2017/12/15
コナンにルフィ、ジブリまで! モノマネ芸人・石出奈々子さんのネタづくりの裏側とは?
いまどきのネットを騒がせている女性たちを紹介する「ネット系女子!」。今回はモノマネ芸人の石出奈々子さん。
2009年からお笑い芸人として活動を開始。名探偵コナンやルフィ、aiko、最近ではジブリを取り入れたモノマネ芸で、今年のR-1グランプリではファイナルステージまで上り詰め、その愛くるしいルックスと、不思議な魅力でブレイク中の女性芸人。
そんな石出さんに、モノマネを始めた経緯やネタの原点を伺いました。
もともとは安達祐実のような女優になりたかった!?
――今年のR-1グランプリでは決勝進出、3位入賞と注目が集まっていますが、R-1でも披露したようなモノマネはいつから始めたのでしょうか?
「2011年頃からですね。最初からモノマネをやっていたわけではなくて、事務所に入ったときは白、赤、茶の全身タイツを着たネタをやってました。たとえば、赤タイツを着たときは『臓器マン』に扮して『レッツ臓器提供!』って体に貼った臓器を剥がして人にあげるとか(笑)」
――それはテレビでは放映できなさそうですね(笑)
「あとは、コンビを組んだり、フリップ芸をしたりと色々やってましたね。その後、とんねるずさんの『細かすぎて伝わらないモノマネ選手権』のオーディションがあって、それに受かったので、『モノマネが向いてるのかな』って思ったんですね。色々やっていくうちに結果が出たのが、モノマネだったという感じです」
――ちなみに、全身タイツネタはどうやって生まれたのでしょう。
「うーん、やっぱり形態模写みたいなことがしたかったんですよね。小さい頃から先生のモノマネとか得意でしたし。無意識ですけど、その頃から才能を秘めていたのかもしれません(笑)」
――芸能界に入ったきっかけは、芸人になるためではなく女優になるためだとか。
「そうなんです。物心ついたときから女優になりたいと思っていました。安達祐実さんが出演されていた『家なき子』を見て、『私これになりたい!』って。それがなぜかお笑いになっちゃいました(笑)」
――なぜ、お笑いの道に進もうと?
「大学卒業後、どんなかたちでもいいからテレビに関わりたい! と思って、テレビ番組のADとして1年間働いていたんです。かなりハードな仕事だったので、会議の時にホワイトボードの前で考えるふりしながら寝たこともありました(笑)。でも、裏方の仕事をやっていると、益々『出る側になりたい!』っていう思いが強くなっていって。
ちょうどその頃、養成所のスクール生募集のポスターを見かけたんです。『君も第二のしょこたんにならないか!?』みたいなキャッチコピーが書かれていて。それに惹かれて、私も第二のしょこたんになりたいと思って応募したら、タレントの養成所ではなくお笑いの養成所だった(笑)。でもお笑いをやった方が、結果的にチャンスが多かったと思うので結果よし、ということで」
ジブリネタはそれ“っぽい”ことが重要
――それから、芸能人やアイドルなど実在の人物のモノマネをはじめ、コナンやルフィなどアニメ作品のモノマネ、ジブリ作品のヒロインネタで徐々に世間に知られるようになっていきましたね。
「コナンやルフィのモノマネは、周りから地声が似てるって言われたので、やってみたらできたという感じですね。ちょうど中間の声にいるらしくて。知人が開いたイベントきっかけで、ルフィの声優の田中真弓さんにお会いしたときも、『ベースがコナン寄りのルフィだね』って仰っていただきました」
――ネタはどうやって考えているのでしょうか。
「もともとコナンやワンピース、ジブリ作品は大好きで、たとえばコナンだったら、『コナンってこういうところあるよね』というところからネタを考えています。ジブリのネタも、特定の作品を真似ているわけではなく、いろいろな作品を混ぜて、法の抜け道じゃないですけど、なんとなくその場面“っぽい”ことをやるように心がけています」
――ジブリネタは特定の作品を真似しているわけではないとのことですが、モチーフはどういう風に?
「これも色々ミックスされていますが、『魔女の宅急便』のキキや、『となりのトトロ』のメイやサツキ、『耳をすませば』の雫、『紅の豚』のフィオなど、主に宮崎駿監督の作品に登場する女の子をイメージしています。そこにたまに、『もののけ姫』や『風の谷のナウシカ』といった深刻な感じを混ぜる、と(笑)。だいたい明るくて元気いっぱい、失敗してもまた頑張るみたいなヒロイン像ですね。弱いけど、強いみたいな。
それらのヒロインたちを混ぜて混ぜて、あとは自由にやる。あくまで、ジブリのヒロイン“っぽい”というところがミソなんです」
――では、ネタ中にある「ふしぎぃ〜」の部分もオリジナル?
「そう、本当はないんですよ。『天空の城ラピュタ』でシータとパズーが爆笑して寝転がって、スッ……と静かになるシーンがありまして、それにジブリのいろんなヒロインが言っている『不思議』というセリフを混ぜてできたものです。『ジブリのなにかの作品にあるセリフだろう』って思ってもらえたら、それはもう大成功ですね(笑)」
ネタの創作はスマホから
――今年のR-1では素晴らしい成績を残しました。
「初戦でかなり笑ってもらえたので手応えはありました。ただ、ファイナルステージで使うはずの小物が本番でひとつ失くなっちゃって。ちょっと焦りましたけど、咄嗟にボケを1個削って対応しました。ネタで使っているBGMが曲と曲をつなげているもので、タイミングを間違えるとズレちゃうんですよ。だから、急なハプニングには対応しづらいという諸刃の剣でもあります」
――少しもミスれない状況で、すべて決め込んでやっているんですね。練習はどうやって?
「スマホのボイスメモに入れた音楽を流して、ネタを練習したりしています。あと、モノマネの練習をするときも自分だけじゃわからないので、声を録音して聞き直して似てるかチェックしたり。BGMはパソコンのフリーソフトを使って、自分のしゃべるタイミングに合わせて曲を繋いでます。それを流して、スマホで直接録音してます。すいませんアナログで(笑)。普通はデータ移したりできるんですよね、きっと(笑)」
――よく使うアプリはなんですか?
「『Film Story』とか。動画が簡単に編集できるアプリです。スマホで撮影した動画を取り込んで編集して、Twitterや自分のYouTubeチャンネルにアップしてます。まあ、YouTubeの方はぜんぜん再生されてないんですけどね」
――YouTubeチャンネルを開設しようと思ったのはなぜですか?
「テレビだと、番組の方針によって求められるネタがあるので、100%自分の思った通りにはできないんです。でも、アニメネタの原作には、やっぱり愛が強いファンがいて、ファンからすると『このキャラはこんなこと言わない』っていう反応もあるんですね。お笑いとして出す以上、ネタを誇張する必要があるのはわかっていますし、ファンの方にも、テレビだけだとそう思われてしまうのは仕方ないと思うんです。
YouTubeのチャンネルでは本当はこういうのがやりたいんだよっていうネタをアップしたりしているので、動画を見てもらえれば本当はちゃんと作品知っているんだなっていうのがわかってもらえるんじゃないかって思っています」
――本当にやりたいことを我慢せず、ネットに発表の場を設けているのですね。
「そうですね。でもツールとしていちばん使っているのはTwitterかもしれません。テレビに出たあとは必ずエゴサーチしちゃいますし、ネタの感想をもらえると嬉しいですね。それに、有名人の方が面白かったとか言ってくださるのもSNSならではだと思います。GLAYのTERUさんに『面白い』ってリプライをもらったり、私がモノマネしているAKB48の荻野由佳さんにSNSを通して存在を知ってもらって、フォローしあったり。SNSがなかったら、直接連絡もらうことって多分ないですよね」
――今の時代だからこそ生まれる交流ですね。最後に、今後の目標をお聞かせください。
「2018年もR-1に出場して、決勝進出したいです。知名度をあげて、ゆくゆくはジブリ作品に関われることができたら本当に嬉しいですね。もしくは、2020年オープン予定の『ジブリパーク』がオープンする時にテープカットの役を務めさせていただきたいです!(笑)」
自分のやりたいことに従い、道を切り開いてきた石出さん。テレビでは誇張されがちなアニメネタですが、お話を伺っていると石出さん自身、原作への愛から生まれたものだということが伝わってきました。今後の彼女に要注目です!
文:服部桃子(アート・サプライ)
撮影:稲田 平
石出奈々子(いしで・ななこ)
1984年生まれ。千葉県出身。明治学院大学英文科卒業後、バラエティ番組のADを経てお笑い芸人に。1人コント、モノマネを中心に活動中。