2016/03/24

【世界のドローン27】遭難者を探せ! 救助活動に特化した捜索ドローン登場

救助活動でドローンを活用しようという動きがあるが、その場合、人が入りにくい現場の状況を、上空からカメラを使って把握するといった使われ方が主である。それよりも、さらにもう一歩ドローンを現場で役立たせようと、カナダのスタートアップRiderless社が、森の中や災害現場で遭難者を探し出すための捜索用ドローン「Sentry」開発した。

提供:Riderless Technologies

「Sentry」とは、探索を行う「歩哨(ほしょう)」(軍隊で、警戒・監視などを行う兵士)を意味していて、その名のとおり、人を探すためのさまざまな機能が盛り込まれている。マグボトルサイズの本体に4つのローターが付いたコンパクトなドローンは、機動性にも優れていて、搭載された各種センサーで周囲を自動で感知。森の中でも木にぶつからず、自在に飛び回ることができる。

使用しないときは折り畳み傘のようにすぼめることができ、そのままバックパックのサイドポケットにも収納できるほどコンパクトになる。重さもわずか1kgと軽く、深い森や雪の中で持ち歩いても負担にならない。使用するときは数秒でセッティングでき、バッテリー交換なども簡単にできるようにしている。

さらに、本体全体を防水カバーで覆うことができ、本体内に水が入らないようにすることで、水深1mまで30分間探索できるという。一方で、ローター部分はゴムでガードするなど複雑な部品をなるべく使っていないため、故障しても修理しやすい。大勢で捜索できないような深い森や狭い場所ほど、「Sentry」が優秀なサポーター役になってくれるというわけだ。

提供:Riderless Technologies

本体の底の部分に搭載されたカメラは、320x420のHDカメラで4倍ズームが使えるほか、照明用のLEDライトも付いている。人の体温を感知できる赤外線カメラを用途に合わせて切り替えながら使い、通常のカメラでは見えにくいところにいる人を探したり、夜間の捜索にも対応できる。

提供:Riderless Technologies

コントロールシステムは、スマートフォンかラジコンのコントローラーのいずれか使いやすいもので扱えるようになっていて、探索中の映像はスマートフォンサイズのポケットポータブルビデオ受信機で見られる。動画をSDカードに記録したり、静止画をキャプチャーして現場の確認をするなど、実に多彩な機能を備えている。

提供:Riderless Technologies

開発者のひとりでエンジニアのStefan Weissenberg氏は、15歳の頃から大学で航空学について学びはじめ、その頃から、人に役立つ無人飛行機の開発に取り組んできた。休日にはスキーパトロールのボランティアにも参加しており、そうした経験から森林探索に使えるドローンの必要性を感じたという。

開発を手がけているRiderless社は、フィリピン政府の緊急災害対応通信システムの構築も手がけており、システムとドローンを組み合わせて、より高度な探索活動ができるよう開発を進めている。災害の多い地域をはじめ、人材の確保が難しい国などで、救助以外の消防や警察などの組織でも幅広く活用できることを目指し、オンラインでの発売も行っている。そして、世界中どこでも購入しやすいよう、ビットコインのみで購入できるようにしているという。

そうしたところも含めて、今までにないタイプの探索用ドローンだといえそうだ。

スペック
Sentry
サイズ:10 × 10 × 45 cm
重量:1kg(バッテリー含む)
飛行時間:15分
搭載カメラ:HD ビデオカメラと赤外線カメラのデュアルモード
操作距離:5,800m
価格:4,995ドル(赤外線カメラ無しは2,495ドル)

文:野々下裕子