2017/04/27
Android Experiments展で「今すぐ欲しい!」と思ったアイテム2点
先月、Googleが主催するIoTの未来を募った公募プロジェクト「Android Experiments OBJECT」。このプロジェクトはAndroid端末を使ったまったく新しいデバイスのアイデアに対し、入選作品にはGoogleが出資・開発のサポートをするというもの。
先だって行われた展示会には、グランプリ作品ほか、特別賞となったKDDI研究所の自走式携帯充電ロボット「充電ロボ」など、6作品がお披露目。今回、そのなかから気になったアイテムを2点、紹介していきます。
進化した「Magic Calendar」
まずは、「KOSHO TSUBOI DESIGN」が開発したマジックカレンダー (Magic Calendar)。一見、デジタルガジェット感はまったくなく、和紙のようなテクスチャ、表示フォントの美しさと、普通のカレンダーにみえる。しかし実際にはカレンダーそのものが低反射ディスプレイになっており、好みに合わせてデザインをカスタムしたり、メモや天気、時間割表など自由に表示する機能が備わっている。
また、Googleカレンダーと同期するので、つまりスマホとの同期も可能だ。普段、PCやスマホで管理しているスケジュールをIoTプロダクト化することで、実際のカレンダーのように常に目に入る場所に置いたり掛けておいたりしておくことができるというわけだ。低電力のため長い期間充電せずに使用できるという。直感的に「便利そう!」と思えるプロダクトで、実際、グランプリを受賞した4つのプロダクトのひとつとして選出されている。
会場にいた開発者の、坪井浩尚さんに開発の経緯を聞いてみた。
「どこにでも持ち運べて、簡単にスケジュールを入力できるスマホの良さ。パッと見るだけで前後のスケジュールまで俯瞰的に把握できる紙のカレンダーの良さ。これを併せ持つのが『Magic Calendar』です。ネット回線を通じ、出先であっても自宅にあるカレンダーに随時スケジュールが反映されるので、プライベートや仕事で便利に使えると思います」
プロダクトとしてのMagic Calendarの開発にあたっては、坪井さんのこだわりが随所に反映されている。
「従来の壁掛けモニターを使って実現させても、私としてはあまり意味がないんです。電気をなるべく使わず、目にも優しい。そして誰もが馴染みのある紙に限りなく近く、壁にかかっていても存在を主張しすぎない。こうした紙のカレンダーの利点にいかに近づけるかが肝心で、そのハード開発の比率がプロジェクトの大きな部分を占めています。
現状、ディスプレイには低反射ディスプレイの技術を利用する方向ですが、将来的には視認性だけでなく、手触りや、画鋲で壁に直留めできるレベルまで"紙"を再現したいと考えているんです」
最先端の技術を駆使したプロダクトだからこそ、手触り感といったアナログな感覚を大事にするということが坪井さんのこだわりだ。なにより、出先で入力したスケジュールが、家にあるカレンダーにリアルタイムで反映されればとても便利。商品化が楽しみだ。
ELI / English Learning Intelligence
こちらは「ELI / English Learning Intelligence」はスマホで英会話を学ぶというもの。スマホの英会話アプリというだけならあまり目新しさは感じないけれど、こちらはひと味違うようだ。
本体である小型マイクをシャツの襟に装着して普段の日本語での会話を記録。そのなかから頻繁に出てくる単語を検出し、使用者にとって最適化された英会話レッスンを自動生成する仕組みになっているという。翻訳にはGoogle翻訳の機能を活用している。
さっそくT&S編集部員がプロトタイプを体験。まずは日本語で10秒ほど話す準備時間があり、そのあとレッスン開始。ELIが英語で話しかける内容に、正しい発音で正しい返答を返していくという会話形式でレッスンは進んでいく。非常に実践的な英会話レッスンになるので、これならモチベーションを保ったまま英語の勉強ができそうだ。体験した編集部員は「普段の会話のなかで使わない単語や会話文に時間を割かれる無駄もないし、これはイイ!」と実感。
開発チーム「monom」のひとりキム・ジョンヒョンさんは、「英会話を習得する際、人によって必要となる単語や伝え方は本来異なるはず。私たちの開発したELI(エリ)は、人それぞれが必要とする『自分だけの英会話』を効率良く学ぶためのアプリを開発するプロジェクトです。
今は音声の認識と、会話のデータベース開発に注力している段階なので難易度についてはあまり意識していませんが、今後はレベル別に対応していく予定です。将来的には英語以外の他言語展開もしていきたいですね」とのこと。
製品化される時期は未定だが、Googleの翻訳を上手に活用し、入力装置であるワイヤレスマイクも技術的に特殊なものではないので、製品化への障壁は低いという。筆者のような英語苦手マン的には、こちらの早期製品化に大いに期待したい。
というわけで、今回は「Android Experiments OBJECT」にお伺いしたT&S編集部員が「欲しい!」と思ったアイテムを2点のみ紹介した。しかし身近なあらゆるプロダクトがインターネットにつながることで、生活に寄り添い、世界をより楽しくしてくれるアイデアは今後も続々と登場する...。そんな未来を予感させてくれる展示会だった。
文:のび@び助
撮影:稲田 平