2016/08/22
【ITプチ長者への道】写真のネット販売で副収入50万円! アマチュア写真家が身につけた「売れる写真の撮り方」とは?
スマホアプリやLINEスタンプ、イラスト、写真・・・・・・etc。今の時代、個人が制作したものを、ネットを利用して販売するチャネルが増えている。でも、そのなかから頭角を現すのは、ほんのひと握りだけ。彼らはなにが違ったのか? 「ITプチ長者への道」第5回は、画像素材サイト「PIXTA」で自分が撮影した写真を販売し、月50万円以上の副収入を得ているという「まちゃー」氏に、"売れる写真"を撮るための秘訣を聞いた。
小遣い稼ぎが目的で始めたPIXTA。しかし実際に収入を得たのは登録から2年後・・・・・・
Webサイトの記事や広告等で使用される、人物や風景の写真やイラストといったイメージビジュアルを、安価に提供することで人気の画像素材サイト。そのなかで国内のパイオニア的存在となっているのが、2006年にサービスを開始した「PIXTA(ピクスタ)」だ。2016年8月現在でPIXTAが提供するイメージビジュアルは実に1800万点以上。その大半が、「クリエイター」と呼ばれる登録ユーザーが作成したものである。
今回話を聞いた、まちゃー氏もそのひとり。会社員でありながら20万人を超えるクリエイターのなかでも15位以内の成績をキープし続け、月50万円以上の売り上げ実績を誇るトップ・クリエイターだ。
「誕生日にコンパクトデジタルカメラをプレゼントしてくれた恋人(現在の奥様)に、旅行先で撮った写真を褒められたのが、写真を趣味とするようになったきっかけ。2010年頃に雑誌の記事かなにかで、PIXTAというサービスがあることを知り、本業の合間に小遣い稼ぎができるかも? と、クリエイター登録をしたんです」
とはいえ、まちゃー氏の淡い野望は、登録直後から見事に打ち砕かれることになる。
「まず、既にPIXTAで販売されている写真のクオリティーの高さと自分のレベルの低さに愕然としました。加えて、今まで撮りためていた写真を審査に送ってみたら、すべてリジェクト(ボツに)されてしまったんです。ピントが合っていないとか、画像が鮮明ではないとか、一応簡単にリジェクトされた理由が戻ってはくるんですが、かなりショックでした。『自分の写真は、売れる云々以前に、登録すらされないレベルだったんだ』と」
2010年頃に初めて一眼レフを買ったまちゃー氏。現在メインで使っているのはソニーの「α7R MarkⅡ」。4台めのカメラだ
PIXTAの存在を知ってから、初めてデジタル一眼レフカメラを購入したというまちゃー氏。それまでは、コンデジでしか写真を撮ったことがないくらいの"ど素人"だったのだ。せめてPIXTAに登録される写真を撮りたいと、最低限のクオリティを確保すべく挑戦を始めた。
「ピントや画像の鮮明さといった基本的なクオリティは、撮影とアップロードを重ねていくうちにクリアできたんですが、構図や被写体の選び方といったポイントは、リジェクト通知には含まれていないんですよ。どういう写真が"正解"なのかは、ある意味、登録されるまでわからない。なので、そこからはとにかく登録されるまで審査に出し続けることにしたんです。当時は、1週間に5枚まで審査に出すことができたので、撮りだめた写真から毎週5枚をチョイスして出す、という作業を繰り返しました」
作業は仕事から帰宅し、家族が寝静まったあと、ひとりになれる時間を使いコツコツと行った。初めて審査を通過したのは、登録から1カ月後。1枚の写真が売れるまでには、そこから10カ月を待つことになる。
「売れたのは、お義父さんを撮った写真でした。ご覧いただければわかるとおり、かなりインパクトのある風貌をしているんです(笑)。PIXTAは、サイズによって販売額が変わるシステムになっていて、売れたのはいちばん小さなサイズ。私の報酬額は100円程度でした。もちろん自分の写真が商品として認められたのは嬉しかったのですが、一方で売れた理由が明らかに被写体(インパクトのあるお義父様)だということも理解できたので、自分の腕前によるものじゃないと思うといささか複雑な心境にもなりましたね(笑)」
PIXTAには報酬が一定額以上にならなければ換金できないという規則がある。まちゃー氏が、実際に換金の手続きを行い、現金を手にしたのは、なんと登録から2年後のことだった。
「実際には、もっと前の段階で換金できる金額になっていたんですが、せっかくなのでまとまった金額になるまでは換金を我慢しようと思ったんです。初めて換金するまでに貯まった金額は4万円とちょっと。やはりお義父さんを撮ったシリーズが売れ筋だったので、お礼もかねて一緒に食事をしたりとか、もともと欲しかった交換レンズや撮影機材を購入するなどの投資に当てました」
本業の合間に撮れる被写体として最適だった「都会の街並み」が成功のカギに
PIXTAに登録されているまちゃー氏の作品リスト。おすすめされているのは、風景写真がほとんどだ
現在、まちゃー氏が主に販売しているのは、都会の景色を切り取ったイメージ写真がメイン。当初のヒット作だった"お義父さん"シリーズは、ほぼ休止状態となっている。これには、なにか事情があるのだろうか?
「お義父さんが、大変にアクティブな方なんですよ(笑)。なので、家にいなかったり、自分と予定が合わなかったり、なかなか言い出せなかったりとひんぱんにモデルをお願いするのが難しかったというのが、いちばんの理由です。それに、風景写真なら自分の都合に合わせることができますから、会社勤めをしている僕にも撮りやすかったんです」
とはいえ、PIXTAに登録されている写真のなかでも風景はいちばんの"激戦区"。いわゆる「プロ」のカメラマンが販売している作品も多い。小遣い稼ぎが目的とはいえ、あえて競合が多いジャンルを選んでいる理由はどこにあるのか?
「勤務地が首都圏なので、人気が高い都会の風景を撮りやすいこともありますが、なにより風景写真がいちばん好きだったというのも大きな理由です。確かに、当初は小遣い稼ぎが目的でしたが、徐々に作品がリジェクトされないようになると、審査に通過してPIXTAに認められること、自分の写真がたくさんの人に見られていることが楽しくなってくるんですよね。現在はそこに売れる喜びがプラスされていますから、そういうサイクルがPIXTAを続ける上でのモチベーションになっているのだと思います」
当たり前のことをコツコツと続けることで、気がつけば月収50万のトップ・クリエイターに
現在、まちゃー氏がPIXTAから得ている報酬は、月に50万円以上。見られる喜びというモチベーションが大きいとはいえ、それだけの売り上げを達成するには、なにかしらの秘訣があるに違いない。
「もちろん、売れるための工夫はしています。でも、それはすべてPIXTAがクリエイター向けに提供しているアドバイスに従っているだけなんですよね。おそらく、ほかのクリエイターさんに比べて、特別な工夫をしているということはないと思うのですが・・・・・・」
詳しく聞いたところ、まちゃー氏が実践している"売れるため"の主な工夫は以下の3つだという。
1)写真につける検索タグは、制限いっぱいまで登録すること
「見てもらったり買ってもらったりするためには、まず検索される可能性を高めることが重要。たとえばビル街を撮った写真なら、『ビル街』はもちろん『ビル群』、『街並み』、『町』、『市街地』、『都会』といった、できるだけ多くのタグを登録します。このほか『晴天』や『青空』といった天候に関するタグや、青空の『青』、雲の『白』など、"色味"に関するタグも効果的。PIXTAでは1点の写真に50までタグをつけられるので、基本的には、すべての写真に50のタグをつけるようにしています」
2)利用者の"使い勝手"を考慮し、複数の構図を用意すること
「同じビル群の写真でも、広告で使う場合にはキャッチコピーを入れたい場所が違うこともあります。そうしたニーズに応えるため、ひとつの風景でも構図の空きスペースを変えるなど、複数のバリエーションを必ず用意するようにしています。とくに都会の風景写真は、企業広告で使用されるケースが多いので、アーティスティックな重厚さよりも『明るさ』を心がけることも重要かもしれません」
3)大切なのは"量"。コンスタントに作品の登録を続けること
「クリエイターとしてのキャリアと実績によって、1週間に登録できる点数が増えるので、現在は毎月500~700枚の写真を登録するようにしています。やはり、点数が多いほど売れる確率が上がりますから。2016年8月現在で、累計17,000点くらいの写真を登録してあります。レギュレーションの更新などでNGになったものを除けば、基本的に登録した写真が削除されることはありません。実際、自分ではイマイチと思っているような写真でも結構売れたりするので」
確かに、どの工夫も当たり前といえば当たり前のことばかり。とはいえ、それを真面目にコツコツと続けることができる人は、PIXTAのクリエイターのなかでもかなり限られるだろう。実際、PIXTAの広報担当者によれば、登録クリエイターの大半は数点程度の登録にとどまるというから、まちゃー氏が行っている毎月数百点という追加登録の数がどれだけ凄いかがわかる。写真を撮り続けていれば、おのずとクオリティが高まるというもの。結局のところ、「まちゃー」氏から学ぶことができる"売れるため"の最大の秘訣とは「実直」ということなのかもしれない。
取材・文:石井敏郎