2016/12/07
【世界のドローン47】垂直離着から水平飛行へ華麗にフライトするテイルシッター型探知ドローン『Quantix』
垂直離着陸・長距離の水平飛行が可能
機体を上に向けて離陸するテイルシッター型のVTOL(垂直離着陸機)は、第二次大戦末期にドイツで構想され、さまざまな試作品も作られた。垂直に離陸するので長い滑走路が必要なくなり、運用の幅が広がるというメリットがある。しかしながら、垂直に離陸してから水平飛行への姿勢転換が難しく、また、離着陸時に風の影響を大きく受けることや、パイロットの視界が不安定になるといった理由から、実用化が遅れていた。
だが、無人のドローンに採用するには最適で、カリフォルニアで40年近くドローンの開発を行ってきたリーダー企業のAeroVironment社は、テイルシッター型のドローン「Quantix」を2017年春に発売すると発表している。
Quantixは、機体を垂直にして離陸する安定した推力で120m以上の高さに飛び、上空では姿勢を水平方向へとスムーズに転換できる独特のハイブリッド設計で、45分間に400エーカー(東京ドーム約35個分)の広さを飛び続ける機能を備えている。難しいとされている離着陸時の操作はすべて自動で、コントローラー代わりにAndroidタブレットからアプリのボタンをタップするだけで、誰でも簡単にできる。
主な用途は地上データの作成で、高感度な18メガピクセルカメラをデュアルで内蔵しており、同じようなタイプのドローンで撮影した場合の2倍の画像をキャプチャできる。120m以上の高さからでも、1ピクセルあたり1インチの高解像度のカラーRGB撮影が可能で、1ピクセルあたり2インチのマルチスペクトル画像を同時に収集し、マルチスペクトルセンサーが適切に働くよう光を補正できるソーラーセンサーも組み込まれている。
撮影したいところを指でなぞるだけ
写真提供:Courtesy AeroVironment, Inc.
コントロールはタブレットを指で操作するのと同じぐらい簡単で、撮影したい範囲を指でなぞるだけでいい。飛行システムはAeroVironment社が開発したAV DSS(AeroVironment's Decision Support System)というクラウドベースのデータ分析プラットフォームを活用し、常に正確な飛行ができるようアップグレードされ、正確さにおける信用性はかなり高いとされている。
同じく、地図作成やデータ解析システムも精度が高く、例えば上空から農地の状態を分析して水不足の場所や温度が上がり過ぎている場所を発見したり、線路や道路などの状態を映像で調査したり、さまざまな業務で活用する場合、飛行速度が速くデータ収集量も多いので、短時間で作業を終えられるという。また、収集データを分析して、さらに効率良くデータ収集ができるようになり、データの安全性も確保されている。
同社はもともと軍用ドローンの開発で知られ、ロータータイプも含めてさまざまなドローンを開発している。Quantixのような商用市場に特化したドローンの開発を進めるのはこれからで、CEOのWahid Nawabi氏は「市場のニーズに合わせて、使いやすく信頼性の高い業界最高レベルのドローンを開発していく」とコメントしており、今までにない高機能の商用ドローンがこれからもお目見えしそうだ。
- スペック
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Quantix
サイズ:翼幅1m
重量:2.3kg
飛行速度:秒速25m
飛行時間:45分
操作距離:約120m
文:野々下裕子