2015/11/11
最先端の技術VRは、自由意思でどこにでも"移動"ができる
さまざまな分野で応用されているVR(バーチャルリアリティ)技術。CGや音で仮想現実を作り出すその技術は、より精密になり、リアルな世界へと近づいてきた。ソニー・コンピュータエンタテインメントが、2016年販売に向けて、Play Station 4用VRHMD(ヘッドマウントディスプレイ)"Project Morpheus"の製品版を開発するなど、今後、ゲーム業界を筆頭に、一般家庭にもその技術が流れ込んでいくことだろう。
そんななか、プレイヤーを完全な没入体験させることを目指した「CableRobot Simulator」のデモンストレーションが公開された。この装置は、ドイツで人工頭脳学を研究するMax Planck 研究所チームと、Fraunhofer IPAのロボット研究チームが共同で製作している。
こんな世界を待っていた! VRはついにxyzの世界へ
従来のVRでは、周りを見渡せば視界が変わるものの、稼働することはなかった。しかし「CableRobot Simulator」は、行きたい方向に操れば自身もxyz軸すべての方向へと移動できるようになる。
「CableRobot Simulator」は、中央のコックピットをハーネスで固定する仕組み。椅子のついたコックピットは、複数のウィンチがハーネスを引っ張ったり緩めたりすることで、上昇や下降から回転までのあらゆる動きが可能となっている。部屋の大きさによって動きが制限されてしまうものの、これまでにない、かなり自由度の高い動きができる。同チームは、Unreal Engine 4で製作した飛行機や自動車のシミュレーターといった専用コンテンツの制作も行っているようだ。
「CableRobot Simulator」はどんな世界へと導くか?
「CableRobot Simulator」の台頭によって、これまでさまざまな企業がシミュレーターの作成にかけていた時間や費用を、大幅に短縮できるようになるだろう。フライト用のシミュレーターの場合、航空会社がいままで数億円をかけて開発してきていたが、数千万円で実装することができるそうだ。
こうした技術の進歩により、日常シーンにおいても、"リアルなバーチャル"を体験できる装置が増えてきた。既にわれわれ人間の技術は、人の五感を錯覚させるところまで近づいてきている。この技術がさらに進歩すれば、普段体験できない出来事を多くの人が味わうことができ、今の想像を超える新しい体験を獲得できる未来が実現するかもしれない。
文:鈴木利康