2016/06/09
【オフィス探訪】アメリカ屈指のクチコミサイト『Yelp』のオフィスはオシャレだった
アメリカ屈指のクチコミサイト「Yelp」とは?
Yelpはアメリカで「ローカルビジネス」を専門としている、さまざまなお店のクチコミ情報サイトだ。Yelpが取り扱っているローカルビジネスは、飲食店、美容院、歯医者や語学学校までジャンルを問わず、住所を持っているビジネスであればなんでもOK。アメリカでは定番となっており、知り合いとの待ち合わせ場所の指定には、かなりの確率でYelpに掲載された店舗のリンクが送られてくる。
世界で約1億4,000万人ものユーザー数を誇り、お店のレビューも盛んに行われている。Yelpに掲載されているレビューは、「良かった」「最悪だった」といった一般的な評価に限らない。「カプチーノとレモンケーキを一緒に食べると美味しい」といった、そのお店ならではのワンポイントアドバイスやオススメ情報まで知ることができる。
オフィスを訪れて直接話を聞けば、アメリカで大成功を収めたその秘密もわかるかもしれない。ベンチャー企業であり、ローカル企業と密着して展開しているYelpですからね。きっとカフェみたいにジャズが流れているようなシャレオツなオフィスで、もしかしたら掲載している有名レストランのオーナーが遊びに来てたりして、筆者もお知り合いになれるかも!
......というわけで私、サンフランシスコ在住の筆者が、妄想と邪念を膨らませながらYelp本社に突撃してきました。
おお〜。日本ではなかなかお目にかかれないような、重厚な外観
いざ、オフィスに!
Yelpは元々、オンライン決済サービス「Paypal(ペイパル)」で働いていた、ジェレミーストッぺルマンとデビッド・ガルブレイスによるMRLベンチャーズが生み出したプロジェクトの一環として始まった。当初はオフィスもない状態で、アパートメントの一室が職場だった。2012年にYelpが入居した140 New Montgomeryビルが持つのは、長い電話の歴史だ。カリフォルニア全土の通信インフラを整えるために、Pacfic Bellが90年ほど前に、ここに拠点を構えた。その歴史のなかでは、なんとイギリスの政治家やウィンストン・チャーチルも訪れたこともあるそう!
エントランスに入ってまず飛び込んできたのは、おしゃれな店舗のようなスペースと、GENERAL STOREの文字。直訳すると、「雑貨屋」。Yelpが提供しているローカルビジネスの取り揃えの豊富さを意味しているのだという。サイトを開けば、世界中のレストランから本屋まで教えてくれるYelpは、まさに巨大な「雑貨屋」といえるだろう。
Yelpスタッフが打ち合わせをするのは、社内に設置されたカフェだ。このカフェには、サンフランシスコで今流行りのRitual Coffee Roastersが届けられていた。これは、サードウェーブと数えられているコーヒーのひとつで、バリスタが1杯1杯を丁寧に淹れることで知られている。イケてる会社では、スタッフがオフィスでいかに快適に過ごせるかに気を遣っている。おいしいアイデアはおいしいコーヒーから?
壁に掲げられた「CAN'T STOP WON'T STOP」、「THANKS FOR THE FUN」。前向きな言葉ばかりが記されているこれらのメッセージは、Yelpコミュニティマネージャーたちによるものだ。彼らはYelpの「盛り上げ担当」となり、世界各都市に1人ずつ配属され、その地域のレビューを増やしたり、イベントを開催する。また年に1度、会合が行なわれ、こうした決意表明がされるんだとか。
オフィスのいたるところにちょっとしたミーティングができるような場所があって、誰かしらが話し合っている。椅子がイームズのシェルチェアで統一されていたり、Yelpのオリジナルグッズがセンスよくディプレイされていたりと、とにかく居心地がいい。
新規マーケットリーダーに、いざインタビュー!
Yelpの新規マーケットリーダーを担当するMiriam Warrenさん。彼女は2007年にワシントンでコミュニティマネージャーを務め、好業績を残す。のちにヨーロッパへの展開を行うグローバルチームに抜擢され、これに成功。現在は日本はもちろん、アジアを含めた世界各地のマーケットインを担っている。オフィスの見学をひと段落終え、さっそく質問タイムに。
――Yelpは2004年から始まって、ローカルビジネスサイトとしてあっという間に不動の地位を築きましたね! 成功し続けている要因はなんだと思いますか?
「2点あります。ひとつは、レビューと、その書き込みの質を高めることに注力しているところです。Facebookとの連携を推奨し、ユーザーは実名・顔出しをしたうえで評価を行ないます。本名を出してデタラメなことは書けませんよね。こうしてレビューの信頼性を高めているんです。レビュー投稿数が多いような、サービスへの貢献度が高い「Yelpエリート」たちを選び、貸し切りクルージングパーティへ招待するようなイベントも用意しているんですよ。
また、機能やデザインの改善を続けてきたことも成功につながりました。改善を行う際の基準は、Yelpが始まった場所で、もっとも近い存在でもある『サンフランシスコで暮らす人たち』にとって使いやすいかどうかということ。確かにおかげさまでYelpは世界中にのユーザーに愛されていますが、あくまでサンフランシスコのユーザーを想定して改善を続けました。ユーザーがどのようにして行きたいお店を見つけて、そこへ辿り着くかを、デザインチームが何度も繰り返し考えてきたのです」
――実際にユーザーたちはYelpを活用して、どのようにお店を見つけているのでしょうか?
「Yelpは、『ご飯を食べたい』、『コーヒーが飲みたい』、もしくは『髪を切りたい』といった、そのときのユーザーのストレートな欲求で検索ができます。つまり、ユーザーはカテゴリから誘導されてお店を絞り込むんです。そのうえで、そこへ行くべきかどうかの判断をレビューで判断します。Yelpユーザーの90%が、このレビューを活用しています」
――Yelpはユーザー同士も仲がいいという印象があります。
「はい。Yelpの仕事は、ユーザーとローカルビジネスを結びつけることです。その施策のひとつとして、イベントには注力しています。このイベントもただ集まるだけではなく、その現地ならではの、一緒に文化体験できるようなものを意識しています。カフェでのラテアート、ヨガ体験などですね。
ここで出会う人たちは、近くに住んでいながらも、実は知り合えなかった関係であることが多いんです。出会う前から共通点を持っている同士、あるいはレビューを共有している同士、すぐに仲良くなりやすいんです」
――オフィスのスタッフ同士も仲がいいんですか? 見た感じだと、まるで家にいるようにリラックスできるスペースで真剣に話し合っているので驚きました。
「もちろん! たとえば私はコミュニティマネージャーと連携を取る場合が多いんですが、彼の仕事内容は、新しく見つけたカフェやレストランをどのようにユーザーに知ってもらい、盛り上げていくかです。彼からいつも現場からの発見とアイデアを聞かされて、ついついおしゃべりが止まらなくなってしまうんですよ(笑)」
――では、最後に日本でのYelpの状況はどうですか?
「日本に進出したのは2014年4月で、東京、大阪、京都、福岡にコミュニティマネージャーがいます。実は、とても速いスピードでユーザー数が伸びています。日本には『レストランを探す』という使い方であれば、既にいくつもの競合サイトが普及していますよね。私たちはあくまでSNSとして、ユーザーとのインタラクティブな関係を築くことにフォーカスしています。
イベントの開催は日本でも大切なファクターです。ぜひ参加してみてください。小規模なもので5人、大きいものだと100人を超えることもあります。この前は図書館で読書会を行なったり、六本木ヒルズの最上階を貸し切るセレブリティなパーティーも催したんですよ! これからも日本での市場の拡大には力を入れていく予定です」
Yelpの雰囲気をひと言で表すなら、RELAX! なにしろ「食事を食べたい」とか、「遊びに出かけたい」「英語を習いたい」、そんな私たちの素直な欲求に向き合っている会社ですからね。お堅い雰囲気だったら"おいしいアイデア"も浮かんでこないっていうもんです。
その昔、人々が通信でつながるために建てられた電話ビルは、年を経たいまでも、新しいテクノロジーの力で、ユーザーと、ユーザーが今したいことをつないでいく場所として、役割を担い続けているのかもしれませんね。
文:山田俊輔(FREE RIDER)