挙げていたのが、「乗り継ぎや精算の面倒さ」に加えて「最寄りの公共交通に行くまでのアクセスが悪い」ということだった。そこで公共交通機関とマイカーの相乗り、タクシー、レンタカーなどを組み合わせ、その時に最適な移動手段が利用できる、究極のシェアリングエコノミーともいえるサービス「Whim」を実現させたというわけだ。

画像提供:MaaS Global Ltd, Whim

写真提供:MaaS Global Ltd, Whim

2016年6月から実験的な導入が始まった本サービスは、専用アプリ「Whim」を使って利用者にとって最適な移動手段を探せるまではよくある経路検索アプリと同じだが、公共交通とマイカーを利用したシェアライドサービスや、タクシー、レンタカーも組み合わせられるのが大きな特徴になっている。使い方は簡単で、出発地から目的地までを検索すると最適な移動手段が表示され、いずれかを選んだあとはアプリを見せるだけ で移動できる。オプションとして自転車やバイクも含まれていて、たとえば雪が降らない夏のあいだだけはそうした移動手段を使って移動コストを抑えるといったこともできる。

写真提供:MaaS Global Ltd, Whim

利用料金は、ヘルシンキの地下鉄やバスを運営するHSL(Helsinki Region Transport)のシーズンチケット(定期券のようなもの)と、シェアライドやタクシー、レンタカーを利用できるポイントを月ごとに購入するという設定になっていて、ポイントに応じて3段階の料金が用意されている。それとは別に、割高になるが、旅行者や短期利用者のためにその都度支払う方法もあり、通常の移動でも利用できる。現在、間もなく開始する正式サービスの申し込みを受け付け中で、標準サービスが割引価格で利用できるキャンペーンも実施されている。

普及の秘密は柔軟な運用

アプリの開発を手がけているMaaS Globalによると、公共交通はあるものの、乗り継ぎがネックだったヘルシンキはWhimの運用テストに最適で、約半年でサービスの展開は十分可能だという結果が出されたようだ。今後は、アプリの利用データをもとにバスの運用経路を見直したり、列車や長距離バスでも利用できるようにするなど活用範囲を広げていくとしており、さらにヘルシンキと同様の問題に悩むカナダやイギリス、アメリカの都市部での運用も進めていくようだ。

画像提供:MaaS Global Ltd, Whim

マイカーを移動手段として活用するシェアリングエコノミーは、UberやLyftの成功で注目を集めたが、地元のタクシー会社や公共交通機関からの反対や、ドライバーの質と収入をどう確保するかが問題視され、一部の地域で参入が難しくなっている。それに対しWhimは、最初から公共交通を基準にしている点や、タクシーやレンタカーも柔軟に組み合わせられるという点で比較的導入障壁が低く、今後の成功によっては日本でも導入されるようになるかもしれない。

文:野々下裕子