2015/08/18
遠回りでも安全に! 明るい夜道をナビゲーションするアプリ
GPSを活用したスマートフォンの地図アプリのおかげで、ポケットサイズの地図や、地図サイトをプリントアウトした紙を持ち歩く機会は激減した。A地点からB地点まで、電車、自動車、徒歩のそれぞれに最適なルートを計算して表示してくれるし、自分の現在位置も分かるから、迷わず目的に到着することができる。
けれども最短距離が必ずしもベストなルートとは限らない。特に夜道ともなれば、安全なルートは街灯が灯る回り道かもしれない。
Bearbone Studios社が開発したアプリ、Rudderは、明るい夜道をナビゲートしてくれる機能を持っている。地方自治体などから街灯の整備状況に関する情報を得ることで、夜道のナビゲーションを行おうというのだ。現在はベータ版で、ボストンやサンフランシスコ、バンクーバー、パリなど北米を中心に12都市の情報を提供している。
写真提供:Bearbone Studios
カーナビのように角々でどちらに曲がるべきか音声で通知したり、ユーザーインタフェースはユニバーサルデザインを指向している。さらに、現在位置を家族に知らせる機能なども追加される予定だ。
住み慣れた街でも、夜道の一人歩きは心配。まして慣れない街で、夜歩いて移動しなければならなくなったら、普通のスマホの地図アプリが案内してくれる近道はもしかすると危険かもしれない。シアトルやワシントンDC、シカゴなど、対象の12都市に出張する場合などは、ベータ版を試してみる価値があるだろう。ちなみにアプリ名のRudder(ラダー)は、船の舵(かじ)とか飛行機の方向舵という意味だ。
このアプリのアイデア、実は日本での発案が先だったかもしれない。2014年に開催された「オープンデータ ユースケースコンテスト」(主催:経済産業省、総務省)で最優秀賞を獲得した明石工業高等専門学校チームの「NGY Night Street Advisor」は、明るい夜道を案内する安心・安全な歩行者ナビゲーションシステムだ。名古屋市と交渉し、10万灯にも及ぶ街灯のデータの提供を受けたという。街灯の間隔が視覚的に表現されるので、間隔が広い、つまりは暗い場所が一目瞭然となる。
自治体が情報を出してくれさえすれば、このアプリはどこの街にでも展開可能なはずだが、受賞理由に交渉力が挙げられるほど、データの提供交渉は相当タフなものになるらしい。そこで、明石高専チームはクラウドソーシングも考案した。「街灯これくしょん」は、ゲーム感覚で使ってもらうことで、プレイヤーが歩いている場所の該当の明るさを利用者から広く収集する仕組みになっている。
文:信國謙司