2017/01/18
あのファミコン名人が、『スーパーマリオラン』をやってみた
まずは、こちらの動画をご覧いただきましょう。
こちら、2016年12月に、任天堂が満を持して送り出した『スーパーマリオラン』。初めてマリオがスマホゲームに登場したことで、大きな話題となりました。あのスーパーマリオの雰囲気はそのままに、指1本で操作ができるなど、スマホに特化したマリオに仕上がっています。
そして、動画でマリランをプレイしているのは・・・・・・。実は、 かつて「高橋名人の弟子」として全国キャラバン(ハドソン主催のファミコン全国大会)も周った、元ハドソンの桜田名人なんです! そもそも『スーパーマリオブラザーズ』がファミコンで発売されたのは、1985年のこと。当時は高橋名人などの「ファミコン名人」が子どもたちのヒーローでした。
さて、ではファミコン名人は、スーパーマリオランも「ノーコンティニューでクリア」できるのでしょうか? 気になります。・・・・・・というわけで、今回は桜田名人に『スーパーマリオラン』をプレイしてもらいました!
ハドソンの入社試験がスーパーマリオだった
プレイの前に、まずは名人の紹介から。
――桜田名人は「高橋名人の弟子」ということなんですが、ハドソンには「名人」として入社されたんですか?
「いや、もともとはゲームの開発者として入社したんです。ファミコンは中学3年の時に父親に買ってもらって、それからはもう友達と夢中になって遊んでいましたね。スーパーマリオも発売日に買ってからどっぷりハマって、朝プレイして、学校に行く時間になったらポーズして、帰ってきたらまた始めるほどでした。そもそも、ハドソンの入社試験もスーパーマリオだったんですよ」
――え、 ハドソンの入社試験に、任天堂のスーパーマリオを!? それっていつのことですか?
「高校を卒業した次の日でした。当時ハドソンは新人を募集してなかったんですけど、アポなしで訪ねたんですよ。数年前にハドソンが雑誌に『天才募集!』という求人広告を出していたんで、その切り抜きを握りしめて。いま考えると頭おかしいですよね(笑)」
――「天才が来たぞ!」って言ってるようなものですからね。
「突然の訪問にもかかわらず、なんとか面接をしてもらえたんです。その最中に中本伸一さん(※ボンバーマンなどの産みの親)が突然やってきて、僕を指差して『お前! ゲーム上手いか?』と」
――なんて答えたんですか?
「『はい』と(笑)。そのまま別室に連れて行かれて、スーパーマリオが映し出されたモニターとファミコンを指差され、『ノーミスでクリアしたら入れてやる!』と言われて。緊張はしましたけど、何度もプレイして体が覚えていたので、ノーミスでクリアできました。もう次の日から出社していましたね」
――本当にスーパーマリオでハドソンに入ったんですね・・・・・・。
「あとから知ったんですが、当時ハドソンはパソコン向けにスーパーマリオを移植した『スーパーマリオブラザーズスペシャル』の開発を予定していたんです。『マリオが上手い奴がつくったほうが、いいものができるだろう』という考えがあって、僕が採用されたみたいですね」
――開発者として入社したのに、そこからどうして「名人」に?
「高橋名人が大人気になって、超多忙になったんです。『第2回全国ファミコンキャラバン』というゲーム大会が開かれることになり、司会やデモプレイに名人役が必要になったんですが、高橋名人は全国を周る時間がない。そこで代役を立てることになり、社内でゲーム大会を開いて、僕ともう1人が選ばれました。開発者から、突然『高橋名人の弟子・桜田名人』になったんです」
――戸惑いもあったんじゃないですか?
「突然小学館に呼び出されて、訳もわからずハドソンのハチマキを巻いてガッツポーズをさせられて、後日その写真がコロコロコミックに『桜田名人が来るぞ!』と載っていたときはビックリしましたね(笑)。キャラバンでは鹿児島から東京までの南ルートを周り、40日間30公演をこなしました。そのあいだ、開発の仕事はほかの社員に任せっぱなしです」
――ファミコンキャラバン、当時はものすごい人気でしたよね。僕も行きたくて親に何度もねだりました。
「子どもたちと親を合わせると毎回1,000人規模が集まる大イベントでしたよね。ゲーム大会を始める前に『スターソルジャー』のデモプレイをするんですが、うっかり失敗するとブーイングもすごい(笑)。机がなくて膝の上でジョイスティックを使ったり、会場が屋外だからモニターの映り込みが酷かったり、会場によってプレイ環境も一定じゃなかったんですよ」
――名人には名人なりに苦労があったんですね。
「最初は、名人は司会とゲームだけすればいいかな、と思っていたんですけど、ゲーム大会が終わったら、営業が「このあとサイン会です!」って叫んでる。サインなんてないんですよ! でも子どもたちがずらりと並んでサインを待っているし、仕方ないのでその時は「桜田名人」って漢字で何枚も書きましたね(笑)。あとからサインはちゃんとつくりました。どこの会場に行っても盛況で、当時の"名人"人気は本当にすごかったと思います」
名人がスーパーマリオランに挑戦!
それではいよいよ、桜田名人に『スーパーマリオラン』に挑戦してもらいましょう! 『スーパーマリオラン』は無料で1-3までが遊べ、1,200円を課金すれば、追加課金なしで全ステージが遊べるようになります。課金には、月々の通信料金と一緒に支払える「auかんたん決済」が便利です。
――ところで、名人はもうスーパーマリオランをクリアされましたか?
「もちろん! 今日はちょっと緊張しますけど、がんばります」
――それでは、1-1から6-4までノーコンプレイをお願いします!
――すごい! 見事クリアです!
「ありがとうございます! いやー、とにかくクリア重視だったので、もっと攻めて魅せるプレイをしてもよかったですね。シャボン玉を使ってしまった場面もあったし、まだまだ修行が必要です」
――でも名人のiPhoneに入っている『スーパーマリオラン』、とても王国が充実してるじゃないですか! 難易度の高いカラーコインを集めたり、キノピオラリーでたくさん勝利してキノピオを集めたりしないと、ここまでデコレーションできないですよ。
「そうそう、1-1から6-4までカラーコインをすべて集めると、高難度のスペシャルコースが遊べるようになりますよ。やってみますか?」
――おぉぉ・・・・・・名人のアドバイスのおかげでなんとかクリアできました・・・・・・。こ、これは難しいですね!
「このコースはピンクコインのスペシャルコースなので、パープルやブラックコインのスペシャルコースになるともっと難しいですよ。『スーパーマリオラン』はクリア自体は比較的簡単ですが、こうしたやり込み要素をたくさん残しているのが、往年のマリオシリーズらしいですよね」
名人とスーパーマリオの思い出を語ろう
――1986年にファミコンで『スーパーマリオブラザーズ』が登場したときは衝撃でしたよね。
「衝撃でしたね。それまでのファミコンのゲームは、ステージが1画面で固定されていて、1つずつステージをクリアしていくものが多かったんです。ドンキーコングやクルクルランド、ナッツ&ミルクもそうですね。スーパーマリオの横スクロールアクションはインパクトがありましたし、コースに『謎』が仕掛けられているのが画期的でした」
――中に入れる土管があったり、隠しブロックがあったり。
「1-2から4-1にワープできるとか、見つけた時は感動しましたよね。発見したことを友達に自慢したりされたり、というのも楽しかった。壁にめり込んだり、無限1upができたり、裏技もたくさんあって。チビマリオの状態でファイヤーマリオになるのもありました」
――電源を入れたまま『テニス』のカセットを抜いて、その状態でマリオのカセットを刺して始めると、マイナス面が始まるっていう噂もありました。あまり推奨できる技じゃないですが・・・・・・。その後、ディスクシステムで『スーパーマリオブラザーズ2』が出ましたね。
「難易度がものすごく高くて、全国の子どもが泣きましたよね。スーパージャンプ台があったり、途中で強風が吹いたり・・・・・・。クリアはしましたけど、歯ごたえがありました」
――『2』は1-1の最初から無限1upができるようになっていましたよね。
「ここで増やさないと先に行けないぞ、という任天堂のメッセージかも(笑)。ちなみに海外では『スーパーマリオUSA』が『スーパーマリオ2』として発売されているんですよ」
――そうなんですね! 『スーパーマリオUSA』はニンテンドークラシックミニにも入っていました。マリオやルイージだけじゃなく、キノピオやピーチも選べるんですよね。ピーチだとジャンプのあとちょっと浮いたりできる。
「『USA』は、もともとはフジテレビが発売した『夢工場ドキドキパニック』がベースです。敵や野菜を引っこ抜いて投げるアイデアは秀逸で、感心したのを覚えています。敵が撃ってきた弾でも引っこ抜いて投げられちゃいますから」
――そして1988年には『スーパーマリオブラザーズ3』が出ました。
「この頃になると開発者の目線で見ちゃいますね(笑)。カセットを入れて電源を入れると、幕が上がるところから始まるとか、演出もすごく凝っているんです。マリオ3はカセットに音源チップが追加されていたので、ティンパニの音などが追加されているのも印象的です」
――桜田名人はファミコンやスーパーファミコン、Wii Uまで、すべてのマリオをクリアしていると聞きましたが、いちばん好きなマリオシリーズはどれですか?
「ゲームキューブの『スーパーマリオサンシャイン』です。マリオがポンプを背負っていて、水の力で飛んだり、落書きや汚れを落としたり、多彩なアクションができるんです。3D表示のマリオはそれまでにもありましたが、『サンシャイン』でようやく3Dの世界にマリオが馴染んだ感がありましたね」
「スーパーマリオ」は共通言語
――これまでさまざまなマリオをプレイしたうえで、『スーパーマリオラン』についてはいかがですか?
「今までのマリオシリーズで使われてきた仕掛けがほぼそのまま使われているので、すぐにルールを把握できるのがポイントだと思います。『?』のブロックを叩けばアイテムが出る、敵は踏み潰せば倒せるといったことは、もうなにも説明されなくてもわかりますものね」
――「スーパーマリオ」がもう共通言語として浸透しているということですよね。
「指1本の操作のバリエーションや、難易度の調整もよく練られています。最初は難しく感じても、何度かプレイして敵やブロックの配置を覚えればできるようになる。上級者はカラーコインをコンプリートするなどやり込み要素もある。この辺りのバランスはさすが任天堂です」
――最後に、今後の期待などお聞かせください。
「既に『スーパーマリオラン』はヒットしていますし、続編も期待したいですよね。任天堂のほかのゲームもスマホ向けにアレンジされたら楽しいのではと思います。ゼルダやメトロイドなどの古き良きゲームがスマホでプレイできて、次の世代に新鮮にプレイしてもらえたら嬉しいですね」
文:井上マサキ
撮影:三條康貴
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