2015/07/28

3Dプリンターが人形の世界にもダイバーシティをもたらす

写真提供:Makies社

3Dプリンターの普及で、カスタマイズ製品の製造販売の可能性が広がっている。また、ソーシャルメディアの広がりで、消費者の声が企業に届くチャネルが太くなっている。Toy Like Me(私に似たオモチャ)というFacebookのページに「いいね!」を押した約2万人の人々に押されるかたちで、世界的玩具メーカーであるドイツのプレイモービルやイギリスの3Dプリンター加工会社のMakiesが、何らかの要因で外見などがほかの子供たちと違っている子供たちの人形の製作を開始した。

写真提供:Makies社

Makiesが作る人形は、補聴器を付けていたり、顔などの皮膚の一部の色が違ったり、杖をついて歩いている子供の人形だ。値段は概ね120ドル以上とやや高額だが、カスタマイズに応じ、10日ほどで出荷してくれる。また、ドイツの人気玩具シリーズ「プレイモービル」も、障がいを持つ子供を模した人形の販売を開始し、利益をToy Like Meキャンペーンが薦めるチャリティーに寄付すると表明している。

何らかの障がいなどを持つ子供の数は、世界規模では1億5千万人とする記事もあり、決して少数とはいえない。車椅子に乗っている人形や、介助犬を連れた人形を子供たちに届ける活動は、各国の親たちに歓迎されているようだ。

子供が、自分によく似た人形を大切にする経験は、ありのままの自分を愛し、自信を持つきっかけになる。さまざまな人形に日常的に接している子どもたちは、社会にさまざまな人が存在することを当然だと考えるようになるだろう。このように考える子供が成長し、大人になっていくことが、すべての人が生きやすいダイバーシティ社会の実現につながっていくはずだ。

文:信國謙司