2017/02/21

【紳士のSNS講座】第21回 有名作家の新作小説発売を喜ぶことで、インテリなオレをお自慢する

2月の末といえば、そう、今年の場合は文学です。

毎年、世界的文学賞の最有力候補として話題になる、「あの」日本人作家の書き下ろし長編が出版されるからです。ちなみに前回が、2013年4月ですから、約4年ぶり。世界的スポーツの祭典とか世界的サッカーの祭典と同じ。そしてこの2者よりも、間違いなく趣味性が高い。

そんな「作家さんの新作」をよりどころにすることで、今回は、さまざまな「自分お自慢」を盛り込むことになります。

今回のポイントは、ハルキさんが好きだと言いつつも、実は周辺事情のみしかつづっていないところ。なんでもない日常生活に、今回たまたま「ハルキさんの新作」という「石」がドスンと投げ込まれたことのみを語っているのです。そこで生じる波紋。そしてその波紋を見てリアクションするのは自分自身。――いわばこれ、「メタお自慢」なのです。「石」自体についてはなにも語っていないのですから、結局、「石」の種類は問いません。

では作例を見ていきましょう。「ハルキさんの小説」にあたる部分に、「ニューアルバム」とか「印象派のあの絵」とか「5年ぶりのライブツアー」とか、色々なアイテムを代入しつつ読むと味わい深いですよ。

■ポイント※①不用意に浮き足立つオレ。日常のちゃんとしたオレ

とにかくまずウキウキ感を前面に出しましょう。今回はおもむろに「徹夜宣言」から始めています。子どもがよく大みそかとかに「オレ、朝まで起きてるかんね」と張り切って宣言してしまう感じに近づきましょう。そのぐらい浮き足立っているのだ、という表現ですね。

初めてこの人の投稿を見た人への配慮も完璧で、「そもそも普段の自分はそういうことはしない人」ということを端的に表します。仕事上ものすごくしっかりした人が、ある事件を機にこんな風になってしまっているわけです。「新作が出たんだぜ」という若干アウトローっぽい語尾も、盛り上がりの発露としてピッタンコ。

タイムマネジメントうんぬんは、普段のオレの自己紹介。「ことが起こって浮き足立ってる」自分との対比です。でも、もちろんここでは「普段の俺はちゃんとしてるんだぜ」とお自慢しているわけです。あ、「オール」と「完徹」はどっちを使うか迷いました。抵抗のないほうでどうぞ。

■ポイント※②"買う人"たちのなかで上位をキープし、さらに熱を盛る

今回のケースは出版界にとっても何年かに一度の"祭り"です。書店では、平積みを天高く伸ばした祈りの塔のようなディスプレイが見られることでしょう。また出勤前の朝の情報番組でも「本日発売」のニュースは流れる。深夜11時59分50秒からの、発売へのカウントダウンの映像とか。

そんな時だからこそワイドショーの中継に見切れることがおそらく最大のお自慢。現場の書店に参戦できるエリアにお住まいで、作家への熱意があるならぜひ! お自慢投稿も「寝不足です。社会人失格です」のような一文から始め、カウントダウンの顛末を書いてから「完徹」につなげてもいいでしょう。

もちろん書店での予約購入の告白で、テレビを見て衝動買いした層とは差別化できています。しかも、買った本を取引先に持参するという作戦も展開。これで「〇〇社のタケダさんといえばハルキ好き」という評価をリアルでも獲得。SNS投稿へのアシストとしても機能しています。

■ポイント※③投稿のタイミングと、「あるある」で勝負

今回ナニゲにもっとも重要なのは「いつ投稿するか」。発売日がベスト。遅れてもせいぜい1日。その場合でも、「買ったのは発売日だった」「忙しくて投稿できなかった」という背景を明示しましょう。

というのも、先にも書きましたが、この投稿が一切中身に触れていないからです。下手したら即日レビューをアップする猛者が現れます。すると、彼最大の価値である「買った人のなかでは熱心」というアドバンテージが危うい領域に。しかもちゃんとした読解力と、それを表現する文章力も必要になり、「にわか」には投稿できなくなります。なので、とのかく急いで。

ラスト数行に作家を彷彿させる「あるある」を散りばめました。非常にベタですけど!

絵:Shu-Thang Grafix

講師:武田篤典

何気ない所作のなかにある「モテ」を顕在化し、好評を博した『スマートモテリーマン講座』著者。SNSなど各種コミュニケーションにおける礼儀作法を研究する「武田流万(よろず)礼法」家元。

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