2017/07/12

愛すべき昭和家電を、『マイクロボットプッシュ』で“スマート家電化”してみる実験

IoTが浸透し、身近になった「スマート家電」。テレビやオーディオをはじめ、空調設備やホームセキュリティーまで、あらゆるものがスマートフォンなどで簡単に操作できる時代になった。

ただ、すべての家電をスマート化するには、使い慣れた家電を対応機種に買い換える必要がある。昭和家電のアナログデザインを愛して止まない筆者としては、なんとか昭和家電が持つアジと、最先端科学の便利さをいいとこ取りできないかと、日々頭を悩ませている。

そして世の中にはどうやら筆者と同じような思いをしている人がいるらしい。Naran社が開発した「マイクロボットプッシュ」は、既存の電化製品をスマート化してくれるという超小型指ロボットなのだ。Bluetoothでペアリングした本体をスマホで操作することで、人の代わりに物理ボタンを押してくれるのだ。

機能は「人の代わりにボタンを押す」だけ。しかし、このロボットはアイデア次第でさまざまなところで活躍しそうな予感がする。

ボタンの位置に貼りつけるだけの簡単操作

まず、このマイクロボットプッシュの使い方はこうだ。

使い方はいたってシンプルで、専用アプリ「MicroBot」をダウンロードし、スマホとペアリングした本体を、付属の台で高さを調節して両面テープで貼り付けるだけ。あとはボタンやスイッチを押したいときにスマホ画面上のボタンをタップすれば、本体からニューっと押し棒が出てきて、人の代わりにボタンを押してくれるというわけだ。

左/オフの状態 右/オンの状態

たとえば、オンオフが面倒な電気のスイッチや給湯器の操作パネルをはじめ、天井など手が届かないところに常設されている機械の電源ボタンなど、便利な使い方はたくさんある。別売りのプロタ(ハブデバイス)を使えば、Bluetooth圏外からでも操作することができるので、帰宅前にリビングや玄関の電気つけておくことや、エアコンを入れておくこともできる。

天井などに常設されているプロジェクターなどもスマホから操作が可能

アプリは10台までペアリングすることができるので、本体をいくつか所有して、ここぞという場所に貼り付けスマート化しておくのもいいだろう。作動タイマーも設定できるため、時間を調節して家電を動かせばなお便利だ。

このマイクロボットプッシュを上手く活用して、愛すべき昭和家電たちをスマート化したい! そしてもっと便利に使ってみたい! そんなわけでいろいろと試してみることにした。

フハハハハ! お前もスマート家電にしてやろうか!

さて、昭和家電はどれだけ“スマート”な変貌を遂げたのか? 特に親和性の高かった事例を紹介していこう。

■レンズ付きフィルム(2003年発売モデル)

まず試してみたのはレンズ付きフィルム。90年代前半から00年初頭にかけ、最盛期には世界で1億本も売れたといわれている、大ヒット商品だ。デジタルカメラやスマホが登場するまでは、皆このカメラを持ち歩いて写真を撮っていたものだ。

軽くて持ち運びが便利だからか、シャッターを押すだけで簡単だからなのか、現像した写真の風合いが「むしろKAWAII」ということなのか、現在は若者を中心にその人気が再燃しているこのレンズ付きフィルム。今回はそのシャッター部分にマイクロボットプッシュを貼り付け、スマホさながらのセルフィー撮影に挑戦してみることにした。

ピクニックセットの上にレンズ付きフィルムを置き、シャッター部分にマイクロボットプッシュを装着。あとはスマホのプッシュボタンを押してシャッターを切るだけ。

ボタンをプッシュすると「カシャッ」という懐かしいサウンドでシャッターが押されて撮影完了。

マイクロボットプッシュがしっかりとシャッターを押している。現像したらカメラを持ったオッサンがアップで写っているだけだろうが、どんな写真が撮れているのか現像するまでわからないのがレンズ付きフィルムの醍醐味でもある。仲間との画像共有やSNSのアップがすぐにできない代わりに、カメラ屋さんで現像されるのを待つのは懐かしい感覚だろう。

■スーパーファミコン(1990年発売)

次に試したのはスーパーファミコン、通称“スーファミ”だ。当時の筆者はゲーオタの仲間と朝から晩までスーファミ廃人と化していたわけだが、レースゲームや格闘ゲームでは多くのドラマが生まれた記憶がある。

当時から不便だと思っていたのがこのスーパーファミコンのリセットボタン。「人生はリセットボタンを押せない」とはよく言うが、ゲーム中にリセットボタンを何万回押したものか。問題は、リセットボタンを押すために、スーファミに近づかなくてならなく、それが若干億劫なことだ。これを解決するにはマイクロボットプッシュしかない

初代ファミコン世代の筆者はスーパーファミコンが登場した当時、その映像の綺麗さに子どもながらに興奮したものだが、25年の時を経て液晶モニターに映し出された映像はなんとも言えないレトロ風味。ただ、プレイした小学生の息子には逆に新鮮だったようで、いつになく真剣な面持ち。スーパーファミコンが世代を超えた瞬間だ。

かなり頑張った息子だったが、初めてのスーパーファミコンには苦戦。そこですかさずマイクロボットプッシュを作動。リセットボタンを押すだけの単純な動作ではあるが、ひとりで奮闘する息子に水を差すことなく起動画面に戻してやる。

スーパーファミコンのリセットボタンとマイクロボットプッシュは奇跡のようなジャストサイズ。そのままソフトの抜き差しもできるので、次はどのソフトでプレイするのかを考えていると「どうせならリセットボタンを押せるのがいい」と息子。

息子よ、とりあえず最初のステージくらいはクリアしてみたらどうだ・・・・・・。

最近は大人用にミニサイズのハードが復活しているようだが、当時のものをそのまま使うことで、かつての記憶を蘇らせることもできる。実家の押し入れから引っ張り出したスーパーファミコンだったが、マイクロボットプッシュの使いみちとしても◎だろう。

■ラジカセ(1980年発売)

どうせならもっと古いものを動かしたい・・・・・・。そういう欲望に駆られてしまった筆者は、さらに古い昭和家電を探すことに。

そんな時に見つけたのが渋谷にあるビンテージラジカセを中心に古いオーディオ機器を販売、レンタルしてくれる「ラジカセ・ユニークサウンド ダビーマッドサウンドショップ渋谷」さん。

今度はこのダビーマッドサウンドショップ渋谷さんご協力のもと、古いステレオタイプのラジカセをマイクロボットで動かしてみることにしよう。

今回お借りしたのは80年に発売したソニーのCFS-V3という機種。これは、当時画期的だったステレオ放送のテレビサウンドを聞くことができるジルバップMXと呼ばれる機種である。

マイクロボットプッシュでボタンを押せるもの、マイクロボットプッシュを貼り付けられるものをという基準で選ばせてもらったが、その迫力ある見た目と本格的な備え付けスピーカーは、まさに昭和の最先端デザイン! カッコえええええええーーーー!

この年代のラジカセにはリモコンなんて存在せず、ボタンを1つずつ押して再生を楽しんでいた。

マイクロボットプッシュを使って再生ボタンを押してみると、その「ガチャ」という音がいかにも“再生した感”を演出し、スマホで遠隔して押しているにもかかわらず、現代人が忘れてしまった“音楽を鳴らす”という作業を思い出させてくれた。

その手間を、マイクロボットプッシュが魔法のように解決してくれたのだ。

筆者はこのラジカセと同い年。子どもの頃はすでに数が減っていたものの、ステレオタイプのラジカセを80年代に始まったHIPHOPカルチャーのひとつとして知った世代でもある。アメリカのHIPHOPアーティストがドデカいラジカセを肩に担いでいる姿を高校生の頃に初めて見て、両親に古いラジカセはないのかと問いただしたことを思い出す。

当時のHIPHOPカルチャーやサウンドは、現代の若者にも刺さるはず。今後、こういった古いラジカセにマイクロボットプッシュを貼り付け、リアルなサウンドでブレイクダンスを踊る若者が現れるに違いない。わからないが。

■扇風機(1978年発売)

最後に試したのは扇風機。

こちらはスーパーファミコンを探しにいった実家で、奇跡的に現役使用されていたという代物で、調べてみるとなんと78年発売! 来年で現役生活40年という節目を迎える鉄人扇風機にも、マイクロボットプッシュを使ってみることにしよう。

部屋にあるエアコンは付属リモコンで作動させるのが当たり前だが、当時の扇風機は「切りタイマー」が付いているだけで画期的だった。それにマイクロボットプッシュを使ってタイマー設定すれば、「入りタイマー」をつけることができるというわけだ。

とりあえずは「微風」に本体をセットし、スマホを使って動かしてみる。

カタカタと首を振りながら爽やかな風を運んでくれた扇風機。首振りのオンオフも、羽の後ろの突起を引っ張る仕組みなのも懐かしい。当時は当たり前だった風景が、スタイリッシュな家電が蔓延する現代には逆に珍しくて新鮮だ。いや、逆にスタイリッシュにさえ見えてくる。

単純なつくりだから活用の可能性は無限大! 今後はもっと便利な使い方も!!

というわけで、今回は4つの昭和家電をスマート化して楽しんでみたが、使い方を工夫すればもっと色々なものをスマホで操作することができそうだ。

筆者のような使い方だけでなく、細かいボタンの判別が難しい高齢者の人がオンオフ作業を単純化したり、身体の不自由な方がちょっと家電を作動させることにも活用できそうだ。スマホを使ってボタンを押すという単純な機能だからこそ、その活用の可能性は無限大。現在、Amazonから購入することが可能なので、さまざまなアイデアで利用してみてほしい。

文・撮影:安東 渉(EditReal)