2016/09/21

【ICT×MUSIC #7】iPhoneでネットにはまり、15歳でニコ動に投稿した『DAOKO』のニコ動発、メジャーデビューのストーリー

こんにちは、J-WAVEの小松です! インターネットや通信と音楽の新しい可能性を探る連載企画「ICT×MUSIC」。第7回は、ミレニアル世代を代表する現在19歳の女性ラップシンガー、DAOKOをピックアップ。気になるデジタル事情を探ったインタビューも必読です!

1997年生まれのデジタルネイティブ世代が奏でるサウンド

さて、"ゆとり"だなんだと言われるようになって早何年。今年はとうとうドラマでも取り上げられ話題となりましたが、ゆとり世代ブームはピークな雰囲気。◯◯世代や、◯◯女、◯◯オタのように何なんでも括ってしまうのはあまり好きではないですが、みなさんは"ミレニアル世代"をご存知でしょうか? 極めて若いうちからインターネットに慣れ親しみ、SNSなどを利用した情報の収集・発信を得意とする、いわゆるデジタルネイティブと呼ばれる世代です。これまでに当連載で取り上げてきた岡崎体育Uruぼくのりりっくのぼうよみもこの世代です。そして、今回ピックアップするDAOKOもまさに"ミレニアルアーティスト"。

まずは、昨年3月の高校卒業と同時にメジャーデビューを果たした1stアルバム『DAOKO』の1曲、「水星」をお聴きください。こちらもまたミレニアル世代を代表するトラックメイカー、tofubeatsの代表曲のリアレンジとして大きな話題となり、J-WAVEでもよくオンエアされました。

気鋭のトラックメイカーたちと制作した、懐かしくも新しいキラキラしたビートに合わせたアンニュイなラップが特徴的で、一度聴いたら頭から離れなくなる、DAOKOというジャンルがあるんじゃないかというほど特徴的なサウンド。「水星」のMVのオープニングには、ひとり暗い部屋でパソコンに向かう少女が登場しますが、まさに実生活を映し出しているんじゃないかという印象を感じさせます。そんな、どこか気怠そうな雰囲気を持つDAOKOのミレニアル世代を象徴するような経歴をひも解いていきましょう。

中学3年生でニコ動に投稿し、瞬く間に注目を集める

1997年東京生まれ。15歳でニコニコ動画に投稿した楽曲をきっかけに音楽制作を開始し、16歳のときにはm-floと一緒に楽曲「IRONY」を発表。2014年には中島哲也監督の映画『渇き。』にて「Fog」が挿入歌に。さらに、同年、庵野秀明率いるスタジオカラーによる短編映像シリーズ、日本アニメ(ーター)見本市の作品にて音楽プロデューサー、TeddyLoidと音楽を担当し、世界各国から注目を集める。

うーーん、すごい!!! 中学生のときにインターネットにハマり、自身のラップをニコニコ動画に投稿したことをきっかけに、2015年にはメジャーデビューまで辿りついてしまった・・・・・・。これまた興味を惹かれたのが、インディーズ時代から一貫しての顔出しNG! えっ、なんで!!! となるわけですが、高校生ということでいろいろな事情があったようです。そして待ちに待った2015年10月リリースの1stシングル「ShibuyaK」のMVにて初の顔出し! 目鼻立ちのくっきりした美少女、歳の割にオトナっぽい......と男目線はこれぐらいにして、楽曲はというとDAOKO節はそのままに、アッパーな1曲。顔出しとともにこれまでとは印象が違って聴こえ&見えます。こちらもJ-WAVEでたくさんオンエアされたので聴いた方も多いと信じていますが、まだの方はぜひこちらも。

ニューシングルを経て、また新たなステージへ

先日9月14日には、これまでとは違ったDAOKO節が炸裂している2ndシングル「もしも僕らがGAME の主役で / ダイスキ with TeddyLoid / BANG!」をリリースし、同作を引っさげてのツアー「DAOKO 2016"青色主義"TOUR」の真っただ中! 見た目はまだ10代の少女ながらも、まさにアーティストとしてその才能を遺憾なく発揮しています。ミレニアルな一面とともに、ぜひとも彼女の魅力に引き込まれてください!!

DAOKOにT&S編集部が特別インタビュー!

インターネットとの出合い

――DAOKOさんがインターネットと出合ったのはいつごろですか?

「小学校4年生ぐらいのときかな。家にあったパソコンに興味があって、教えてもらった感じでした。キーボードの打ち方とかも。最初はポケモン交換掲示板を見たり、好きだったゲーム絡みのサイトを見たりしていました。ほかには、面白フラッシュサイトが学校でちょっと流行っていて、ときどき見ていたくらいで。あとは、そのあとニコニコ動画も出てきて、なんだこれは! と思って興味津々でしたね」

――携帯電話を初めて持ったのはいつごろですか?

「インターネットに触れたのと同じ時期で、小学校4年生とか5年生のころですね。ガラケーでインターネットは制限されていたので、使うといってもメールと電話くらいで。同級生はまだ持っていない子も多かったので、基本は両親との連絡ツールでした。中学1年生のときにiPhoneを持つようになってから、ネットの制限がなくなって、けっこうネットの世界にハマっていく感じでしたね」

ニコニコ動画でラップを投稿

――音楽制作を始めたきっかけは?

中学2年生くらいのときにニコニコ動画にのめり込んで、音楽だけじゃなく、いろんなコンテンツをひたすら見続けていたんです。そこで、素人が歌ったり、踊ったり、投稿できることを知って、そのタイミングでラップと出合ったんです」

――なぜラップだったんですか?

「そのときは、いまほど女性ラッパーさんがいなかったですし、まだジャンルが確立される前で。ちょうど自分自身が、インターネットを通じてもっと評価されたい承認欲求みたいなものがあったので、ちょうどいいところを見つけたというか。女性ラッパーとして投稿したら注目してもらえるかなという野望もあって、中学3年生のときに投稿し始めました

――それまで音楽制作はしていたんですか?

「いや、ニコニコ動画に投稿するまではなにもしていなかったです。ニコニコ動画では、トラックメイカーの方がラップをのせるための楽曲、トラックをつくってアップしていて、ラッパーは気に入ったトラックをダウンロードしてラップをのせていて。ラップを録音したり、ちょっとしたアレンジなどのやり方は、インターネットで調べて見よう見まねで勉強していました

――音楽活動でのiPhoneやインターネット活用法を教えてください。

「日々、歩きながらとかノートパソコンを持ち歩いていないときの瞬発的なアイデアとかはiPhoneのメモ帳に書くことが多いです。Cloud機能でパソコンと同期されるので便利だし。ノートに書くのもいいんですけど、iPhoneでフリック入力するほうが早くてラクです。ほかには、LINEはそれなりに仕事や友だちとのやり取りで活用していたり、ベタにTwitterとInstagramと、たまにFacebookを更新したり・・・・・・ですかね。流れに乗って『ポケモンGO』もやっていたんですけど、ちょっと限界を感じてから全然進められてなくて、両親のほうがハマっていつの間にかレベルを抜かされていましたね(笑)」

DAOKOさんのスマホのホーム画面。Twitter、InstagramといったSNSに加えて、よくお買い物しているメルカリや最近お気に入りのブランド、STUSSY WOMENが並ぶ。さらにDJアプリのdjayや、1分間のビートを計測できるBPM、音楽アプリのTS PLAYなど、アーティストならではのアプリも多数

――よくチェックするお気に入りのサイトはありますか?

「最近は洋服を買いに行く時間がないので、メルカリをチェックして買っています。インターネット古着屋さん感覚というか。宅配ポストに入れておいてもらえて気楽なのがいいですね」

2ndシングルからツアー、そして今後の展望

――2ndシングル「もしも僕らがGAME の主役で / ダイスキ with TeddyLoid / BANG!」が9月14日にリリースされましたが、今作はDAOKOさんにとってどんな作品になりましたか?

「インディーズのときは歌詞を書いたり、楽曲を制作したり、といったことが自分自身との対話みたいな感覚だったんですけど、前作のメジャー1stシングルで初めて顔を出して、そこから外の世界というか、聴いてくれるみなさんを意識するようになったんです。それまでは一緒に楽しめるとか、一緒に踊れるといった曲を作りたいという発想すらなかったんですけど、実際に聴いてくれている人がいるっていうことに気づけてから、みなさんと一緒に踊ってみたいなって気持ちが湧いてきて。だから、今作ではダンスミュージックを意識して制作したので、踊れて、体感して楽しめる音楽になっているんじゃないかな。そういう点では、私自身、新しいステージに進むことができたような気がしています」

――ツアータイトルが「DAOKO 2016"青色主義"TOUR」ですが、"青色主義"という言葉にはどんな意味が込められているんですか?

「もともと青が好きで、DAOKOではブルーをテーマカラーにしているんです。海が好きとか、空が好きとか、そういった理由に加えて、炎は見た目は赤いけど、中心のいちばん温度が高いところは青色なんですよね。だから、メラメラ燃えているというより見た目は冷ややかな印象かもしれないけど、実は誰よりも熱く燃えている、というのが自分らしいなと思ってブルーを自分自身のアイコンカラーに。そして今回"青色"をツアータイトルにしたのは、ライブにきてくれるみんな=青色主義との距離をよりいっそう縮めるために。そんな一緒に楽しめるツアーにしたくて、タイトルを"青色主義"にしました」

――今後の活動の構想は?

「2ndシングルでは、聴いてくれる人たちとの距離感を縮めるような踊れる音楽で、一緒にライブでも体感できる曲にしたかったんです。それはポップアーティストを目指すこととイコールでもあって、ポップアイコンになるというか。そもそもアンダーグラウンド出身だし、本人自体もポップとはほど遠い人間だと思うので、そういう人間がポップアイコンになっていくっていうのが逆説的というか、存在自体が矛盾している感じが面白いなと思って(笑)。そういうポップアイコンになれたらいいなと考えています」

文:小松祐太(J-WAVE)
インタビュー:T&S編集部
撮影:有坂政晴(STUH)

DAOKO

1997年生まれ、東京都出身。ラップシンガー。15歳のときにニコニコ動画へ投稿した楽曲で注目を集め、2012年にネット発のインディーレーベルから1stアルバム『HYPER GIRL-向こう側の女の子-』をリリース。顔を隠した状態での活動を行う。そして、2015年3月にTOY’S FACTORYよりアルバム『DAOKO』にてメジャーデビュー。同年10月に1stシングル「ShibuyaK / さみしいかみさま」をリリースするタイミングで顔を公開し、大きな注目を集める。今年9月、待望の2ndシングル「もしも僕らがGAME の主役で / ダイスキ with TeddyLoid / BANG!」をリリースしたほか、大阪、東京、韓国を巡るワンマンツアーも開催。