2016/11/11
iPhoneでスーパームーンは撮れるのか? 三脚と外付け望遠レンズで撮影してみた
ここ10年くらいで、日蝕や月蝕、流星群などの天文鑑賞イベントってかなり一般化しましたよね。そして11月14日は、68年ぶりに月が地球に超接近するという"エクストラ・スーパームーン"。2015年の"スーパームーン"より、さらに365kmほど近づくそうで、それはもう、エクストラなことになりそうです。
「スーパームーン」というのは、地球の周りを楕円軌道で回っている月が、1年でいちばん近づくときの満月のこと。次に同じくらい近くで見られるのは、18年後の2034年11月だそうです。
となれば空も見上げたくなりますし、かっこいい写真を撮ってシェアしたくもなるってもんです。・・・・・・というわけで、SNSでできるだけ多くのシェアを獲得すべく、スマホカメラの撮影テクニックを探求するTSスマホカメラ部。満月の撮影に挑戦してきました。
スマホカメラで月の陰影を撮るには、なにが必要か?
天文的な一大イベントであることには間違いありませんが、スマホカメラ部としての問題は、はたして「スマホカメラで天体写真が撮れるのか?」ということ。14日のエクストラ・スーパームーンではないですが、試しにiPhone SEの標準カメラで、デジタルズームを最大にして、10月某日の月を撮影したらこんな感じになりました。
月の撮り方について解説しているサイトをいくつか読んでみましたが、絞りがどうとかF値がどうとかいう以前に、もうちょっとズームできなければ話になりません。スマホで月を撮るために重要なのは、次の3点。
■望遠レンズ
月の陰影をくっきりと写すには、30倍以上のズーム機能は欲しいところ。倍率は高ければ高いほどよし。端的にいえば、レンズがすべてです。スマホの場合はレンズに重ねて使う外付けレンズを使うしかないので、高倍率の望遠鏡を持っている方は、接眼レンズにスマホのレンズをくっつけて撮影するのもいいかもしれません。動かないようガッチガチに固定するか、うまく撮れるまで何百枚も撮り続ける必要はありますが・・・・・・。
■三脚やリモートシャッター
夜に撮影するうえに望遠レンズを使うので、カメラを揺らさない三脚は必須です。そこそこの重量があって頑丈なものを使うのが望ましいですが、Bluetoothなどで接続するスマホ用のリモートシャッターや、タイマー撮影機能を使うことで撮影時にブレない工夫はできます。一眼レフカメラ用の三脚を持っている方は、スマホ用のアジャスターを購入すれば事足りるでしょう。
■明るさの調整
月の表面を上手に撮るには、絞りやシャッタースピードをマニュアルで調整できるアプリを使う手もあります。ただ、マニュアル撮影はそれなりの知識を必要とするので、筆者のような素人が月を単体で撮るなら、標準カメラのAE/AFロック機能を使って暗めに撮る(参考:【TSスマホカメラ部 ③】「明るさ調整をマスターして、"いいね"と言われる写真を撮る」)だけで十分でしょう。
スマホ撮影用の天体望遠鏡を試してみた
というわけで、今回用意した望遠レンズは、「DIY スマホ天体望遠鏡 PalPANDA」(TOCOL/9,000円+税)。タブレットやスマホでの天体撮影に特化した、ダンボール製組み立て式の天体望遠鏡で、光学35倍ズームが可能だそうです。三脚も百均で買ったクネクネしたものではちと心もとないので、某大手家電量販店のカメラコーナーで店員さんにお薦めしてもらった「PIXI Smart」(Manfrotto/4,900円)を用意しました。
10月16日(日)の満月前後に撮影しようと臨んだものの、あいにくこの週は曇りや雨の悪天候続き。雲がかかるだけで数十年に一度の大イベントもおじゃんになるという、天体イベントの恐ろしさを思い知りました。合間に晴れ間がのぞいた土曜日に急きょ撮影することにして、最寄りの公園へ。
PalPANDAを選んだのは、光学35倍ズームというスマホの外付けレンズとしては最大クラスの倍率だったのと、「タブレットやスマートフォンカメラとの相性を優先した構造」や「初心者にも扱いやすい『使い勝手のよさ』」「組み立ては、折って溝や穴に差し込んでいくだけ。(一部に接着剤を使用)」といった公式サイトに掲載されている説明に惹かれたため。ただ、開けてみると・・・・・・。
月や雲の切れ間は、人の都合に合わせてくれません。いつチャンスが来ても撮れるように、望遠レンズが組み立て式ではない場合でも、一度くらいは事前に試し撮りして準備しておきましょう。ご自宅で事前に組み立ててから現場に向かう、が正解ですね。当たり前ですね。あと、防寒対策は真冬の山に登るくらいのつもりで臨んだ方がいいです。長時間座りっぱなしだと、ダウンを着ていても凍えますから。
セッティングが終わったら、月に照準を合わせてうまくいくまで撮り続けるだけ。シャッター時にブレないよう3秒タイマーを使い、バーストモードで連写しました。もっとも、連写した10枚の写真はパソコンの画面で見比べてもほとんど違いがなかったので、風が吹いたりしていなければ1枚ずつ撮るだけで十分だと思います。
少々てこずったのは、月を写真の真ん中に配置すること。今回使ったようなスマホ用の小型の三脚って、望遠レンズを使うことが想定されていないので、カメラの角度の微調整がやりにくいんですよね。使っているのが紙製で軽量のPalPANDAであっても、手を放した瞬間に重みで角度がズレてしまうことが何度もありましたから、もっと重い望遠レンズを使う場合はさらに難しくなりそうです。35倍ズームともなると、カメラの向きが1度変わるだけでも月がフレームアウトしてしまうので、やっぱり三脚の性能は大事ですね。
こうして撮影した写真が、この記事のトップに掲載した月の写真です。
ある程度の陰影が出るように撮れば、明るさや色みはあとから調整できます。丸い月の形が切れてさえいなければ、中心からズレていてもトリミングできますから、撮影中はとにかく、月にピントが合っていて、明るすぎて白トビ(真っ白になってディテールが写らないこと)しないように撮ることだけを考えましょう。
NASAのHPによると、エクストラ・スーパームーンはもっとも遠いところにある月よりも14%大きく、30%明るいとのこと。普通の満月でさえ、こんな写真が撮れるのだから、スーパームーンならもっと迫力が増すはずです。スマホで撮影して即シェアすれば、SNSのタイムライン上でも、ひときわ輝いてくれるのではないでしょうか。
文:T&S編集部