2017/06/21
【ネット系女子!】 訪問した数は1,000スポット越え! 『珍スポトラベラー』金原みわさん
いまどきのネットを騒がせている女性たちを紹介する「ネット系女子!」。21回目は珍スポットトラベラーの金原みわさん。
珍妙なスポットを巡るために日本全国を飛び回り、時には足を踏み入れるのを躊躇するような怪しい場所にも嬉々として乗り込んでいく、バイタリティ溢れる金原さん。
そこで出会った不思議な場所や、そこで暮らす人を優しく、そして情感漂う文体で綴ったブログ「金原みわの珍スポット旅行者TiN.」のレポート記事がネットを中心に評判を呼び、現在では珍スポ情報専門のYouTubeチャンネルも開設。2016年には訪れた珍スポットをまとめた書籍『さいはて紀行』(シカク出版)を出版し、珍スポ界の重鎮である写真家、文筆家の都築響一さんから「珍スポットのディスティニー・チャイルド」と絶賛されるほど、各方面から高い評価を受けています。
ライターや関西ラジオのパーソナリティも務め、今年6月には2冊目となる『日本昭和珍スポット大全』(辰巳出版)を出版し、幅広く活躍している金原さんに、珍スポットの“怪しい”魅力をうかがいました。
初体験の珍スポで衝撃を受けた
――“珍スポット”とはどんな場所を指すのでしょうか。
「私は『珍しくてワクワクする場所』を総じて“珍スポット” もしくは “珍スポ” と呼んでいます。でも、珍スポ界隈では人によって定義が異なりますね」
――そんなアングラな界隈が・・・・・・。珍スポに目覚めたのはいつから?
「もともと旅行好きでいろんなところに行っていましたが、珍スポの目覚めは結構遅くて、社会人になってからです。会社の友人と兵庫県の淡路島に旅行に行ったとき、その場のノリで『ナゾのパラダイス』という秘宝館に行くことになって。笑っちゃうくらい下ネタ満載の施設なんですけど、私はそこで『こんな世界があるんだ。面白い!』ってビビッと衝撃を受けたんです。それから、もっといろんな珍スポを見てみたいと思って珍スポ巡りを始めました」
――今は仕事を辞めて旅をしているそうですね。
「はい。以前は、平日は普通に働いて土日で珍スポに行くという強行スケジュールでした。夜行バスで現地にガーッといって、急ぎ足で巡って、また夜行バスでガーッと大阪に戻って、次の日は朝からまた仕事という感じ。
珍スポを巡ることが生きる活力でもあったんですけど、珍スポ関連のイベントをしたり記事を書いたりしていると結構しんどくて、体を壊す寸前までいっちゃって。だから、珍スポ巡りを辞め・・・・・・ずに、仕事を辞めました(笑)」
――珍スポにかける情熱がすごいですね。魅力はどういったところでしょうか。
「珍スポ自体の面白さはもちろんですけど、やっぱり実際に行って現地の人とお話して、珍スポットに対する思い入れや考え方を聞けるところですね。その人の人生も垣間見えて、とても興味深いです。
以前、高知県のとある山奥で営業している小さな映画館に訪れたことがあって。そこの館長さんは一度地元を離れたものの、跡を継ぐために戻ってきたそうです。で、この映画館では、上映前に館長さんが生演奏でライブを行うんです。私が行ったときは、私しか客がいなかったのでマンツーマンで歌ってくれて。館長さんのお話しを聞いたあとに聴くフォークソングは、胸にぐっと迫るものがありました」
今まで行った珍スポは1,000箇所以上
――今までにどれくらい珍スポを巡ったんですか?
「去年の春に会社を辞めて、それからずっと珍スポを巡る旅をしているので正確にはわかりませんが、1,000箇所はゆうに超えていると思います」
――すごいですね! いつもどうやって巡っているんですか?
「基本は軽自動車で全国をまわってます。それで、現地にあった面白そうな宿に泊まったり、シブい温泉に入ったり、地元の純喫茶や居酒屋で食事をとったりですね。でも、現地に行った結果、いい感じの宿や食事処が見つからないと、なにも食べないし、車中泊をして過ごしています。やっぱり旅に出たからには地元のものを楽しみたいので。これは完全に自分ルールなんですけど、 って思ってます(笑)」
――旅行中の通信環境はどうしていますか?
「旅行中でもパソコンでブログや記事を書きたいので、コンビニでコーヒーを買ったついでにWi-Fiに繋いだり、スマホのデザリング機能を使ってネットに接続したりしています。パソコンや携帯は車のシガーソケットから充電できるし、あまり不便な思いはしていませんね」
――珍スポ旅によく使うアプリはありますか?
「駐車場予約アプリ『akippa』はよく使いますね。あと、珍スポットや廃墟が調べられる『ワンダーJAPAN』も結構チェックしています。すぐ見られるように、旅に必要なアプリは『旅行』でまとめています」
――車中泊っていろいろ大変そうなイメージがありますが・・・・・・。
「最初は体が慣れなくて具合が悪くなったこともありましたけど、今はもう全然ですね。いつも、軽自動車の後ろに寝袋とマットレスを敷いて寝ています。でもまあ、襲われたら怖いなって思いもあるので、ダッシュボードにドライブインで300円で買った天狗と狐のお面を置いてます。車上荒らしも『このクルマ、ヤベェな』って思って手を出さないんじゃないかって思って(笑)。そのおかげかわかりませんが、危ない目にあったことはないんですよ」
――魔除け的な(笑)。ところで、珍スポットはいつもどうやって見つけているんですか?
「旅している途中で偶然見つけたり、事前に本やネットで調べたりとさまざまです。でも、前情報を知りすぎると現地に行ったときに感動が薄れちゃうので、最近はあまり調べすぎないようにしています。やっぱり初めて見たときの『なにこれ、すごい!』というワクワクする気持ちを大事にしたいですから」
「珍スポレポートで少しでも恩返しができれば嬉しい」
――ブログや記事を書くのも、その感動を人に伝えたいからでしょうか。
「そうですね。特に、誰も知らないような珍スポだったりすると、その良さを誰かに知ってほしいって思うんです。だから、こんな面白い場所や人がいるってことを伝えたくて文字に起こしています。それで、私の記事を見た誰かが珍スポに行ってお金を使ってくれれば、その人の助けにもなる。微力だけれど良い経済の循環が作れたらいいなあって思っています」
――恩返しですね。
「自分が行きたいから行っているだけですが、それでも少しでも恩返しできたら、という気持ちは確かにあります。でも、その場所にマスコミが押し寄せると、現地の人が対処しきれなくてパンクしちゃうケースもあって。こちらが応援しても、結果として相手の迷惑になる場合もあるので、そこはすごく難しいんです」
――とはいえ、金原さんの書いた記事を見れば喜んでくれる人もいるのではないでしょうか。
「そうですね。珍スポを管理していたり、そこで作品を生み出している人って、本人は価値のあることをしていると思っていないことが多くて。日常の一部として、ごく普通のことをしているという感じですね。なんなら近所の人にちょっと敬遠されている場合もありますし・・・・・・。だから、感動を素直に伝えたり、記事を書くとすごく喜んでくれます。最近も、本を執筆するにあたってとある珍スポットに連絡したら、お礼として立派なシイタケをたくさんもらいました(笑)」
珍スポを巡る旅の終着点は?
――珍スポ旅に終わりはありますか?
「はい。去年旅を始めてから、『日本国内でここは行っておこう』っていう珍スポットは大体訪れていて、もう旅も佳境に入っています。年内には旅が終わりそうです」
――最終的にはどこに行く予定ですか?
「北海道ですね。唯一、未踏の地なんです。そこにある『蟹神社』や『網走刑務所』とか、いろいろ巡って最後になるかなって思ってます。最近YouTubeでチャンネル開設をしたので、そこでも旅の様子を配信したいですね」
――その後はどうなるんでしょう?
「どうなっちゃうんだろう・・・・・・。まだ、全然わかりません。でも、最近まで執筆活動で家にこもりっぱなしでしたが、早く旅に出たくてたまりませんでした。だから、日本を終えたとしても、次は海外とか行っちゃうかもしれません。まだ見たことがない世界を思うと、どうしてもじっとしていられない性分なので(笑)」
「大人が子どもに近寄らないように言うような場所こそ、面白いと思うんです」と語る金原さん。「おかしいから、ちょっと変だから」と敬遠しがちな場所も、のぞいてみれば未知の世界が広がっているかもしれません。愛が詰まった金原さんのレポートを読んで、自分だけの“珍スポット”を探してみたくなりました。
文:服部桃子(アート・サプライ)
撮影:稲田 平
金原みわ(かねはらみわ)
珍スポトラベラーとして全国の珍しい人・モノ・場所を巡ってレポートしている。『Meets Regional』『ジモコロ』『ROADSIDER's weekly』などに連載を持つ。