2015/12/02
【世界のドローン22】航空機とヘリの良いとこ取りした第3のドローンを開発する『Open Source Drone』に迫る
画像提供:ダッソー・システムズ
ここ数年で、ドローンの民間活用シーンは大きく拡大している。航空撮影をはじめ、農地のモニタリング、大気汚染観測、災害救助支援や宅配など、さまざまな分野にニーズが広がり、それぞれの用途に合わせた新しいドローンの開発が求められている。
これまでのドローンは、広範囲を効率良く飛ばすなら航空機タイプ、空中撮影などでホバリングが必要な場合はヘリコプターというように、航空機とヘリコプターがそれぞれ持つ特徴をベースにして作られているものが多かった。だが、それぞれの良さを取り入れた第3のドローンが設計できれば、さらにドローンの需要は広がるのではないか? そう考えた、3Dデジタルデザインやデジタルモックアップ製作のためのソフトウエアを開発するフランスのダッソー・システムズ(Dassault Systèmes)社に勤めている2人が、第3のドローンを開発するためのプロジェクトを立ち上げた。
意外にも、航空機とヘリコプターの両方の資質を組み合わせて、広い範囲で活用できるドローンを開発するという発想はこれまでなかったため、この新しいアイデアにさまざまなスキルを持った技術者がたくさん参加することになった。そうして作られた最初のアイデアは、4つのローターを持ち、垂直に離陸したあとに水平飛行が15分以上可能な3.4mのドローンを作るというものであった。
ドローンの開発は、ダッソー・システムズ社の3DEXPERIENCE Labが開発する3Dモデリングのためのシステム「3Dエクスペリエンス・プラットフォーム」を使って行われた。機体のデザインから機械設計、空力シミュレーションまでを一貫して行うことができ、それらはクラウドで複数のメンバーが参加して操作できるため、チームに参加した全員がリアルタイムで開発状況を把握し、コラボレーションすることができたという。その結果、手で飛ばせるほど軽量で、長時間、水平飛行できる第1のプロトタイプの開発を成功させ、続いて垂直離陸ができる第2のプロトタイプの開発を成功させている。
画像提供:ダッソー・システムズ
その後、プロジェクトは、第3のドローンを開発するというコンセプトを実現するために、もっと多くの開発者やドローン愛好家など幅広いコミュニティーから協力を得られるよう、誰でも参加できるオープンなプロジェクトへと方向転換することを決めた。さらにプロトタイプ製作の過程で蓄積されたデータを誰でも無償でダウンロードして使えるよう、オープンソースとして公開。「3Dエクスペリエンス・プラットフォーム」上で自在に設計でき、そのまま3Dプリンターで出力が可能になるため、手軽に自作ドローンを作れるようにしている。これらは、学生やエンジニア、またドローンビジネスの参入を目指すスタートアップが使うことも可能で、システムの開発元から使い方もサポートが受けられるようになっている。
プロトタイプのラフデッサンから「3Dエクスペリエンス・プラットフォーム」の開発画面に落とし込み、実際に設計するまでの行程(画像提供:ダッソー・システムズ)
第3のドローンはこんなデザインになるかもしれない(画像提供:ダッソー・システムズ)
こうした活動がドローン開発のイノベーションを加速し、民間での利用をますます広げてくれるのではないかと、プロジェクト関係者は期待を高めているようだ。
文:野々下裕子