2016/09/09
英語の先生はロボット! 会話を通してお互いが成長するAI
子どものころ、未来の世界を描いた映画やアニメに登場する、友達のようにコミュニケーションがとれるロボットを見て、心踊らせた人は多いだろう。現在、形状や性能は違えど、「ロボットと暮らす」「ロボットと働く」ことが、もはや珍しいことではなくなった。
全自動の掃除機や、コミュニケーションを楽しむコンパニオンロボットなど、その種類は多岐にわたるが、なかでも人工知能(Artificial Intelligence=AI)を搭載したロボット開発の発展は目まぐるしく、注目されている事業のひとつだ。その流れは世界各国で起きており、新製品や新技術を発表する場も拡大している。
なかでも、毎年アメリカで開催される「SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)」の「アクセラレーター・コンペティション」において、470以上の参加企業のなかから、アメリカ生まれ、日本育ちのAIを搭載したロボットがファイナリストに選出された。「アクセラレーター・コンペティション」は、TwitterやSiriなども、世界的なサービスに成長するきっかけになったといわれているイベントだ。
ユーザーの趣味思考や表情をキャッチして"友だちのように"会話するロボット
世界が注目するそのロボットは、アメリカに拠点を置く人工知能開発スタートアップ、AKA LLCが発表した小型ロボット「Musio」だ。機械学習の専門家と、自然言語研究家の共同開発によって生まれ、AIを搭載している。Musioは最先端の人工知能技術による会話エンジンと感情エンジンを搭載しており、人間のように見る、聞く、考える、感じる、話すことができるのが特徴だ。自ら考え、友だちのような自然なコミュニケーションができるという。
たとえば、日常的な会話を通じて、ユーザーの好きな食べ物や趣味などの会話内容を学習し、オリジナルの Musio に成長させていくことができる。まさに、友だちのようにコミュニケーションを楽しむことができるロボットなのだ。
英語学習ロボットとして展開
またMusioは、英語学習ロボットとしての活躍も期待されている。勉強方法は大きく分けてふたつ。ひとつは会話に基づく学習のため、リスニングやその場に応じたスピーキングの練習などを通じて、自然な英語力を身につけられる英会話学習。
もうひとつは、レベルや目的にあった教材を使用して勉強を行う、専用教材による英語学習だ。英会話が苦手な方や、子ども向けの教材、TOEICやビジネス英語対策の教材まで、幅広いユーザーを対象としており、家族での使用も可能。さらに、誤った発音や文法表現に反応し、間違いを正してくれるといった機能も。学習成果はアプリが記録し、ユーザーのレベルを把握することも可能という。
「人と話すのは恥ずかしい」「英会話教室に通う時間がない」などで、英会話学習へのハードルが高いと感じてしまう人もいるだろう。Musioなら、気軽に話せる優秀なパートナーとして、自宅で最適な学習環境を得ることができるのだ。
AIロボットと人間の共存に向けて
こうした独自のAIを搭載し、コミュニケーションをとるごとに賢くなる小さな相棒は、私たちの生活にどのような影響をもたらしてくれるのか。今後の展開について、AKAマーケティング担当の大岩さんにお話をうかがった。
「いちばん重要なのは、AIを搭載したロボットが、人間の心のよりどころとなれる存在に成長していくことだと考えています。人間と共存し、現在よりも便利で、快適な生活を提供できるようになるうえ、経験や思考、感情までもシェアすることのできる、"新しい友達のかたち"をつくっていきたいと考えています」
そうしたことの実現に向けて、2017年には、IoTデバイスやインターネットサービスの連携、日本語対応の開発などを進め、家庭生活をさまざまな面からサポートする、ホームアシスタントロボットとしての機能を拡大。Musioが家庭内にある家電や各種センサーと連携し、ユーザーはMusioを介してそれらを遠隔・音声操作できるようにもなるという。
さらに、人工知能技術を活用し、連携デバイスから収集したデータを分析・学習することで、ユーザーにとって最適な家庭環境を自動調整したり、生活スタイルに関するアドバイスを行うといった機能も構築する予定。
また、英語教育の現場である学校や塾での授業、企業内英語学習への導入も計画中。実際に、同志社中学校や、学習塾の成基学園へのパイロット導入予定があり、英語授業における教育効果の実証実験も進めているという。
一家に1Musio
2016年に高島屋にて開催された、約100体のロボットが一堂に揃う「暮らしとロボット展」では、世界初となるオフライン店舗での事前予約を実施。家族連れの来場客から好評の声が多くあがったとか。販売前にもかかわらず、注目を集めているMusio。今後の活躍に期待しよう。
文:長浜優奈(EditReal)