2015/03/26

【検証】子どもの頃に夢見た“魔法”が放てる! AR技術を駆使したテクノスポーツ『HADO』体験レポ

黒竜を封じ込めし右手を天空に掲げると、手のひらから漆黒の炎が立ちのぼる。「エレクトリック・ファイアー!!!」。錬成された炎は巨大な炎球となり、腕を前にかざせば、炎球は生きた黒竜のようにうねりをあげながら敵に向かって飛び出し、そのすべてを焼き尽くす......!

男子ならば誰しもが子どもの頃に試したことがあるはずだ。しかし、どんな修行を積もうとも腕に黒竜は宿らず、黒竜が宿らなければ炎も立たぬわけで、子どもの頃の、しかも割と早い時期に皆、諦めとともに現実を知ることになる。......はずであるが、この世界には「諦めきれない男たち」がいる。meleapである。

グローバルに通用するインターネットサービスをつくり出していく起業家・エンジニアを応援する「KDDI ∞ Labo」の第7期プログラム採択チームの中でも、meleapが提供するサービス・HADOは異色なサービスだ。スマートフォンを挿入して使うヘッドマウントディスプレイと、モーション認識技術を搭載したAndroid Wearを使い、「波動拳」のようなエネルギー砲や「サンダー」のような雷撃魔法を放つことができるというのだ。一体、テクノスポーツとはどういうものなのか、実際に体験させてもらった。

ヘッドマウントディスプレイに、専用アプリをインストールしたスマートフォンを挿入。これを装着すると、AR技術で擬似的に魔法のエフェクトを表示することができる。今回体験させてもらったのは、同じくAR技術で出現させたドラゴンに対し、「ファイアーボール」「サンダー」「メテオ」といったお馴染みの魔法で戦うというデモンストレーション。

ヘッドマウントディスプレイに加え、利き腕にAndroid Wearを装着。まずは、モーション認識機能で各魔法に合わせた好みのポーズを登録する。プレイ中に決めた通りのポーズを取ると、その動きと画面が連動して魔法が出るという仕組みだ。ポーズは自由に決められるので、今回は3種類を登録してみた。

「ファイアーボール」を放った瞬間のポーズ。某マンガやゲームに出てくる動作に似ている気もするが、あくまでファイアーボールを出すための動きだ。

次に「サンダー」。必死にポーズを取っているが、はたから見るとシュールである。ちなみに重要なのは腕の振りで、片足を上げる必要は特にない。雰囲気です。

最後に、今回のデモの必殺技である「メテオ」を出す時のポーズ。こちらは、ヒーローに変身できそうな動作を登録してみた。この必殺技がうまく決まり、目の前に出現したドラゴンを倒すことができたのだが、この写真だけでは読者の皆さんに伝わらないのがとても歯がゆい。


※プレイヤーには実際、こういう感じで見えている。

ファイアーボール!

サンダー!

とどめのメテオだ!

端から見るとシュールな光景だが、自分の動きに合わせて魔法を放つ感覚はなかなかの快感。最初こそ周りの目が気になって遠慮がちに動いていたが、実際に目の前のドラゴンと"対戦"していると(ドラゴン側からも攻撃は繰り出される)、ヘッドマウントディスプレイの遮へい効果もあってか、割と簡単に熱中できる。また、登録してある動きの再現の良し悪しによって、微妙に魔法が出たり出なかったりする点も、いい具合に向上欲を刺激してくれる。ここら辺は格闘ゲームにハマっていく課程と似ている。

ちなみに、本来想定されているテクノスポーツは3対3のチーム戦で、攻撃役や回復役、補助役などに分かれながら、相手のクリスタルに魔法を当てて破壊する競技となる。「魔法を放つ快感」に加えて、より高い戦略性が求められることを考えると、確かにこれはスポーツになり得る、という可能性の広がりを感じた。

さて、どんな経緯でこういったARデバイスを思いつき、実際に作ったのか。HADOの考案・開発をした株式会社meleap代表の福田浩士さんに話を聞いてみた。

「子どもの頃からかめはめ波が撃てないか、ずっと考えていたんです。親に『気』に関する本を買ってもらったりしたくらいですから(笑)。学生時代は建築学を専攻していたんですが、上に重力が働いているように感じる空間や、月に手が届きそうと感じる建築など、『身体の拡張』をテーマにしていました。その流れで、ウエアラブルデバイスやAR技術を知り、HADOの開発に至ったというわけです」

以前からの友人であった新木仁士さん(現CTO)と意気投合し、2人で透明人間になる方法やヴァーチャルペットの飼育などの研究もしていたという福田さん。HADOを作るプロセスでは、何が大きなポイントになったのだろうか。

「一言でいうと、『臨場感』ですね。本物のように感じられるかどうか、という点にこだわって開発しました。使用するヘッドマウントディスプレイに複眼タイプを選んだのも、よりリアルな立体視が可能という理由です。ただし、その点ではまだまだ伸びしろがあります。例えば、手を大きく振るとより大きな魔法が出るといった演出は、今後、実装したいと思っています」

福田さんは、単なる遊び道具としてHADOを開発・研究しているわけではない。情報社会の中で生まれてくるスポーツを「テクノスポーツ」とし、サッカーやテニスなどのアナログスポーツ、そして工業社会から生まれたモータースポーツの次のステップに位置付けているのだ。

「これまでのスポーツと同様、テクノスポーツにもプロ選手が生まれてほしいですね。従来のスポーツはプレイする場所が限られていますが、テクノスポーツはデバイスがあれば場所に依存しないという強みがあります。インターネットを駆使することで、スポーツをより身近なものに変革できればと思っています。また、コミュニケーションツールとしても貢献できると考えています。会社帰りに人が集まってHADOをプレイする。テクノスポーツで、顔と顔を付き合わせる機会がもっと増えるようになれば良いですね」

今後はデバイスの精度やゲーム性を高める一方、イベントの開催やレジャー施設への導入などを進めたいと語る福田さん。単なるサービスの提供だけではなく、テクノスポーツ文化の創成を目指すそうだ。

インターネットとAR技術を駆使したテクノスポーツは、世界にどのようなインパクトを与えるのだろうか。2020年の東京オリンピックには間に合わないかもしれないけれど、各国のテクノアスリートたちが、国境を軽々と越えるテクノスポーツでメダルを争う......なんていう日がそう遠くない未来にやって来るのかもしれない。

文:杉山大祐