2015/08/10

これからのお盆はデジタル墓参り? 意外と困る『お墓』の問題

皆さんは、お盆をどのように過ごしているだろうか? 待ちに待った長期休暇――遠くへ遊びに行く人、田舎へ帰省する人もいるだろう。北関東のど田舎に生まれた筆者にとって、お盆は毎年帰省するもので、キュウリとナスに割り箸を刺して作った馬と牛が仏壇の前にあり、お墓まで歩いて行き、お線香と提灯に火をつけて戻ってくるのが8月13日、お迎えの日の恒例だ。

しかし聞くところによると、都会の人はそうでもないらしい。個人の思いや家族の考え方にもよるだろうが、7回忌などといった記念の際(メモリアル)にしか墓参りをしないという人も多いという。都心のお墓は、自分の知っているそれと大きく違う。東京でも高尾山などには、山林に囲まれた"伝統的な"墓地があるだろうし、「祐天寺」などの寺院の多い地域には霊園が併設されている。都心にも青山霊園や雑司が谷霊園、谷中霊園といった有名なものはあるが、どこもいっぱいで、お墓の空きはほとんどないという。

そこで現在、東京・都心エリアを中心に、"伝統的なお墓"のスタイルにとらわれない画期的なお墓が誕生しているらしい。遺骨の一時保管所であった納骨堂がハイテク化した、参拝堂・葬儀場・墓石など、一連の手続きをする場所がひとつの建物に集約した新時代のお墓だ。

たとえば、品川区の不動前にある「ひかり陵苑」では、ICカードをかざすことで厨子(ずし)と呼ばれる骨壺などを収める箱が移動し、自分の家のものが"お墓"にセットされる。これなら、厨子の数だけその家の「お墓」が用意できることになる。

ICカードをかざすとお墓に厨子がセットされ扉が開く

こうした形態の納骨堂は都心を中心にいくつかあり、そのメリットは、アクセスが良くお墓参りが楽なこと、墓石の購入・用地の購入・お墓のメンテナンス、さらにお墓を破棄・返却する際の費用が安くなることだ。田舎にあるお墓を移し替える人も少なくないという。また、同じ建物内に客殿なども併設されており、法事なども行ってくれる。この手軽さは、都心に住む人には便利かもしれない。

田舎では、お墓は地区の人々が交代で管理し、用地を購入し、お坊さんを呼んで葬儀をあげ、火葬し、墓石も買い、折に触れて線香や花などを供え、末代まできちんと管理していかなければならない。手間も費用も、それなりに覚悟しなくてはいけない。都心でこういった新しいタイプのお墓が誕生しているのは、ある意味必然といえるのかもしれない。

一方、墓参り自体をデジタルで済ませてしまおうというものもある。かつては、ある同じような納骨堂でもデジタル墓参りサービスを行っていた。しかし、インターネット障害とサービス利用者数の関係で、現在は行っていないという。

さらには......iPhoneのアプリでは、お墓参りをバーチャル体験できるものがある。

「お墓参り」をモバイル化したアプリ「BOSAN -墓参-」だ。これは名を入力することで、「○○家の墓」に線香を上げたり、水を掛けたりできる。つまり、一種の疑似体験アプリだが、iOSやAndroidなど、共通プラットフォーム上ならば、もしかすると今後はタブレットデバイス上での「デジタル墓参り」が一般化する未来がやってくるのかもしれない。

お盆の時期に、自分の住む土地のお墓のあり方とそのお参り方法、そして先祖の方々に思いを馳せてみるのも悪くないだろう。いつかは自分も、お墓に眠ることになるのだから。

文:クロサキアキヒロ