2016/08/23
ソニーがスマートウォッチに一石を投じた『wena wrist』が、クラウドファンディングを経て商品化
Apple社がApple Watchを発表してからというもの、各社からスマートウォッチの新商品が次々と発表されているが、身に着けることが前提となるウエアラブルデバイスだからこそ、デザイン性も気にしたいところだ。"いかにも"なデザインはスマートではないし、ビジネススーツにもTシャツにも、さらっと合わせられるシンプルさは外せないポイントだ。
そこで注目したいのは、ソニーの新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program」から生まれた「wena wrist」というウエアラブルデバイス。ソニーの運営するクラウドファンディングとEコマースのサイト「First Flight」にてクラウドファンディングを実施し、1億円を超える支援を受けて2016年6月末に販売を開始した。なんと、半日程度でクラウドファンディングを成功させるほど注目度の高い「wena wrist」の魅力とは?
あくまでも「ウォッチ」
こちらのスマートウォッチがユニークなのは、比重が「スマート」ではなく、「ウォッチ」に置かれていることだろう。ヘッド部はあくまで「アナログウォッチ」で、ムーブメントを含めて設計と製造はシチズンが行っている。ピンやバックルの構造、使用されているネジまですべて通常の腕時計の慣習に従っており、「腕時計であること」へのこだわりが強く感じられる。
いわゆる「未来的」なデザインのスマートウォッチが主流のなか、ビジネスシーンでも違和感なく馴染むデザインはかえって新鮮だし、その完成度の高さは写真を見てもらえればわかるだろう。
さて、ではどこらへんに「スマート」は隠されているのだろう? 実はこの「wena wrist」、スマホとの連動といった機能はすべてバンド部に搭載されている。それも、「持ち物を減らせるか、動作を減らせるか」を基準に考え、3つに絞られた機能だ。
バンドに隠された3つの機能性
バンド部に搭載された3つの機能はこちら。
①電子マネー機能
電子マネーに使われているFeliCa機能を搭載。カバンから財布を取り出さなくても手首をかざすだけで会計できる。
②電話やメールの着信、SNSの更新などを通知
Bluetooth接続したスマートフォンと連動。バンドのバックル部分に埋め込まれたLEDの光と振動で各種の通知をしてくれる。
③活動量計が搭載
専用アプリと連携して、1日の歩数や消費カロリーの確認が可能。また、スマートフォンと連動しながら上記の機能を1日8時間利用しても、約1週間の連続使用に耐える。意外と面倒な充電作業も1週間に1度ならば、苦になることもなさそうだ。
本当の意味でのスマートな「スマートウォッチ」
「wena wrist」は、他社のスマートウォッチと比べると搭載機能が少ない。思い切った「機能の断捨離」だが、そのおかげで、デザインと機能性のベストバランスを獲得したようだ。なにしろ腕時計としてのクオリティが高く、デザインがかっこいい。現実に求められているスマートウォッチの「カタチ」とは、多機能性や拡張性の追求だけなのか? 「wena wrist」は今後のスマートウォッチのあり方に、一石を投じることになりそうだ。
文:長浜優奈/中澤範龍(EditReal)