2015/06/10

スマートフォンでタブレットを充電? ワイヤレス充電に一石を投じる新技術『Wireless PowerShare™』

「Wireless PowerShare™」とは、アメリカのIntegrated Device Technology(IDT)社が開発した相互無線給電技術のことだ。リリースによると、まず「レシーバーとしてもトランスミッターとしても使えるマルチモード・多機能のチップ」とあり、つまりは受信と発信両方の機能を持っているということ。仮にスマートフォンとタブレットにこの技術を搭載すれば、スマホからタブレットに充電することも、タブレットからスマホに充電することもできるようになるのである。中でも注目すべきは、ワイヤレスであるにもかかわらず、両者をまったく接続することなく充電できることだろう。例えば、タブレットのそばにスマホを置くだけで、お互いに充電することができるというのだ。

実は、ワイヤレス充電自体は決して新しいものではない。電動歯ブラシやコードレスフォン、電気シェーバーなどの充電は、実際にはワイヤレスで行われている。このワイヤレス充電の仕組みを「電磁誘導方式」といい、送電側(充電器)のコイルに電流を流し、受電側(歯ブラシなど)のコイルをきちんと向き合わせることで電力が供給される方式のこと。この「きちんと向き合わせる」ことが重要で、歯ブラシを充電するときに充電器にカチッとセットするのは、お互いのコイルを「きちんと向き合わせる」ために固定しているのである。肝心の充電自体は、非常に近い距離ながら、ワイヤレスで行われているのだ。

そして、もう一つの主要なワイヤレス充電の仕組みが「磁界共鳴方式」だ。携帯電話をトレー式の充電装置に置くだけで充電できるのが、まさにそれである。大まかに言うと、送電側(充電器)のコイルと受電側(携帯電話)のコンデンサーを同じ周波数で揺らし、共振現象を起こして電力をやりとりする仕組み。コイルの向きにこだわる必要がないので、ポンと置くだけで充電できる。

ワイヤレス充電は超便利なのだから、もっともっと普及してほしい。にもかかわらず、今のところあまり普及していない理由には、規格が統一されていないという背景があるようだ。規格が違えば、当然、充電できない。携帯電話を置くトレーに電動歯ブラシを載せても、当然、充電はできない。

今回の「Wireless PowerShare™」が画期的なのは、主要な規格である「電磁誘導方式」と「磁界共鳴方式」の両方に対応した点。つまり、例えるならば、携帯電話用充電トレーに電動歯ブラシを乗せれば充電できることになるのだ。のみならず、送電と受電の両方の機能を持ち合わせているわけだから、これまた例えるならば......電動歯ブラシの横に携帯電話を置いておけば、充電されている、ということなのである。

こんなすごい技術だが、今のところはひとまず発表されたばかり。スマホにタブレットに「時計」に「メガネ」と、携帯するデバイスが増えてゆく未来に向けて、ぜひとも早い段階での実用化、製品化を期待したい。

文:武田篤典