2016/08/24

日本ではまだチャンスあり? Uberに代表される、勝ち組オンデマンド企業とは

困ったとき、欲しいときに、欲しいだけのものをすぐに手に入れることができる――。3億2,000万人が暮らすアメリカ合衆国の生活を、丸ごと便利なものに変えようとしているのが、オンデマンドエコノミーと呼ばれる"現象"だ。「オンデマンド(On Demand)」とは、使う側のユーザビリティーを第一にサービスを提供する仕組みを指す。たとえば、テレビ欄どおりの放映時間ではなく、観たい時に観たい映像コンテンツを観ることができてしまう、ビデオオンデマンドなんかもその代表だ。

すぐに友達と連絡をやり取りができるメールや、近況を知ることができるSNSは、私たちの生活をそれなしでは成り立たないものにまるで変えてしまった。しかし、オンデマンドが普及すれば、スマホは今以上に必要不可欠なものとなるだろう。アプリのボタンを、数タップするだけで、タクシーを呼び、夕飯の買い出しを済ませて、おまけに犬の散歩まで完了させることができてしまうのだ。

そんなオンデマンドエコノミーの先駆者といえるのが、「Uber(ウーバー)」だ。タクシーの代わりにクルマを所有している個人がやってきて、目的地まで運んでくれるというもの。「すぐに安価な移動手段が買える」ことで、もはや既存のタクシーを使う人は激減。2015年には、タクシー会社が次々と破産していくなか、Uberはおよそ1,500億円もの売り上げに。既にオンデマンドエコノミーによる、業界のバトンチェンジは完了されつつあるのだ。

Uberの成功は、起業家たちのベンチャー精神を大いに刺激し、それこそ雨後の筍のごとく、さまざまな業種でのオンデマンドエコノミー化が進んでいる。彼らは「Uber for X(◯◯のUber)」と称され、たとえば「引っ越しのUber」、「受付スタッフのUber」などなど、とにかくなんでも「オンデマンドにすれば成功すんじゃね?」的な勢いで増え続けている。そして実際のところ、多くの企業が成功を収めている。

では実際に、アメリカでオンデマンドを取り入れて成功しているサービスを幾つか取り上げてみよう。

生鮮食品のお使いを頼めるオンデマンド「Instacart」

まず、Uberに続く成長速度で伸びているのは、「Instacart(インスタカート)」だ。Instacartでは、セーフウェイやトレーダージョーズのアメリカ有名スーパーから、数時間以内でユーザーに生鮮食品を届ける「お使い」を提供している。アプリを開くと、バナナやアボカド、キャベツなど見慣れた食材が並んで、これをタップしてショッピングカートを入れるだけでお届けしてくれる。まさに、「未来の買い物」とはこのことだ。

Instacart

猫の手も借りたい忙しさに助っ人を呼べる「Task Rabbit」

「TaskRabbit(タスクラビット)」も便利。猫の手も借りたいような、忙しいことは重なるものだ。子供の世話をしなきゃいけないのに、急な仕事が入ってしまったり、イベント開催前に相次ぐスタッフのドタキャンなんてことも。そんな追い詰められた瞬間に、モバイルアプリの数タップで、猫ではなく"ラビット"を召喚することができるのがサービスの特徴だ。

Task Rabbit

「犬の散歩」をスマホで注文することができる「Wag」

「Wag(ウェグ)」は、飼い犬の散歩に出かけようと思ったのに、急に別の用事が入ってしまったパターンに、ドッグウォーカーをモバイルアプリで紹介してくれるニッチなサービスだ。飼ってる人なら分かるはず、ちょっと散歩を怠っただけで犬はストレスがたまってしまう。Wagでは、すぐに対応できる「犬の散歩」を買うことができる。散歩の間は、ドッグウォーカーがどこを歩いているかをアプリで確認することもできるので安心。

Wag

登録者だけの救急車を呼ぶことができる「True Care 24」

オンデマンドなサービスが解決する領域には、命を助けられるかどうかの緊急性が求められるところまで手が伸ばされつつある。「TrueCare24(トゥルーケアトゥエンティフォー)」は、サービスに月額で課金をしていれば、モバイル上ですぐに医師にかけつけてもらうことができるオンデマンドを実現した。

「2年前にサンフランシスコへやってきた時に、娘がよく体調を崩していました。病院へ行ってみると、そこには長蛇の列。診察をしてもらうまでには、何時間もかかってしまった。早く診てもらいたいのに、本当に嫌な時間を過ごしたよ。そこで、考えたのがTrueCare24の仕組みだったんだ」(TrueCare24を創業したLeo氏とのインタビューより)

「TrueCare24」

ペットのための救急車サービスも登場「Vet Pronto」

すぐに診てもらう仕組みを作るという意味では、オンデマンドの仕組みは便利性よりも必要性の強いものへと変わることも考えられる。似たようなサービスに、飼っている犬や猫の体調が悪くなってしまった場合に呼ぶことができる「Vet Pronto(ヴェットプロント)」も話題になっている。動物病院まで行くよりも早く、ペットドクターがその場所まで駆けつけてくれるというものだ。

さて、日本のオンデマンドサービスは?

それでは、日本でもオンデマンドエコノミーはやってくるのか? CtoC(個人から個人に対してサービスを提供する仕組み)サービスにおける法規制はまだ強いものの、人口が密集している東京を中心に、「すぐになんでも手に入る」モノやサービスへの必要性は受け入れられる可能性は大きい。

例えば、2013年に登場した「ANYTIMES」がある。1分の操作で、簡単に用事をお任せすることができる。ベランダ掃除から、カフェでの英語レッスンまで取り扱われている内容はさまざま。最大の特徴は、チャット気分で依頼のやり取りができるところ。この工夫から、早く簡単に目的を達成することができるようになっているのだ。

88年以上の歴史をもつ日本交通が出したのが"タクシー"をスマホからすぐに呼ぶことができる「全国タクシー」。今までは、電話番号を調べてつながらないこともあり、時には手を上げて必死に止めなければいけなかったタクシーが、スマホですぐに呼べるのだ。

街を歩いていて、誰かが突然、倒れたら「119番」。苦しんでいる人をすぐに助ける救急車が、シンプルな番号入力でやってきてくれる。オンデマンドな社会は、今に始まったわけではなく、実は古くから緊急性が高い時に限って、必要とされてきたことだ。このオンデマンドビジネス、アメリカに比べれば、日本はまだまだ普及しているとはいえないだろう。もしかしたら、まだ誰も気付いていない「お宝」なサービスがあるのかもしれない。

文:山田俊輔(FREE RIDER)