2016/11/30

ついにAIが「人の気分を読む」時代に! 職場もストレスフリーになる?

人の気分を読み解くのはなかなか難しい。これを読み違えてしまい、会社で、仕事先で、ご家庭で、「いらぬトラブルを拾ってしまった・・・・・・」なんていう経験がある人もいるだろう。

そんな人に朗報。最近では、本人さえも自覚していない気分や感情を電波で推測するという、まるでテレパシーのような技術の研究が進められているようだ。

解析精度は87%

「EQ-Radio」と名付けられたその技術は、無線やテレビにも使われているRF信号という高周波を人に向けて発信し、反射した電波を解析。その人が現在どのような気分にあるのかを解析しようという、新しい技術だ。

カラダに影響はなく、音もしないうえに、表情を読み取るカメラなどの設置も必要ないので、イスに座ったり、ベッドで眠ったり、普通の生活シーンのなかで使うことができ、より自然な状態で人の感情を解析することができる。

プロトタイプデバイス(写真提供:Mingmin Zhao / MIT)

仕組みは、無線を発信するデバイスからカラダに向けてRF信号を発信し、その反射からECGモニター(心電図)と同様のレベルで心拍数や呼吸数を分析するのだが、その際にマシンラーニングを用いた独自のアルゴリズムによって気分を分析、分類し、それらのデータを基に解析精度を高めていくという。インターネットのWi-Fi端末同様、デバイスは小さく、どこにでも配置でき、複数の端末を組み合わせて解析することもできる。

ネットワークと連携してIoT的な使い方ができるので、気分に合わせて部屋の温度や明るさを調節したり、番組や音楽を選んだりと、いろいろな活用方法が考えられる。

研究開発を進めているMIT(マサチューセッツ工科大学)のスタッフによると、プロトタイプの精度は現時点で87%程度だが、家電のコントロールに使うには十分なレベルだという。まずはスマートホームの一機能として採用することが考えられていて、ボストンの15の家に設置する実証実験も行われている。

心拍数と呼吸数のパターンを機械学習で分類(図版提供:Mingmin Zhao / MIT)
気分の分類と精度。学習時と同じ人の気分は92.5%、異なる人の気分でも72.3%の精度で推定可能。(図版提供:Mingmin Zhao / MIT)

メンタルヘルスケアにも

今後はさらに精度を高めて、ストレスやメンタル分析まで可能になるレベルを目指している。また、現在は実験用のデバイスを使用しているが、小型化して家電や住宅設備に組み込むことも可能で、解析するソフトウエアも、将来的にはAPI(アプリケーションプログラムインターフェイス)として誰でも手軽に使えるようにしたいと発表している。

厚生労働省は、2015年末から職場でのメンタルヘルス対策としてストレスチェックを(従業員が50人以上の職場に)義務化しているが、仕事をしながらチェックができるようになれば、的確な判断にもつながる。EQ-Radioの解析アルゴリズムの信頼性が高まれば、オフィス以外にも運転中など、さまざまな場面でデフォルト機能として普及するようになるかもしれない。

文:野々下裕子