2017/01/27

実録レポート:ノマドの新しい常識になる? 『コワーキングスペース』ってどんなところ?

異なる業種の企業や個人が、机や通信回線、会議室などがそろったオフィスを共有して使う「コワーキングスペース」や「シェアオフィス」。ここ数年で数を増やし、新しい働き方として注目を集めています。

コワーキングスペースというと、フリーランスで働く人が事務所として使ったり、新しく起業をするスタートアップの場として使ったりするというイメージが強いかもしれませんが、実はサラリーマンや学生など、いろいろな業種の人が利用しているようです。パソコンやタブレット1台と通信環境があれば、どこでも仕事ができるという人にとっては素晴らしい仕事環境ともいえます。

今回はそんなコワーキングスペースのひとつ、「co-ba CHOFU(コーバ・調布)」を取材し、実際にどんな人が使っているのか、使い心地はどうなのか、設備から利用方法までをじっくりと調べてきました!

Wi-Fiやミーティングルームが利用できるco-ba CHOFU

co-ba CHOFUは京王線調布駅の近く、市役所や図書館にもアクセスが良い便利な場所にあります。コワーキングスペース「co-ba」は、シェアオフィスが登場し始めた黎明期の2011年に1件目となる「co-ba shibuya」が登場し、現在は東京都内や長野や鹿児島、東北などに、それぞれ特徴のあるコワーキングスペースが展開しています。コワーキングスペースは、場所ごとに利用する層や雰囲気が大きく異なっており、co-ba CHOFUは地元・調布に住む会員が多い、落ち着いた雰囲気が特徴です。

調布駅から大通り沿いを5分ほど歩くと、ビルの入り口に看板を発見! 地下へ続く階段を下り、オフィスの中に入ってみると落ち着いたデザインの空間が広がっていました。オフィスにはパーティションで仕切られた個別のワークスペースが14カ所、中央には打ち合わせや会議などにも使える大きなテーブルが2つ。さらに、靴を脱いで上がれるミーティングルームのほか、ベンチのある休憩スペースには、冷蔵庫とシンクも完備されています。

ワークスペースの奥にあるミーティングルーム。座布団を敷いてのんびり打ち合わせができます。

お茶やポットが置かれた休憩スペース。会員からのおみやげのお菓子なども置かれていました。

パソコンなどの電源コンセントはもちろん、Wi-Fiが利用できる通信設備、プリンターや個人ロッカーなども完備。さらに、希望者はオプション(月額5,000円)で本社登記も可能です。仕事の邪魔にならない心地よい音楽が流れ、自由に座れるワークスペースでは飲み物やお弁当などを持ち込んでもOK。明るく清潔感のある室内で、女性ひとりでも気軽に利用ができそうです。

取材に訪れた日も、午前中から数名の会員がそれぞれのパソコンに向かい、仕事をこなしていました。中央の大きなテーブルで仕事用の撮影をする人もいれば、一心不乱になにかしら打ち込んでいる人、のんびり本を読む人など、実にさまざまなスタイルで利用しています。

コーヒー代より安く、集中して仕事ができる

会員の方に話を聞いてみたところ、皆が口を揃えて「ここに来るまでは、仕方なくカフェで仕事をしていたけれど、とにかく不便だった」と、話してくれました。

「コワーキングスペースを利用するまでは、外で仕事をしたくてもする場所がなく、やむなくカフェを渡り歩いていたけれど、ここなら安心。資料やパソコンを広げても気にならない」と、集中して仕事ができるようになったそうです。

「都合のよい時間だけ利用できるという点も助かっています」と話すのは、2人の小学生の母でもある福田さん。育児と家事の合間にco-ba CHOFUに通い、仕事をこなしています

もうひとつのメリットが出会いです。女性向けに仕事派遣などの事業を営むケイリクス合同会社の代表・福田由季子さんは、「ここで仕事を始めたことで、同じ個人事業主の先輩に意見を聞くことができ、仕事的にも大きな進展がありました」とのこと。

co-ba CHOFUの会員の業種は幅広く、もっとも多いのはフリーランスのライターやエンジニアだそうですが、イラストレーターや、大学の先生、プロレス団体の営業、ロボット開発企業のCEOなど、さまざまな職種の方がいるそう。なかなか交流の機会のない異業種や同業者の方と出会うことにより、1人ではできないことが活性化するのは素敵ですね。

co-ba CHOFUを運営している非営利型株式会社Polarisの市川望美さんによると、「シェアオフィスとコワーキングスペースの違いは、前者が単なるレンタルオフィスであるのに対し、後者はコミュニケーションを目的とした場所であることです。コワーキングスペースもシェアオフィスではありますが、分け合う『シェア』ではなく、持ち寄る『シェア』と考えています」とのこと。

異業種の人や企業が、それぞれの得意分野の知識や技術を持ち寄るコワーキングスペース。そこには、新しい出会いから、これまでにないアイデアが生まれるといった化学反応も起きています。

co-ba CHOFUから生まれた「ねぶくろシネマ」

その好例が「ねぶくろシネマ」です。

ねぶくろシネマとは、「街中をどこでも映画館に」というテーマで、屋外で無料の映画上映会を行うイベントで、「お父さんが調布の街を救う」企画として始まった、co-ba CHOFUから生まれたものです。

京王線の高架下で開催された「ねぶくろシネマ」。今では、調布の名物イベントになりました。ねぶくろシネマの発起人の1人である、唐品知浩さんはco-ba CHOFUのオープン時からの会員。

週3回はco-ba CHOFUに来て業務を行うという唐品さん。調布在住で、小学生の子どもをもつお父さんでもあります

「地元である調布市は『映画の街』といわれているのに、市内に1軒も映画館がありません。どうしたら映画の街を盛り上げられるのかを市民と市役所の職員と一緒にブレスト会議をしました。そのなかで、屋外で映画を観るのはどうかというアイデアにたどり着いたんです。co-baのメンバーで仕事を分担し、専用サイトをつくったり、京王線の高架下である河川敷で映画上映を行う許可を得たりして、これまでに調布では3回上映会を開催してきました」(唐品さん)

なかなか映画館に行きづらい小さい子ども連れのファミリー層や、映画好きの女性グルーブなど、幅広い層に支持され、調布以外でも「ねぶくろシネマ」の活動は広がっています。今ではそのメンバーで会社を立ち上げ、「ねぶくろシネマ」以外の事業も行っているそうです。

会員以外も気軽に使える「ドロップイン」

筆者もフリーランスのライターとして働き始めた数年前、シェアオフィスの存在を知り、情報を集めていました。当時はシェアオフィスがはやり始めた頃で、渋谷を中心に、おしゃれなコワーキングスペースなどが続々と登場していました。その時の印象は、「敷居が高そう・・・・・・」というイメージ。しかし、今回実際に取材してみたところ、とても過ごしやすく、安心して仕事ができる場だと感じました。

「副業を持っているサラリーマンの方が、メインの仕事のあとに夜まで活用したり、出張の多い中小企業の方がサブオフィスとして使ったり、学生の方が起業の勉強のために活用されたりといった、さまざまな活用方法があります」と市川さん。

非営利型株式会社Polarisの取締役ファウンダーの市川望美さん。co-ba CHOFU以外にも、「cococi」など3カ所のシェアワークスペースを運営しています

コワーキングスペースでは、シェアを活性化させる方法として会員同士の交流やワークショップなど、さまざまなイベントが開催されています。co-ba CHOFUでも、親睦会をはじめとしたイベントを毎月企画しているそう。

また、月額の会員以外にも、1日の数時間だけ単発で利用する「ドロップイン」というサービスも用意されています。利用料金は、オフィスの場所や設備、内容などによって異なりますが、co-ba CHOFUは月額会員が6,800円、ドロップインはなんと3時間500円という、お手頃な価格なのもうれしい! 1杯のコーヒー代で、通信環境の整った綺麗なワークスペースを利用できてしまうのです。

「パソコンがあればどこでも仕事ができる」という方は、ぜひコワーキングスペースやシェアオフィスを利用してみてはいかがでしょうか。

文:相川いずみ