2017/11/17

『iPhone X』の顔認証はどこまで正確? 変顔、カツラ…さまざまな格好で検証してみた

新しいテクノロジーを使い始めると、後戻りするのは難しい。ほんの数年前まではiPhoneにパスコードを入力するなんてことは当たり前。苦でもなんでもなかったはずだ。しかし、指紋認証に慣れた今となっては、スマホを使うたびに数字を4ケタ打ち込むことですらまどろっこしくなっている。

そう考えると、これからは指1本を1秒間ホームボタンにのせることも面倒になるのだろうか。先日発売されたiPhone Xに搭載された「Face ID」という新機能は、持ち主の顔を識別し、見つめるだけでロック解除や支払いができるという。

ロック解除も支払いも“顔パス”に

Face IDは、iPhone Xの前面に搭載されたTrue Depthカメラで3万以上のドットを顔面に投射し、立体的にマッピングする。これによって個々の顔を識別し、そっくりさんであっても誤認識しない。Appleによると、他人を誤って認証する確率は、100万回に1回あるかどうかだとか。

iPhone Xの顔認証を検証する男性

編集部のOが試し中。

iPhone Xの顔認証の設定方法

「設定」>「Face IDとパスコード」>「Face IDを設定」と進み、頭をぐりぐりと回す。

設定は非常に簡単で、30秒足らずで完了した。これで、iPhone Xを見つめるだけでロックが解除される。ロック解除以外にも、指紋認証と同じくApple Payの認証にも使える。

iPhone Xの顔認証を検証する男性

iPhone Xに顔を向ける。

iPhone Xの顔認証を検証する男性

カギが開いた。

このTrue Depthカメラのすごいところは、持ち主の視線や、50種類以上の筋肉の動きを解析し、表情までを読み取っているところ。目をつぶっていたり、視線を画面に向けていなかったりすると、Face IDは作動しない。本人の寝ているあいだに誰かがiPhone Xをかざしたとしても、ロックは解除されないのだ。

iPhone Xの顔認証を検証する男性

この顔でも開いた。

iPhone Xの顔認証を検証する男性

この顔はダメ。目を細めたり口の形を極端に変えたりすると認識されにくいようだ。

試しに編集部にいた何人かでロックを解除しようと顔を向けてみたが、本人以外がiPhone Xを見つめるとブルブルっと震えて拒否される。カメラは深度(奥行き)を測っているため、写真や動画にも反応しない。他人がFace IDで解錠するのは難しそうだ。

イメチェンしたらどうなるの?

だが、そこまで認証が厳しければ、持ち主本人の顔でもロックが開けなくならないのだろうか。人の顔というのは、指紋と違ってわりところころ変わる。酔っぱらって赤ら顔になったり、痩せたり太ったり、髪が伸びたり薄くなったり。帽子やメガネが日によって変わるかもしれないし、女性だったら化粧で別人のようにもなるだろう。

そこで、現実的に想定しうる見た目の変化を、編集部員のOに施して実験してみた。

iPhone Xの顔認証を検証する男性

この顔でFace IDを登録しても、髪やヒゲは増えたり減ったりする。

iPhone Xの顔認証を検証する男性

髪が伸びてもカギは開いた。

iPhone Xの顔認証を検証する男性

ここまで伸びるとダメ……。

いろいろ試してみたところ、頭の方はカツラや帽子をかぶっても問題なし。輪郭や髪の生え際は、柔軟に認識してくれるようだ。一方で、個人の特徴を読み取るポイントになっているせいか、口元が隠れるヒゲをつけると認証されなかった。これからの季節、マスクやマフラーで口が隠れたままでは、Face IDが使えないようだ。

ただ、これは短時間で設定と検証を行ったためかもしれない。Appleの公式サイトによると「Face IDは先進的な機械学習によって、あなたの外見の変化を認識します」とある。Face IDを使う回数が増えてデータが蓄積されたり、毎日のヒゲの変化を学習したりすれば、上の写真のようなヒゲでも認証できるようになる可能性はある。

サングラス越しの視線もキャッチ

驚いたのは、肉眼では瞳が見えないサングラスをかけても問題なく認証されたこと。目を隠したり、ウィンクしたりすると開錠されなかったが、ちゃんと両目を開いていれば、サングラスをかけたままでもFace IDを使えるのだ。

iPhone Xの顔認証を検証する男性

肉眼では見えない視線を、サングラス越しにキャッチする。

iPhone Xの顔認証を検証する男性

これならどうだ?

iPhone Xの顔認証を検証する男性

……あかんかった。

目が描かれたパーティグッズのメガネはダメだったが、通常のメガネやサングラスなら、フレームのデザインにかかわらず認証された。なぜサングラス越しでも顔や視線を認識できるのかというと、顔に投射したドットを赤外線カメラで読み取っているからだ。

これは、サングラスを外す必要がないだけではなく、暗闇でも効果を発揮する。

iPhone Xの顔認証を検証する男性

電気を消しても認証された。

真っ暗なトイレで試したところ、iPhone Xの液晶の明かりだけで顔を認識した。これなら夜間の屋外や枕元でも問題なくFace IDを使えるだろう。

指が時代遅れになる予感

……と、こうやっていろいろ試しているうちに、iPhone Xに慣れると指に頼る使い方は早晩廃れるように思えてきた。最初は見た瞬間に解錠されることや、使い慣れたホームボタンがないことが気持ち悪かったのだけど、数時間も操作すると、ロック解除のひと手間はなくて当然と思えてくる。

スタンドに立てたiPhone Xに視線を送ってロックを解除し、「Hey Siri!」と音声で操作すれば、両手が空く。こうやってPCで原稿を書きながらメールをチェックしたり、ネットを検索したりもできるのだ。

あとはあれだ、「Hey Siri!」とフランクに呼びかけることの気恥ずかしさを克服すれば、一歩先のスマホライフが拓ける気がする。

iPhone Xの顔認証を検証する女性

ちなみに、O氏が認証に失敗したヒゲは、ほかの編集部員が試してもダメでした。

iPhone Xの顔認証を検証する女性

マスクもダメ……。

まとめ
  • ・Face IDは髪形が変わっても、サングラス越しでも認証される
  • ・浦島太郎のように、一晩でヒゲが伸びると認証されないかもしれない
  • ・顔認証に慣れると、指紋認証のひと手間が面倒くさくなってくる
  • ・指を使わず操作すると、スマホがさらにミライっぽくなる

文:TIME & SPACE編集部