2015/03/26

【世界のドローン12】世界中の現地調査で活用される航空写真撮影ドローン『eBee』

ドローンの用途はさまざまな方向へと広がっているが、スイスを拠点とするNPO組織のDrone Adventuresは、民間用ドローンを使った人道支援や捜索救助、文化活動などを行っている。

例えば、2013年10月にフィリピンを襲った巨大台風が、現地にどれだけダメージを与え、復旧にどのような対策が必要かを把握するため、道路が寸断されたエリアにドローンを飛ばして調査を行っている。また、東日本大震災の福島第一原子力発電所事故で立ち入りが制限されていた、飯館村、いわき市久之浜、富岡町でも、2014年4月に活動を行っており、現地を撮影した写真はオンラインで公開されている。また、南部アフリカのナミビアの野生動物保護区を調査のために撮影した映像は、貴重な野生動物の映像アーカイブとしても公開されている。

Drone AdventuresはeBeeで撮影した高精細マップから被災地域の復興状況を確認しているという
© Drone Adventures

高精細カメラを搭載し、あらかじめ登録したエリアを分解能1.5cmの精度で撮影できる

このDrone Adventuresの活動で使われているドローンが、スイスのsenseFly社の航空写真撮影ラジコン飛行機「eBee」である。2Dおよび3D地図向けに、高解像度の航空写真を撮影するために開発された民間用小型無人航空機(UAV)で、上から見るとハチのようにくびれたボディに黒い翼を付けた独特のデザインをしている。全体で1m近い大きさがありながら、重さは690gとかなり軽量で、飛行速度も時速40~90kmと速い。ポイントは飛行高度の低さで、あらかじめ登録したエリアを分解能1.5cmの精度で撮影できる。離陸は紙飛行機のように手で飛ばすが、完全に自律飛行ができ、1度の飛行で約50分飛び続け、約12平方kmをカバーできる。また、翼の部分は取り外し可能で、コンパクトにどこでも運びやすいことから、世界中を調査する用途にはもってこいの機能であるようだ。

senseFly社は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校のロボット工学部門で人工知能の研究を行っていたチームが2009年に設立した会社である。2012年夏に、AR Droneを開発したフランスのParrot社に買収され、eBeeをはじめ、ミニ・ドローンのeXomなどを開発している。eBeeは、ほかにもリアルタイム測定ができるタイプや農業用にデザインされたタイプがある。

民間の調査機関が、現地調査のために手軽に撮影ができるドローンを活用する事例は増えており、今後はeBeeのような専用ドローンの開発も増えてくるかもしれない。

スペック
eBee
サイズ:96cm
重量:690g
材質:EPPフォーム、カーボン構造
飛行速度:時速40~90km
飛行時間:最長50分
通信距離:約3km
搭載カメラ:16メガピクセル
動力:エレクトリックプッシャープロペラ、160 WブラシレスDCモーター
電源:リチウムポリマーバッテリー
参考価格:25,000ドル(日本未発売)

文:野々下 裕子