2016/09/02
まるでネットの中に飛び込んだみたい! 全身でVR体感できるスーツが登場
VRはまもなくバーチャルではなく限りなくリアリティに近づくかもしれない。
深海で巨大なクジラと一緒に泳いだり、ロボットを操縦して宇宙空間でバトルを繰り広げるなど、視覚だけでなく実際に身体を動かして楽しむ、VRアクティビティと呼ばれるアトラクションが登場し、人気を集めている。さらにVR空間を現実のように体験できるVRスーツの開発が進められ、実用化が近づいている。
Synesthesia Suit
そのひとつ、昨年12月にサンフランシスコで開催されたプレイステーションのイベントで発表された「Synesthesia Suit (シナスタジア・スーツ)」は、10月13日に発売が決まった「PSVR」向けの音楽シューティングゲーム "Rez infinite"を全身で体験できるボディスーツとして開発され、大きな話題を集めている。
スーツには26個の振動素子が埋め込まれ、ゲーム内で流れる音楽に合わせて音と振動が身体全体を刺激する仕組みになっている。さらにスーツ全体に取り付けられたLEDが振動とシンクロして発光し、プレイヤーだけでなく、見ている人たちとも一緒にゲームの世界観を楽しむことができるようになっており、実際にスーツを体験した人たちの多くは「これまでまったくなかった体験」だと絶賛している。
Synesthesia Suitを開発したのは"Rez infinite"の製作者であり、KMD(慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科)の特任教授を務めるゲームクリエイターの水口哲也氏をはじめとする大学院スタッフたちで、Perfumeなどのメディアアートで知られるライゾマティクスも製作に関わっている。6月に開催されたVRクリエイティブアワードでも最優秀賞を受賞しているが、現時点では正式に発売されるかどうかといった情報は発表されていない。
VRスーツのアイデアそのものは以前からあり、海外でもスタートアップによる開発が進められている。ワシントン州立大学の学生が起業したAxonVRでは、VRを動かすだけでなく、感覚や温度も再現できる高度な機能を持つVRスーツ「Axon Suit」と合わせて、歩いたり、跳んだり、全身の動きをVRと連動させることができるシミュレーターマシンを開発中だ。
どちらも一般に販売されるにはまだ少し時間がかかりそうだが、VR市場の注目に伴い関連技術は急速に進化しており、さらに高機能のスーツが登場する可能性もある。VRはエンターテインメントだけでなく、スポーツトレーニングや医療リハビリ、遠隔手術といった分野へもビジネスの広がりを見せていることから、バーチャル空間での体験をよりリアルに伝えられるVRスーツのニーズは確実に高まりそうだ。
文:野々下裕子