2015/12/03
“子どもの声”が事故を減らす? 人の本能に訴えかけるカーナビ
運転免許証を持っている人なら、学校の近くや住宅街などの子供が多いエリアでは、特に周囲に注意して安全運転を心掛けているだろう。だが、自分の生活圏内からはずれた場所では、「スクールゾーン」などの標識をうっかり見落としてしまい、ヒヤリとさせられた経験がある人もいるかもしれない。
そんな「ヒヤリ・ハット(ヒヤリとしたり、ハッとしたりすること)」を減らしてくれるかもしれないナビゲーションアプリが、北欧で開発されている。ストックホルムの保険会社If P&C Insurance社が開発したSlow Down GPS(スローダウン GPS)は、GPSの位置情報と道路地図を活用したナビゲーション機能のあるスマートフォン用アプリだ。
ナビゲーション音声は実際の子供の声を録音している(画像提供:If P&C Insurance社)
欧米のカーナビは、日本のものに比べるとシンプルなものが多く、なかには進行方向を変える必要があるたびに、曲がる方向を「次は右折」「次は左折」と、画面上の矢印と音声で指示してくれるだけのものもある。Slow Down GPSも、普段は音声で曲がる方向などを教えてくれる、何の変哲もないナビゲーション用アプリだが、スクールゾーンなど子供の多いエリアに入ると、読み上げ音声が大人の声から子供の声に変わるというのだ。
ナビゲーション画面を実際に使用しているところ(画像提供:If P&C Insurance社)
人には幼い者を守ろうという本能があるため、小さな子供の声を聞くと、瞬時に注意力が増す。急に声が変わることで「子どもを守るスイッチ」が入り、安全運転を促す効果があるのだという。
Slow Down GPSは今のところ、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドの3カ国でしか使えない。無料で利用でき、ユーザーに自分の家の近くの危険エリアと歩行者用交差道路の情報提供を呼びかけている。ウェブサイトで公開されている地図上では、アプリに反映された場所は青、危険だがまだ対応できていないエリアは赤でマークされている。If社の担当者によれば、「赤のマークが多いのはアプリの対応に時間がかかってしまうから」だそうだが、走行前にこの地図を確認するだけでも心の準備ができるだろう。日本でも同様のサービスを提供する会社が現れてほしいものだ。
文:信國謙司